風紀委員会・2


                華音が来て1ヶ月が過ぎた。

                相も変わらず、和明と華音の2人以外の生徒は仕事をしようとしなかった。

                しかし、和明は以前ほど周りのことが気にならなくなっていた。

                どんなに煩くてもイライラしなくなった。

                それはたぶん。

                華音が居るから。

                仕事を半分手伝ってくれるという理由だけでなく、

                隣に華音が居るだけで、なんとなく気が楽になる気がした。

                華音には、なんというか、そういう雰囲気があった。

                それに。

                華音のオーラに圧されてか、

                周りの他の生徒たちも、仕事を手伝うことはないまでも、以前ほど騒ぐことはなくなった。

                机に突っ伏して眠る生徒。

                小声で何やら喋ってる生徒。

                そして珍しいものでも見るように、遠巻きに2人を眺めている生徒もいた。

                そんな他の生徒たちのことを気にすることもなく、

                華音は淡々と仕事をこなしていった。

                華音の仕事は実に丁寧で、しかし遅い訳ではなく、むしろてきぱきとしていた。

                和明はそんな華音の仕事ぶりに心底関心した。

                しかし、2人の間では、未だいわゆる「雑談」は交わされたこともなく、

                発せられる言葉は全て仕事に関するものだった。

                そのことに違和感を受けることもなく、和明は知らず知らず金曜日を待ち侘びるようになっていた。

                お互いに、名前しか知らない間柄ではあったが、和明は無条件に華音を信頼していた。

               

                そんなある金曜日。

                委員会の時間が終了し、チャイムが鳴った。

                それと同時に生徒たちは一斉に教室を去っていく。

                いつも最後に教室に残るのは和明と華音だけだ。

                「お疲れ様」

                和明は片付けた仕事道具を片手に、立ち上がる。

                「お疲れ様です」

                華音もそう言って立ち上がった。

                「あの…」

                そして、和明の背中の呼びかける。

                「何か?」

                ドアに向かって歩を進めようとしていた和明が振り返る。

                「よかったら、クラスを教えて頂けませんか?

                この時間以外に連絡手段がないので…」

                「あぁ…」

                和明もようやく、お互いのクラスさえ知らないことに気付いたのだ。

                「そう言えば、言ってなかったね。」

                「えぇ。」

                思わず噴き出す和明の顔に、華音も笑い返した。

                「3年い組だよ。秋月くんは?」

                この学校は1学年3組あり、「い組」「ろ組」「は組」と別れていた。

                「僕は1年ろ組です」

                和明は華音の言葉に少し目を見開いた。

                「えっと、何か?」

                それに気付いた華音が小首を傾げた。

                「いや、気を悪くしないで欲しいんだけど」

                「はい」

                「てっきり2年生だと思っていたから…」

                「あはは。よく大人びてると言われるんですよ。最初に言っておけばよかったですね」

                華音はそう言って笑った。

                「にしても、学年すら知らなかったなんて。」

                「そうですよね。」

                言い合って2人は再び笑い合った。

                 

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リレー小説始めてみました。
初・オリジナル挑戦です。
正直、不安です。
というか、スランプ中なのでヤバいです。
どうぞ、長い目で見守ってください。
(2005/01/3 HINATA)