年収200万円のパートでも、家は買えるか?

11.リフォーム開始

 物件の残金支払い日の打ち合わせを電話でしていたとき、「不動産店の担当者から、リフォーム業者はどうされました」と訊かれた。そのときは、すでに二社目の見積もりが来ていて、それは予算の300万円以内に納まったものだったので、F産業さんの方に依頼しましたと伝えると、「そちらの方がいいですね」といわれた。自分の紹介した業者が選ばれなかったのに、それを喜んでいるような感じがあり、僕は違和感を覚えたが、その後の話を聞いて多少は納得するところがあった。

 中古住宅を購入した場合、多かれ、少なかれリフォームは必要になる。自分の周りに知り合いがいればいいが、多くの人は初めてリフォーム業者にかかわることになる。ほとんどの人は、どうやって業者を探せばいいか、途方に暮れてしまう。今ではネットということになるのだろうが、果たしてネットでみつけた安いところがいい業者なのか誰も確証を持つことはできない。自分たちのリフォームの内容に応じた業者を紹介してくれるサイトもあるが、それでも不安は消えないというのが普通だと思う。そのようなとき、一番信頼の置けるのは、不動産店紹介の業者である。

 不動産店が大きければ大きいほど、信頼性は高くなる。あの有名な不動産店の紹介なのだから、まず、変な仕事はしないだろうというわけである。その信頼が逆に、不動産店には重荷になる。実際、僕が物件を購入した不動産店でも、紹介したリフォーム業者の苦情が寄せられ、揉めたことがあったという。リフォームというのは、難しい。客のイメージと現実に違いが出れば、例え、客観的に見て酷いリフォームでなくても、苦情の寄せられることになる。そして、それが、紹介した不動産店に、飛び火するのは、目に見えている。

 「Hさんに限って、そのようなことはないと思いますけど、そういうことが何回かあると、どうしても腰が引けてしまいます」と不動産店の担当者はいう。物件を売り渡してから、一、二ヶ月後に怒鳴り込まれて、貴重な営業時間をクレーム対応に費やすのは、勘弁してほしいというのが、本音だろう。客が自ら探し出した業者であれば、そんな心配はなく、枕を高くして眠れるというわけである。不動産店の担当者の心配もわからないではないが、世の中、クレームを怖れるあまり、おかしなことになっていることが多々あるように思う。実は、リフォーム中にも、似たような事例にでくわすことになったのだが、それはまた後の話である。

 リフォーム業者も決まり、まずはショールームに行くことになった。新居に入れるシステムキッチンとバスと洗面台を見学し、オプションや色などを決めるためである。YにあるショールームでF産業の担当者と待ち合わせ、まずは、キッチンから見学した。F産業の担当者とショールームの案内役の女性と僕と妻、四人で周った。キッチンの各部の説明から始まり、あれば便利なオプションや換気扇のグレードアップ、そして扉の色、調理台の材質、シンクの形状などを決定していく。その過程でどうしても、当初の見積もりより、金額は上がってしまう。換気扇はこちらの方が、掃除の手間もかからず、吸い込みもいいので…などといわれると、どうしても流されてしまうのである。さらに、リフォーム代を抑えるため、リフォーム業者は最小限度にしていたわけだから、どうしてもほしいオプションも出てくる。

 浴室の方はキッチンほど、オプションはなく、金額的には増えなかったが、壁のデザインなどで、かなり迷った。ショールームの案内役の女性は、やはり商売ということなのだろうか、ワンランク上のものを強く推してくる。説明を聞いた後、「いいです」と断わるのは、強い気持ちが必要だった。

 一時から見て周り、全てを決め終えたのは、もう、四時近くになっていた。ショールームを見学する前に、休憩コーナーでフローリングの材質などをリフォーム会社の担当者と決めていたので、三時間見て周ったということはないが、それでも二時間以上は、かかっている。周っている時は、あまり感じなかったが、相当に疲れたようで、この後、腰が悪くなり、しばらく辛い日々が続いた。(2016.8.21)


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