オンデマンド版
才 葉 抄
藤原教長 原著 / 近藤康夫 解義 定価 (本体2,100円+税)
A 5判 116頁 ISBN 978-4-8195-0266-5
日本書論の原点とも言うべき才葉抄を漸新な思想で解説します。
書流の成立、その秘伝を余すところなく説かれています。
まえがき
いつだったか。学兄安藤隆弘氏と、「日本の書論」について話し合った事があった。
その時、体系的な研究の少ない事に気がつき、お互い大変残念に思った。そして、
出来たらその研究を手掛けてみようという事になった。
幸い安藤氏の手元に、「夜鶴庭訓抄」「才葉抄」「入木抄」を収録した「入木道三部
集」があり、それをもとにして分担研究をする事に決まった。
住居も同じ流山にある事も好都合で、何回かの会合を重ねながら、安藤氏は「入
木抄」を、私は「才葉抄」を調べ上げた。底本も、その時は、二人とも書写本を用いて
の学習になっていたが、別に申し合わせによるものではなかった。
日本の学書には、師承を最善とする風潮が昔から続き、現代にまで及んでいる。そこ
には、伝統の重みも否定出来ないが、反面芸術的な創造を阻害している弊も改まら
ない。
何が原因かを考えてみると、書流の成立する平安時代末から鎌倉時代らかけて、書
の理論的背景が乏しく、その技術の裏付けなどが得られないまま、種々の書流が興
隆した事にある。即ち書流が興ると、知識と技能とを関連づけて、書流伝授の仕組み
を確立する必要が生じ、多くの書論が世に出た。
それらの内容の多くは、何をどう書くかと言う方法論であった。特に書式を重大視して、
師匠が弟子に、種々の書式を、ひそかに伝授する形を生んだ。そのより所となったの
が、書論集やその抄本である。その書論書も秘蔵される事となった。こうして学書は、
当時秘伝を尊んで、師承を最善とすようになる。
また、一面それとは逆に、純粋な意味で、書の本質や学書の心得を開陳するものも
存在した。これからも書論として一般に伝えられ学書の対象となった。その主なもの
「才葉抄」「入木抄」を挙げる事が出来る。書の本質論を内容に含む「才葉抄」は、書
を学ぶ原点に立つものであり、貴重な書論集であった。
本書では、最も流布した「群書類従本」を基にして、特に平易に読めるよう工夫した。
即ち、読解しやすいように、かなの部分を漢字に改めたり、常用漢字・現代仮名づかい
で表記したりした。
各条の番号は、便宜的に加えたものである。各条解説の形式は、群書類従本の影印、
読み下し文、通訳、語釈、参考という順にした。
1981年5月 近 藤 康 夫 識
※オンデマンド版
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