オンデマンド版
  入 木 抄

   尊円親王 原著 / 安藤隆弘 解義   
   
   定価 (本体2,200円+税)
   A 5判 120頁  ISBN 978-4-8195-0265-8


   青蓮院の始祖、尊円親王が伝統の書の精神を説く。600余年
   前の書に対する姿勢が現書壇への問題を提起します。

   

   序章

      かねがね日本の書論に興味を抱いていたが、文部省教科調査官加藤達成先生から、
      入木抄の解義を手がけてはどうかとの勧めがあった。浅学の身ではあるが、自己の研
      修と、併せて、現代の書道教育において学ばねばならぬ多くのものを内蔵している入木
      抄を、一人でも多く理解していただきたいとの願いをこめて、あえてペンを捕った次第で
      ある。
      原稿整理のさなか、全書研新潟大会に参加した折、その開会式のあいさつに、会長木
      下一雄先生が入木抄を取り上げ、「字の形に魂を入れるのは筆の勢いである」と述べら
      れた。
      一瞬私は、入木抄が今日も力強い指針と成り得ることをあらためて確信し、体の中を熱
      いものが走った。そして秘かに入木抄解義の完成を期したのである。
      入木抄は南北朝時代に、尊円親王が後光厳天皇に上奏した書論である。上奏とはいっ
      ても、尊円親王は55歳、後光厳天皇は弱冠15歳、師弟の間柄であり、書論というより、
      書道上達の心得を教えさとす講義といった方がよいかも知れない。北朝を代表する天皇
      として、また持明院統を代表する書家として、南朝、大覚寺統に対する意地もあったのか
      も知れない。天皇の上達を願う切実な期待が文章のはしばしにあふれている。このような
      成り立ちからいっても、今日も書の上達を願う我々に有益な指針を示しているのは当然の
      ことである。

        1980年11月         安 藤 隆 弘  識

     

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