頬を伝う涙が暖かくて
生きてることを実感する
その暖かさが余計に辛くて
そして涙が止まらなくなった
後から後から頬を伝って落ちる涙を
いつもは拭ってくれるはずのアイツは
もう隣りにはいない
7.
2人をしばらく沈黙が包み込んだ。
俺は木村の言った言葉を必死に理解しようとしていた。
先程の木村とマネージャーの会話から、導き出された最悪な推測。
確かにさっきまでは憶測でしかなかったはずなのに。
今、それは、現実となって目の前にあった。
「中居…」
沈黙を破ったのは木村の方だった。
「ごめんな。俺、言えなくてさ」
それでも尚、俺は言葉を発せずにいた。
「本当はさ、このまま言わないでいようと思ったんだよ」
木村は話し続けた。
「何も言わずにSMAP辞めたら中居はきっと怒っただろうけど。
それでも、中居までもが苦しみを味わうよりはいいと思ったんだ。
中居には笑っていてほしかったから。
そりゃ、俺がSMAP辞めたって中居は苦しむだろうけど。
でも、飽くまでそれは一時的な感情だろうし。
そう思ったんだよ…最初はな」
最後の言葉に俺は薄い反応を示した。
それを見届けて木村は続ける。
「でもさ、さっき飯島さんに言われてさ。
まぁ、中居も聞いてたかもしれないけど。
やっぱりそれは俺の我侭なんだよな。
確かにそうすれば俺は中居の苦しむ顔を見ないで済むかもしれない。
でも、実際は違うんだよな。
自惚れかもしれないけど、俺が死んだあと、中居はきっとものすごく辛い思いをする。
そして、俺が何も話さずに逝ってしまったことに腹を立て、悔やむと思う。
結局俺は、自分の所為で中居が苦しむのを見たくなかっただけなんだよ」
「木村」
俺はいつしか木村の目をしっかりと捕えていた。
「なぁ、木村。なんでお前はいつもそうやって自分を責めるんだよ。
病気はお前の所為なんかじゃない。
お前のことで俺が苦しむことがあったとして、
例えそれがどんなに苦しくても俺は喜んで受け入れるよ。
それは決して不幸なことではないから。
だからさ…話してくれてありがとな。
たぶん、話すだけでも辛いことなんだろ。
でも、これからは一人で背負い込まなくてもいいから。
2人で一緒に戦っていこう。
俺はいつでも木村の傍にいるから」
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2003/11/16(HINATA)