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  論書ヨウ語     
  
  王虚舟 原著 / 田邊萬平 解義  定価 (本体2,600円+税)
  A 5判 174頁              ISBN 978-4-8195-0262-7

  清の書家王虚舟の書を全編読みほぐしたもの。書の真髄を鋭くついた
  名論で東洋思想理解に必読の書です。

 


    序章  
       王虚舟の『論書ヨウ語』は、彼の著「淳化祕閣帖考正」の末尾に在り、章を分つて執筆、
       運筆、結字、用墨、臨古、篆書、隷書、楷書、行書、草書、ボウ書、論古の12となし、各
       章に短篇を輯めてある。これは虚舟が企画を立てて書き下ろしたものでなく、折にふれて
       執筆した短篇を、後になって自ら編輯したものとおもわれる。紙数の半ば近くを第12章論
       古で占めてゐるとい不均衡もそれによるみのであらう。
       虚舟の書論は禅味を帯びてをり、書禅一味の境に在つて執筆しいゐる。その簡潔にして
       含蓄ある、漢文の妙ここに尽きたる観がある。例へば第2章運筆論に曰く「以虚為実。故
       断処皆連」と。これに対し「以背為向。故連処皆断」し曰ふ。両句相関してその理を悟得す
       るなどがそれである。
       しかしこの論法は、西洋の論法に慣れた現代人にとってはかへつて理解に困しむ所であ
       らう。そこで私はこれを説くに具体例をもつてした。とはいへ中世以後の書論を読む者は
       この論法を身に付けねばならぬ。私の解釈は力こめてこの両面に意を注いだつもりである。
       もしこの一書を熟読玩味すれば、もつて他の書論解釈に過半の努力を殺ぎ得るものと信じ
       てゐる。
    は音ヨウ、又はショウ。餘であり贅である。したがって語とは無駄話であり、著者の
       謙辞となる。
       中国人名辞典に云ふ。清の王ジュは金壇の人。後無錫に徙る。字は若霖、亦自ら書して
       ジャク゜林と為す。虚舟と号す。嘗て自ら二泉寓客と署す。康煕の進士。官は吏部員外郎に
       至る。建白する所多し。書法一時独歩す。禹貢譜、学庸本義、学庸困学録、程朱格物法、
       白鹿洞規條目、淳化祕閣帖考正等の書有り。

        昭和41年10月 久我山房南窓下において、田邊萬平しるす

       

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