あいつの口から語られた「真実」
それは思っていたよりも遥に残酷だった
それでもあいつはその「現実」を受け止めなければならなかった
俺に出来る事は一緒に「現実」を受け入れることだけだった
6.
「ごめん、ちょっと中居と2人きりにさせてもらえる?」
そう言ってマネージャーに席を外させると、木村は俺に座るように言った。
そして自分も向かい合って座ると、大きな深呼吸をしてから俺の目を見据えてきた。
しばらくの沈黙の後、木村が重い口を開く。
「これから俺が話すことは、たぶん中居にとっても辛い事実だと思う。
それでも…聞きたい?」
「…それが現実なんだろ?」
「あぁ。認めたくないけど、現実だよ」
「それなら、俺は聞くよ。いや、聞かなきゃいけないんだと思う」
「分かった。…事の発端は半年ぐらい前のことなんだけど…」
木村はもう一度大きく息をつくと、話しだした。
「丁度、みんな健康診断を受けてたあたり。俺ももちろん受けた」
「あぁ、覚えてるよ。あの時の結果は全員異常無しだった」
「そう。そのはずだった。でも…実際は違った」
「え?」
木村の意外な言葉に思わず聞き返す。
「あの時、実は俺は再検査を求められてたんだ」
「そんなの…俺は聞いてない」
「あぁ、俺が口止めしたんだ。余計な心配かけたくなかったから」
「それで…何処の再検査を受けたんだよ?結果は?」
「レントゲンで肺に影が見つかっててさ…結果は簡単に言えば…肺ガンだったよ」
「え…」
あまりに木村がサラッと言ったので、言葉が出なかった。
肺ガン…木村が?何で。
頭の中が?マークでいっぱいになる。
「俺のかかった病気はさ、肺ガンの中でも早期発見が難しいやつなんだって。
俺、X線は毎年やってたわけじゃなかったから」
「それは俺だって…それに木村、最近あんまりタバコ吸ってなかった…」
「それがさ、肺の入り口から遠いところに腫瘍が出来るやつで、喫煙との関係は薄いと思われてるみたいなんだ」
「そんなのってアリかよ…」
思わず、木村から目をそらして俯いてしまう。
「中居。それだけじゃないんだ」
木村がゆっくりと諭すように言った。
「さっきも言ったけど、この病気は早期発見が難しい」
その言葉に思わず顔を上げて、木村の目を見返した。
「つまり、俺はもう手遅れだったんだ」
「…どういうことだよ」
そして、木村は決定的な言葉を口にした。
「俺はもう余命9ヶ月だと言われている」
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2003/8/21(HINATA)