ある本を読んでいたら、モナコ王室に迎えられ王妃となり交通事故で悲劇的な最後を遂げた女優のグレース・ケリーの生前のインタビューが載っていた。記者の「来世があるとしたらどのようになりたいですか?」という問いに彼女は「自分の飼っている犬に生まれ変わりたい。そうすれば、幸せで、穏やかで…そして気楽な人生でしょうから」と答えている。このインタビューからも王室での彼女の生活がどのようなものだったか何となく想像できる。 僕も生まれ変わるとしたらと考えることはあるが、これは誰でも考えることのように思う。まずは性別の選択があると思う。人間の男に生まれるか女に生まれるかということだ。今度また人間に生まれるのだったら女に生まれてみたいと思う。その理由は今は男だから単純に次ぎは女で人生を経験してみたいということと、自分の周りを見まわしてみると女性の方がはるかに生き生きと本音で自由に生きているような気がすること、あと出産を経験してみたいという気持ちもある。 しかし、僕は気楽な生き方の方がいいから、いろいろな約束事に縛られて生きる人間にはもう生まれたくないような気がする。本能のままに生きられる動物の方がいい。動物だとまず2つに分けられるような気がする。人間に飼われて生きるものと野生で生きるものの2つ。人間の飼われるものといっても牛や豚や鶏などの家畜はちょっといやだな。乳牛だったらまだいいかもしれないけど、最終的な目的を考えてしまうと…。ブロイラーの鶏なんて最悪だ。やっぱり家庭で可愛がられるペットがいい。 ペットも自由はないが、餌の心配もなく食べられてしまう危険もないので気楽だ。だけど犬だと鎖につながれ、行動にはかなりの制限が出て来るし、ハムスターとかだと一生狭いケージの中で回し車を回す毎日になってしまう。それをハムスターがどう思っているかわからないが、知能が低いからそれほど苦痛ではないのかもしれない。 そこにいくと猫はかなり魅力的な存在だ。一部ではつないで飼っている家もあるようだけど、基本的に首輪はされるが放し飼いで何処へでも好きなところに遊びにいけるし、自由恋愛もし放題だし、お腹が減っても家に帰れば食事が出て来る。以前に家で飼っていた猫は子供の時はよく家にいたけど、成長したら2週間に1度くらいしか帰ってこないで、食事をとるとまたすぐに何処かに行ってしまうようになった。もしかしたら1匹で4〜5軒の家で飼い猫の役割を演じていたのかもしれず、そうなるとかなりヤクザな猫だったのだなと頬が緩んでしまう。 だけど、ペットで飼われるとなると飼い主がどんな人かによって運命は大きく左右される。そうなると、何にも束縛されない野生の動物ということになる。野生で生きるものになると選択の幅はかなり広がる。暮らす舞台も空に地に海とほんとに自由だ。だけど、生存競争は厳しく多くが子供のうちに命を落すことになり、成長してからも常に飢えや外敵との戦いなのではないだろうか。 しかし、自由に自分の意のままに生きられる野生動物はかなり魅力的な存在だ。タマちゃんがあれほど人気があるのは愛らしい姿の他に自由気ままに生きているというのもあるのだろう。みんなが何となく持っている思いを体現しているような気もする。
野生だといろいろな動物が頭に浮かぶ。大空を自由の飛びまわれる鳥に憧れる人も多いだろうし、ある時期に劇的な変化をとげる昆虫に憧れる人もいるかもしれない。 僕は野生動物だったらイルカなんていいかなと思っている。知能は非常に高く、ある意味では人間以上に賢いかもしれない。イルカは人間にも好かれているから、迫害を受けることも少ないし、虐殺されたりしたら日本の漁師のようにそれこそ世界的な問題になったりする。それと前に聞いた話ではイルカの行動は次ぎの3つに凝縮されているらしい。その3つとは「食べること」「遊ぶこと」「愛すること」だそうだ。まさにイルカの世界はユートピアではないかと思ってしまう。 窺い知れないが、イルカの世界でも何かあることはあるのだろう。まあ、それはいつかイルカに生まれた時にでも悩むことにしよう。(2003.6.2) |