華音が来て1ヶ月が過ぎた。
相も変わらず、和明と華音の2人以外の生徒は仕事をしようとしなかった。
しかし、和明は以前ほど周りのことが気にならなくなっていた。
どんなに煩くてもイライラしなくなった。
それはたぶん。
華音が居るから。
仕事を半分手伝ってくれるという理由だけでなく、
隣に華音が居るだけで、なんとなく気が楽になる気がした。
華音には、なんというか、そういう雰囲気があった。
それに。
華音のオーラに圧されてか、
周りの他の生徒たちも、仕事を手伝うことはないまでも、以前ほど騒ぐことはなくなった。
机に突っ伏して眠る生徒。
小声で何やら喋ってる生徒。
そして珍しいものでも見るように、遠巻きに2人を眺めている生徒もいた。
そんな他の生徒たちのことを気にすることもなく、
華音は淡々と仕事をこなしていった。
華音の仕事は実に丁寧で、しかし遅い訳ではなく、むしろてきぱきとしていた。
和明はそんな華音の仕事ぶりに心底関心した。
しかし、2人の間では、未だいわゆる「雑談」は交わされたこともなく、
発せられる言葉は全て仕事に関するものだった。
そのことに違和感を受けることもなく、和明は知らず知らず金曜日を待ち侘びるようになっていた。
お互いに、名前しか知らない間柄ではあったが、和明は無条件に華音を信頼していた。
そんなある金曜日。
委員会の時間が終了し、チャイムが鳴った。
それと同時に生徒たちは一斉に教室を去っていく。
いつも最後に教室に残るのは和明と華音だけだ。
「お疲れ様」
和明は片付けた仕事道具を片手に、立ち上がる。
「お疲れ様です」
華音もそう言って立ち上がった。
「あの…」
そして、和明の背中の呼びかける。
「何か?」
ドアに向かって歩を進めようとしていた和明が振り返る。
「よかったら、クラスを教えて頂けませんか?
この時間以外に連絡手段がないので…」
「あぁ…」
和明もようやく、お互いのクラスさえ知らないことに気付いたのだ。
「そう言えば、言ってなかったね。」
「えぇ。」
思わず噴き出す和明の顔に、華音も笑い返した。
「3年い組だよ。秋月くんは?」
この学校は1学年3組あり、「い組」「ろ組」「は組」と別れていた。
「僕は1年ろ組です」
和明は華音の言葉に少し目を見開いた。
「えっと、何か?」
それに気付いた華音が小首を傾げた。
「いや、気を悪くしないで欲しいんだけど」
「はい」
「てっきり2年生だと思っていたから…」
「あはは。よく大人びてると言われるんですよ。最初に言っておけばよかったですね」
華音はそう言って笑った。
「にしても、学年すら知らなかったなんて。」
「そうですよね。」
言い合って2人は再び笑い合った。
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リレー小説始めてみました。
初・オリジナル挑戦です。
正直、不安です。
というか、スランプ中なのでヤバいです。
どうぞ、長い目で見守ってください。
(2005/01/3 HINATA)