年収200万円のパートでも、家は買えるか?

2.二軒目の不動産屋

 住宅ローンに関しては、いろいろと調べていた。だから、パートだと都市銀行では難しいということもわかっていた。しかし、フラット35なら何とかなると、楽観していたところがあった。確かに、フラット35なら借りられる可能性はあるが、別の問題があった。それは、物件の適合証明が必要だということだ。

 当初、無知の哀しさでだいたいの物件で適合証明は取れるものと簡単に考えていたが、建ぺい率や容積率オーバー、公道に接していないため再建築不可の土地だったりと1000万円前後の物件では、そういうものが多く、すんなりと適合証明の取れる物件はあまりないことが、わかってきた。フラット35も決して楽ではなかったのである。しかし、やれるところまでは、やらないといけない。

 実は、一件目の不動産店から電話のある前に、ネットで探していたら、良さそうな物件が見つかり、二件目の不動産店に内見の予約を入れていたのである。この物件は一軒家ではなく、テラスハウスだった。築年数も比較的新しく、駅まで平坦な道のり、間取りは一階に広いリビングがあり、二階は洋室二間と和室一間の3LDKで、駐車スペースもある。何より、価格が1180万円と魅力的であった。

 今度の担当者は女性だった。彼女は他にも僕たちの条件に合ういくつかの物件を探し出しておいてくれた。それらの中から、内見したいものを選び、三軒周ることになった。まずは、僕たちが一番みてみたかったテラスハウスである。駅までフラットということなので、テラスハウスの入口は、道路からすぐのところにあるが、これが狭く大型のバンなどでは苦労するかもしれない。前の住人は軽自動車に乗っていたという。テラスハウスはL字型に五軒が連なっており、目的の物件はその一番奥にあった。家の前に駐車スペースがあり、さらに前は、アパートの駐輪場なので建物がなく、日当たりと風通しはかなりいい。

 家の中もきれいで、リフォームする必要はほとんどなく、ハウスクリーニングだけで十分住めるくらいだった。間取りも一階に広いリビングがあり、使い勝手も良さそうだったが、二階への階段が狭く、足を真っ直ぐに乗せられないくらいだった。妻はこの狭い階段が、気に入らなかったようだが、全体の印象としても「まあまあ」という感じだったらしい。日本人が「まあまあ」と表現するときは肯定的な場合が多いと思われるが、外国人の「まあまあ」は否定的な場合が多いのである。僕自身も内見の印象としては、可もなく、不可もなくといった感じだった。ただ、手の届きそうな価格で、築年数が比較的新しく、駐車スペースがあり、平坦で、駅にも近いということから明らかに‘検討’に値する一件であることは間違いなかった。

 次の一件は、道路から続く長い階段を登り切ったところにある丘の上にある一軒家だった。この時点で、この家は購入候補から脱落した。ここも比較的築年数は新しく、こじんまりとした二人で暮らすにはいい家だった。引っ越し準備途中の家主も内見に立ち会ったが、60代の男性で、毎日、階段を上り下りするのは大変だろうと思った。丘の上にあるため、日当たりと眺望、風通しは抜群で、特にロフトは書斎として使いたくなるような落ち着きがあった。ただ、あの階段では引っ越しも大変だろうし、何かあったときに救急車や消防車も入れず、いろいろな面で苦労することになりそうである。

 三軒目もテラスハウスだった。ここも、車の底が着いてしまうくらいの坂道を下ったところにあった。車の入れるだけマシといえるが、そこから物件までは、短いが階段を降りなくてはならなかった。ただ、部屋は三軒の中では最高に良く、バルコニーからの眺めもよかった。案内された物件は三軒続きテラスハウスの真ん中で980万円、角だと1200万円ということだった。部屋の雰囲気はよかったが、急坂の続く地形にあり、ここも年を取ってから苦労しそうで、ナシかなと思った。

 三軒の中では、はじめに見たテラスハウスがよかったが、他の物件と比較検討したいと、担当者に告げた。店に戻ってから、自分は正社員ではなく、パートなので住宅ローンの審査が心配だという話をした。折角、いい物件が見つかったのに、住宅ローンの審査が通らず、買えないということもありえる。その点をクリアーしておきたかったのである。すると、事前審査の用紙を渡された。それに記入して、次に来るときに持参してくださいということだった。その用紙は、数枚綴りで複写形式になっており、表の一枚に記入すれば、数か所の金融機関に配布することが出来るものだった。その他、パートということで三年分の源泉徴収票、健康保険証、顔写真のある身分証明書と用意してくださいといわれた。(2016.5.11)


皆さんのご意見・ご感想をお待ちしています。joshua@xvb.biglobe.ne.jp

TOP INDEX BACK NEXT