I LOVE 阪神タイガース

 今年(2003)の阪神は本当に強い!調子がいいとか勢いに乗っているとかいうのではなく文字通り‘強い’のだ。宿敵巨人とのがっぷり四つに組んだ甲子園3連戦を2勝1敗と勝ち越し、5月19日現在27勝14敗1分で勝率.659で2位広島に5.5ゲーム差をつけて首位を走っている。

 僕はもう30年くらいの阪神のファンだ。小学校の時はせめて死ぬまでには一度だけでも阪神の優勝を見たいと思っていた。その夢が叶った85年に優勝した時には泣いてしまった。あれから18年…

 去年も開幕から7連勝をして‘これは!?’と思わせたがW杯が始まった6月くらいから急速に降下を始めて結局シーズンを終えてみたら4位だった。だが、変わりつつあるタイガースを感じさせてくれた。

 そして今年、金本、伊良部といった大物を獲得してどうなるかなと楽しみに思っていたが、予想を上回る強さだ。この強さはこの2人の加入も大きいが選手全体の力がかなり底上げされていると思う。特に赤星、藤本はバッテイングの技術がかなりアップして内角の速いストレートでも思い切り引っ張ることができるようになったし、難しい球はファールで逃げるといったしぶとさも身についてきた。若き4番浜中もまだまだの部分もあるが、素質の良さを感じさせ、チャンスにしぶといバッティングができるようになってきた。去年不振だった片岡もようやく本来の力を発揮してくれているといった感じだ。

 それと選手の意識もかなり変わってきている。ここまでチーム本塁打の数はリーグ5位と少ないがこれは‘つなぐ野球’に徹しているのがその理由だと思う。‘自分で決める’というよりも‘次の打者につなぐ’という意識が強いように見える。これは決して1、2番や下位打線だけではなく打線全体にいえることでクリーンアップですら右打ちやセンターに返すバッティングが目立つし、あのアリアスも去年に比べるとかなりコンパクトなスイングになっているように思う。

 85年の優勝したときはとにかくホームランが目立ったが、犠打も多かった。今年も犠打が多いのは同じだが、85年にはあまり見られなかった足を使った攻撃も多い。特に赤星と金本の2、3番のコンビネーションは見ていて面白く野球の深さを感じさせる。昨年ようやく素質が開花した今岡も徐々に調子を上げているし、矢野も堅実なバッティングを見せてくれて現在は打撃ベスト10の2位だ。85年ほどの破壊力はないが、足を絡めた攻撃の多彩さでははるかに上回っているといえるだろう。

 優勝をするための一番の条件はやはり投手陣の力量だろう。まずその投手陣をリードする捕手であるが、昨年は矢野がケガのため長期離脱を余儀なくされ、その辺りからチームの成績も下降線を辿るようになってしまった。その矢野は今年、攻守とも調子よく、投手陣をよく導いていると思う。しかし、捕手というのはかなり激務のポジションのためひとりで1シーズン乗り切るのは難しい。そこで日本ハムから野口を獲得した。野口は大差がついたゲームの後半や連戦が続く日曜日など主に元同僚の下柳投手の時に先発でマスクをかぶり、打力はちょっと見劣るが、いい働きをしている。さらに若い次代を担う浅井も代打ではあるがいいバッティングを見せている。

 投手では伊良部の加入が非常に大きい。常に安定した投球を見せ、ここまで5勝1敗だ。開幕当初はあまりスピードが出ず、技巧派に転向したのかな?と思ったが暑くなるにつれて球速もあがり、力のあるストレートと鋭く落ちるフォークを主体とした本来の姿になってきた。

 そして現在7勝と負け知らずのムーアだ。去年に比べると球のスピード、キレとも若干落ちているような気がしたが、打線の援護にも恵まれて勝ちつづけている。先日の巨人戦などは球にもキレ、力ともあり、これから本来の力を見せてくれそうだ。新しく習得したフォークもだんだんと自分のものにしている。それに彼のバッティングは野手顔負けで阪神往年の名選手だったラインバックを思い出させてくれる。

