ツイッターという凶器

 ここのところコンビニや飲食店の従業員による‘不適切’な画像が、フェイスブックやツイッターに投稿され、ネットが炎上するという‘事件’が相次いでいる。

 発端になったのは、ローソンの従業員(オーナーの息子)がアイスケースの中に入り寝そべっている姿をフェイスブックに投稿したことである。その後、バーガーキングの従業員が大量にバンズの上に寝そべる姿をツイッターに投稿している。

 さらに、ホットモットではアルバイト店員が、冷蔵庫の中で寝る姿と大量の梅干しの上に少量のごはんを乗せた画像を幕の内弁当と称してツイッターに投稿、丸源ラーメンでは、女性のアルバイト店員が冷蔵庫の中でソーセージをくわえている姿と‘色んなものをパクった’として消毒液のマキロンやゴム手袋を持っている姿をネット上に公開し、炎上した。

 ミニストップでは、アルバイト店員が‘きめーあんな糞コンビニ絶対辞めてやるてか潰す!!!うぜーから金庫にチンゲいれといたわ!マジスッキリした!’というツイートと共にレジの上でM時開脚をし、局部にバーコードリーダーを当てている姿を投稿した。そしてステーキハウスブロンコビリーでもアルバイト店員が冷蔵庫に入っている姿を投稿している。

 これら全てにおける共通点は、騒動を起こした人物がみんな十代後半から二十代前半ととても若く、社会人としての経験がほとんどなかったということである。また、投稿された場所は東京、大阪、京都、愛知、高知とほとんど全国規模である。

 ツイッターはネットの世界では‘バカ発見器’と呼ばれているそうだが、正にそのような様相を呈している。しかし、ただ自分のバカさ加減を晒したというだけでは済まされなくなっている。車がひとつ間違えば凶器になるのと同様、ツイッターもまた凶器になり得るのである。

 ツイッターという全世界に情報を発信できるツールを使いながら、彼らはその認識がなく、仲間内の世界しか見えていない。ツイッターで炎上騒ぎを起こしたある女の子は「こんな大きなことになるとは思っていなかった」と語ったが、それは今回の一連の騒ぎを起こした人物に共通する思いだと思う。

 バカげた悪ふざけをネットに流されたことによる店側の被害は多大である。高知のローソン店では、画像を投稿したのがオーナーの息子だったということもあってかFC契約を解除された。丸源ラーメンでは、開封済みの食材をすべて破棄し、冷蔵庫を消毒、店舗は休業を余儀なくされたし、ステーキハウスブロンコビリーでも冷蔵庫内の食材の廃棄と消毒を行った。なお、問題を起こした従業員は、写真撮影に協力した者も含めて、みんな解雇されている。

 店側は物的な損害ばかりでなく、顧客の信頼まで損なうことになってしまった。‘ローソンでアイスを買う気がなくなった’‘モラルのない店員の実態が明らかになり、不安になった’’食い物を粗末に扱うような店は信用できない’等、問題を起こした本人だけでなく、店側の信用もがた落ちである。

 さらに、大量のバンズの上に寝そべる店員の姿がネットにアップされたバーガーキングでは、店側が「画像にあるバンズは発注ミスにより大量に廃棄せざるを得ないバンズであることが判明致しました」とコメントを発表したことにより、‘売ったことを認めたら返金騒ぎになったり、衛生管理の役所から突っ込まれるから、こう回答するしかない’‘新品の食い物を捨てていいなんていう会社は、社会活動から逸脱している’’小麦粉の生産者、工場でパンを焼いている従業員の気持ちになってみろ’など批判が相次いでいる。

 恐らく以前からコンビニや飲食店で、このような従業員による不適切な行為は行われていたと思う。ただ、それは本人、或いは仲間内だけで共有されていた情報だった。したがって、その行為が明るみになった場合でも、内々で処理され、世間一般に知られるということはなかった。

 仲間内のウケ狙いだった行為が、ツイッターという便利なツールが現われ、それを無自覚に使ったため、世間に‘不適切な行為’が拡散されてしまった。こうなると店側も消費者の理解を得るために、おざなりなものでは済まされず、徹底的な対応をしなくてはならなくなる。したがって、冷蔵庫に入っている食材を全て廃棄したり、冷蔵庫の消毒、場合によっては冷蔵庫そのものの交換を余儀なくされてしまった。

 店側の損失も大きいが、一番大きなキズを受けるのは悪ふざけをネットで晒してしまった本人ということになるだろう。

 テレビでは顔にモザイクのかかった状態で悪ふざけの画像が映しだされていたが、ネットでは投稿時のまま顔が晒されている。それだけではなく、本人の氏名、通っている学校、住んでいる場所や出身地まで晒されている。一回、ネットに情報が流出すると拡散してしまい、収拾するのは不可能である。

 この先、彼らが新しいバイトや勤め先を見つけていったとき、「冷蔵庫の中で寝ていたアイツだ」ということになりかねず、働き先を見つけるのは容易ではない。そのときになって、ようやく彼らは自分のやったことの愚かさとネットの恐さがわかるのかもしれない。気違いに刃物ということわざがあるが、バカにツイッターもそれと同等以上に危険である。(2013.8.10)


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