ブログでのお店紹介、料理をあまり美味しく感じなかったら?

 あるブログを読んでいて興味深い記事があった。そのブログは、自分の食べにいった店をレビューしているものだった。「おいしかった」「この値段で、この量はおどろき」「店員の対応がよかった」など、好意的な内容がほとんどだったが、ある店に関して苦言が呈されていた。

 その店は、(僕は知らなかったが)テレビなどでも紹介されている有名な海鮮料理の店だった。テレビの影響で客が押し寄せるようになったせいかもしれないが、刺身がいっぱい盛られている‘おまかせ定食’を作り置きしているらしく、出て来たときはドリップがかなり出ていて、水っぽくなっていたという。さらに、鮮度や盛られているウニの量と質もあまりよくなかったと書かれていた。

 人気店だけにファンも多かったようで、コメント欄は‘炎上’していた。集計したわけではないので正確ではないが、ざっと見たところブログの記事を肯定する内容のものが二割、否定するものが六割、残りは特にどちらともいえないものだった。肯定するものは、‘刺身が水っぽい’‘作り置きしてあるものに、ハエがたかっていた’‘冬はともかく夏場は心配’‘遅くいったためか、ウニの量が半減していた’‘マグロが半解凍状態だった’というようなコメントが寄せられていた。

 対して否定派は‘あの値段でやっているのだから仕方ない’‘自分はおいしく感じた’‘たまたま水っぽかっただけでは?’‘店の売りは質より量。求めるものが違っている’‘値段を考えたら、文句はいえない’など完全否定ではないものも散見された。

 コメントも含めて思ったことは、作者には店を貶めようとかそういった意思はなく、ただ素直に感じたままを書いたということである。少なくてもブログに書かれた内容は作者にとって真実だと思う。さらに、コメント欄から判断すると、場合によっては水っぽい刺身が提供されることも多々あるように思える。問題は料理がまずかったとき、‘まずかった’とブログに書いていいかどうかということである。

 テレビのグルメリポーターは美味しくない料理を食べたときは、テレビの影響力の大きさを思えば「まずい」とはさすがにいえないし、かといって「美味しい」とウソをいうのも良心が咎めるというわけで「独特の味ですね」とか「なかなかですね」とか「はじめての味です」とかいって、誤魔化すそうである。食べログでは、悪い評価をされた店が「客が減った」と記事の削除と損害賠償を求めて裁判になったこともある。

 個人のブログの場合、そこまで影響力はないにしても、味の善し悪しの判断に関しては、個人的な要素もあるから、美味しくないと思ったとしても、それをそのまま書くのはあまりに主観的過ぎてしまうような気がする。かといって、自分が美味しく感じなかったものを「美味しい」とするのもどうかと悩んでしまう。

 考えられる対策その一は、テレビのグルメリポーター同様、うまく誤魔化すという方法である。「お酒がほしくなりました」(酒で流し込みたいくらい味付けが悪い)、「ご飯がすすみます」(辛い)、「健康的な味付けです」(うすい)などで、表現方法を工夫することによってある程度正確に読者に味を伝えることも可能である。ただ、読者を誤魔化しているという良心の呵責を感じるかもしれない。

 対策その二としては、一般化せず、あくまでも自分の好みとして伝えるやり方である。「まずかった」と言い切らず、「自分の舌には合いませんでした」とあくまでも個人的な意見ということを強調する。もちろんブログは全てが個人的な意見だが、大切なのは用心深い表現に止めるようにすることである。店側からクレームのくることも考え「まずい」とか「美味しくなかった」などの直線的な表現は避けるようにしないといけない。これだと、読者を誤魔化すこともなく、自分の気持ちに正直に行動することになり、心のモヤモヤはそれほど感じないで済むが、面倒臭いことになる可能性は残る。

 対策その三は、まずいと思った店は記事にしないというものである。読者を誤魔化すのは気が引けるし、かといって自分の心に正直に書いて店側から苦情がきたり、ブログが炎上するのも困るという場合、記事にしないという方法もある。ブログに載せるのは自分が美味しいと思った店だけということにしてしまえば、読者も信頼して読むことができる。個人的にはこの方法が一番いいように思う。

 さて、冒頭で紹介した記事であるが、この場合は個人的感想というより、客観的事実という側面が強いため、これはアリだと僕は思った。(2014.7.22)


皆さんのご意見・ご感想をお待ちしています。joshua@xvb.biglobe.ne.jp

TOP INDEX BACK NEXT