年収200万円のパートでも、家は買えるか?

8.住宅ローン会社での面談

 月曜日、会社を二時で早退し、住宅ローン会社へ向かった。住宅ローン会社は東京の中心部にあり、駅からの道も地図でみるかぎりは、わかりやすそうだったが、行ってみると道に迷うというほどではなかったが、あまりに着かないので不安になった。こんなことなら、事前に下見をしておけばよかったと、思った。面談で、一番してはいけないのは、遅刻である。それでも、だいぶ余裕を持って出て来たのが幸いし、約束の15分前にはローン会社の入居しているビルに着いた。そのビルの12階にその会社はあった。

 エレベーターで12階まで上り、受付で自分の名前と担当者の名前を告げると、個室に案内され、「担当者はすぐにまいります」といわれた。しばらくして、お茶を同じ受付の女性が持って来てくれた。それからさらに5分くらい経ってから、たくさんの資料を持った担当者がやってきた。

 30代半ばくらいの男性で、歯切れのいい話し方をする人だった。「緊張しなくても、大丈夫です。今日の面談は、審査を落とす、落とさないということではなく、融資に関する説明ですから」と彼は笑っていった。恐らく、本審査はすでに提出した書類で行われ、通っていたのである。事前審査で通り、本審査で落ちるということは、ほとんどないらしい。落ちる場合は、事前審査と本審査の間で状況の大きな変化、例えば会社を辞めたとかがあったときくらいのものだそうである。

 融資額は、640万円、これは1180万円のテラスハウスのときは630万円だったので、10万円アップしたことになる。テラスハウスは五連棟のうちの一つで、単独での建て替えが出来ないのに対して、今度の物件は、一軒家で前面の道路は43条但し書きがあるとはいえ、建築許可の下りた実績があるため、資産価値は大きいと判断されたのかもしれない。そして、金利は2.475%、これは前回と変りない。このローン会社の最大引き下げ金利は、1.775%であり、それが適用されず、標準金利だったことは、やはりパートで低収入ということが影響しているのだろう。

 月々の返済は48000円で、現在住んでいる家賃が70000円だから、22000円も安くなる。この金額は、わかっていたとはいえ、当初の予想を大幅に下回るもので、うれしかった。家探しを始めた頃は、月々6万円前後と考えていたのである。結果的には、物件の価格が900万円だったことが、大きかった。ただ、後から考えてみると、月額48000円の返済というのは、返済負担率30%として、僕の月収から換算すると5万円弱になることから、金融機関からすれば極めて当然の数字だったのである。月々の返済額が5万を超え6万円近くになったら、審査に落ちていたように思う。

 さらに、いろいろと融資に関する説明が、延々と続いた。変動金利型住宅ローンの説明では、特にいろいろなケースを想定して話してくれたが、完全に理解できたとは言い難い。面談ということだったが、僕たちに関する質問は、仕事の内容、リフォームに掛ける金額、新居に移った場合の通勤時間と現在の通勤時間の比較くらいなものだった。家賃を支払っている証明と自己資金の入っている通帳のコピーを取り、1時間半くらいで終了した。

 担当者は、エレベーターの前まで、見送りに来て、不動産店の担当者の名前をいって、よろしくお伝えくださいといった。ビルを出て駅に向かい、駅近くの喫茶店でコーヒーを飲みながら、終に住宅ローンの審査に通った喜びを噛みしめた。大きな開放感とわずかな虚脱感、そして、じわじわと湧いてくる幸福感に包まれながら妻と飲むコーヒーは格別だった。

 家に帰って、メールをチェックすると、不動産店の担当者からメールが来ていた。その中に「少し心配していました」という一文があった。彼女も、面談の直前になって家賃の支払いを証明するものと自己資金のエビデンスを追加されたことに、不吉なものを感じていたようだった。そして、ローン会社から三、四日後には正式に融資の承認が降りるという連絡があったので、それが決定次第、引渡し前の物件確認日と最終的な残代金支払い日を調整したいと記されていた。

 家は買えたが、ひとつ不安が残っていた。それはリフォームである。まず、何処までリフォームすることができるのか?そして、その結果、どんな風に仕上がるのかということである。(2016.7.20)


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