 しかし、投手の中で一番鍵を握るのは若きタイガースのエース、井川だろう。ここまであまり調子がよくなく、すっきりとしたピッチングをしていない。それにもかかわらず現在5勝3敗というまあまあの成績を上げている。確かに立ち上がりが悪く、制球もいまひとつなので四球も多い、それゆえ球数が増え、なかなか完投までいかない。今までは、ストレートとチェンジアップ主体のピッチングだったが、今年からカーブも交えて幅を広げようとしているようだが、その辺りがまだしっくりいっていないのだろう。しかし、ピッチングそのものは大変粘り強く、ピンチになっても何とか最小失点で切り抜けている場面が多いように思う。1試合で150球くらい投げられるタフネスさもあり、彼が阪神のエースであることに変わりはない。彼が調子を上げてくるようだと伊良部、ムーアをまじえて実質的なセリーグ最強の先発投手陣になることは間違いない。

 この3人に続く先発ということになるとちょっと差がついてしまう。下柳投手は5回を3点以内というほとんど限定の登板になっているし、かつてのタイガースのエース藪投手も早い回にゲームを壊してしまうことが多い。そしてローテーションの一角だった藤田は肩に異常があるため長期の戦線離脱になってしまい、駒がひとつ足らない計算だ。候補はたくさんいるのだが、この辺は首脳陣がどうするか楽しみでもある。ただこれはあくまでもぜいたくな悩みだ。他の球団には3本柱さえいないのだから。

 中継ぎも勝ちゲーム専用の安藤、吉野を始めとして球威がよみがえってきた谷中、期待の藤川、伊代野、久保田など、金沢の故障は残念だが、だんだんと充実してきている。 抑えは絶対的な存在のウィリアムスがいる。とにかく曲がりが大きく鋭いスライダーが最大の武器で左打者はもとより、右打者でも芯でとらえるのは難しいと思われる。右打者が体に当たりそうな球を振ってしまうケースさえよく見られるくらいだ。

 控え選手も充実していて、今年はかなり層が厚くなった。なれないファーストにコンバートされて現在調子を落としてしまっている桧山もこれからかならず必要になる時が来るだろうし、守備固めが主だがバントの名手秀太の存在も大きい。将来浜中とクリーンアップを組んでもらいたい大物感漂う関本も打撃の幅が広がり、成長している。そして神様の八木もますます勝負強いところを見せている。

 まだ5月の時点で優勝のことを話すのはあまりにも気が早いだろう。だけど。今年はかなり期待してもいいと僕は思っている。

 というのも他球団で阪神に対抗できるようなところが見当たらないからだ。今、最下位の横浜は阪神と全く正反対の野球をやっている。まるでつなぐことができないような攻撃で未だにチームの犠牲フライはゼロだ。ホームラン数はセリーグでNo.1でいい選手も多いのだが、野球に対する考えを変えないとダメだろう。それに投手陣は崩壊状態だ。

 広島は根本的に戦力が落ちる。投手は笹岡、黒田、高橋とまあまあだが中継ぎ-抑えが弱い。攻撃陣も世代交代がまだうまくいっていないようでやや弱い。

 ヤクルトは情報分析に優れた球団で相手の弱みに巧みに付けこんで勝つという試合巧者だ。相手なりの戦いをしてほとんどどの球団とも互角の戦いをしている。いやらしい球団ではあるが、まあ、優勝できるだけの戦力はないように思える。

 中日は現在、阪神が負け越している唯一のチームだ。負け越している原因はローテーションの関係で伊良部、ムーアの登板がないことと、井川×川上のエース対決が3度もあり、それが1勝2敗になっているためだろう。ただ、中日は投打のバランスがとれている手強いチームだ。攻撃陣は阪神よりかなり落ちるように思えるが、中継ぎ投手陣の力量は間違いなくセリーグNo.1だろう。だからリードを許した状態のままで後半になると苦しい戦いになってしまう。ただ、先発投手陣は調子が上がらない選手が多いので阪神の敵ではないだろう。

 さて問題は巨人だ。ここまで故障者続出ながら5割以上を常にを維持している。戦力は一番かもしれない。桑田、工藤が戦線離脱している投手陣も上原、高橋さらに新戦力として木佐貫、ラス、久保らが出てきたし、去年活躍した真田も調子を上げてきた。攻撃陣も新しく出てきた選手は足が速い人が多く、なかなか手強い。各選手の状況からフル戦力で戦えることはないと思うが、ある程度整ってくると脅威だ。しかし、致命的なのは中継ぎ-抑えが弱いことだ。先発がマウンドを降りるとゲームが壊れてしまうことが多く、終盤の失点は横浜に次ぐ。したがって、最後は阪神、巨人の争いになるだろうが、我が阪神タイガースの優勝となるだろう。がんばれ、阪神タイガース!(2003.5.20)


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