「うわっ何これ、マジ?ちょっ、貸して。」
「おい、返せよ!」
「いいじゃん、いいじゃん。うっわー。すっげ。」
「返せって!」
和明(かずあき)は机に向かって作業していた手を止め、
いかにも優等生風の枠のしっかりした眼鏡を指先で持ち上げた。
そして、教室の後ろで雑誌の取り合いをしてる連中に一瞥を投げかけた。
名札も付けていないシャツは、ボタンを二つも開けてだらしなく着られて居た。
腰まで降ろして履くズボンの裾は踏んで引きずって、ボロボロになっている。
和明の、模範生に相応しい制服の着こなしとは正反対だ。
そんなもの全てに嫌悪を覚える。
女の子の目があれば、少しは良いのだろうか。
そう思うと、和明はいつも男子高校に進学した事を後悔した。
金曜5時間目。学校で定められている委員会の時間。
教室に集まっている風紀委員は6名。
きちんと仕事をしてるのは、1名。
自分だけ。
6人分の仕事を一人でやるのは理不尽だったが、
やらなければならない仕事は、やらなければならないと思った。
―最悪な連中め―
和明は心の中で毒づくと、また作業に集中すべく、机に目線を戻した。
しかし、後方はうるさくなる一方だった。
「いってぇ。ぶつ事ねぇじゃん。」
「うるせー。」
「何喧嘩してんだよ、お前らさぁ。」
「コイツ今本気で殴って来たんだぜ?」
「お前が悪いんじゃん。」
「ちゅーか、うっせーよ。俺寝たいんだってば。」
「はぁ?勝手に寝ろよ。バーカ。」
「何で俺に八つ当たり!?」
「うるせぇよ。」
―ったく…―
流石に和明もこの騒ぎには我慢ならなかった。
怒りが沸々と込み上げてくる。
でも怒鳴ったりはしたくない。
それでも怒りはどんどん和明の集中力を欠いて行った。
―…うるせぇ…―
耳を塞ぎたい衝動に駆られた、その時だった。
教室のドアが急にガラリと音を立てて空き、長身の人目を惹く風貌の生徒が入って来た。
少し癖のある髪を肩に付かない程度に伸ばし、
整った顔の印象からも華やかさを感じた。
しかし、服装は流行に乗って乱れる事無く、全てがきちんとしていた。
その周りだけ妙に優雅な空気が流れるこの生徒を、教室中が興味津々に見つめた。
全員の目が、その生徒に向いている中、
彼は何故か和明に目を留めて、話しかけて来た。
「お取り込み中すみませんが、風紀委員会の教室はここですか?」
和明は突然の来訪者に話しかけられ、焦って他の風紀委員を見回した。
しかし、皆目を丸くしているばかりだった。
「そうです…けど。」
とりあえず質問に答えると、彼は上品な笑みを浮かべた。
「遅れてしまってすみません。僕は秋月華音(かのと)と申します。
今年から風紀委員会でお世話になりますので、どうぞ宜しくお願いします。」
和明はあまりに丁寧に挨拶されたのに驚いて、慌てて椅子から立ち上がった。
「あ…俺は、委員長の小野和明です。
とりあえず、座って。仕事内容説明するから。」
和明が勢い良く椅子を引いてやると、華音は手にしていたカバンを机の上に柔らかな手つきで置き、
そっとその椅子にかけた。
「有難う御座います。」
和明も席に着くと、後ろの突き刺さる様な視線を無視して、
今までやっていた作業を説明して、半分華音に渡した。
ちょっと普通じゃない奴だとは一目で分かったが、
他の連中と違って真面目に仕事をしてくれるなら、助かりそうだと思った。
それに何より、華音の風采に校則違反は見られず、
そこにかなりの好感を持てた。
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友達とリレー小説始めました♪
どんな展開になってくのかドキドキ…(笑)
とりあえず名前を出した二人の話です。
和明、はユリカが名付け、ベタベタな華音、はあたしが名付けました。
苗字は苗字サイトにお世話になって付けました。
いつもいつも名前はサイトのお世話になってますよ…。
さて。和明は華音に好感を持った様子。
今回は和明の目線ばっかりだったので華音が謎の人物のままですねぇ。
展開に期待!(笑)
(2005/12/7 lu.umi)