天邪鬼な俺とは違って
あいつは感情表現が上手かった。
でもそれと同時に嘘まで上手くなっていた。
いや、本当は俺があいつの嘘に
気付かない振りをしていただけなのかもしれない。
俺はあいつの愛に甘えていたんだ。
そして、あいつを失うことを誰よりも恐れていた。
3.
「まだ、かな…」
俺はまた木村を待っていた。
今度は自分の家で。
コタツのテーブルに頭を預けて目を閉じる。
こんな時間に一体何処に何の用があると言うのだろう。
そこまで考えて軽く頭を振った。
もう、1人で悩むのはやめよう。
どつぼにはまるだけだから。
そう思った。
『ガチャン』
ドアの閉まる音で目が覚めた。
「あ、ごめん。起こした?」
目の前には心配そうに覗きこんだ木村の顔。
どうやら、コタツに伏せったまま眠ってしまったらしい。
「いや…お帰り」
「ただいま。ごめんな、待たせて」
「ん〜ん、大丈夫」
首を振って伸びをすると、骨がポキポキと子気味のいい音をたてて鳴った。
木村が笑って俺の頭をポンポンと叩く。
と、覚えのある匂いが鼻をかすめた。
「木村…」
「何?」
「病院…行ったの?」
「え…何で?」
木村の目が一瞬揺れた…ように見えた。
「消毒薬の匂いがした」
「あぁ…ちょっとここんとこ風邪引いてたから」
「そっか。大丈夫?」
「うん、もうほとんど治った。さっき、もう点滴必要ないから、って言ってきたし」
木村の目はまたいつもどおりに俺を優しく見つめていた。
「なら、よかった」
やっぱりそうだ。
木村が俺に近寄らなくなったっていたのは、俺に風邪を遷すまいとしたから。
そういえば、前にも同じような事が何度かあった。
そのことを思い出して木村を見上げると、
木村は「何?」という顔をして俺の後ろに座ると背中から手を回してきた。
そしてそのままの体勢でしばらく沈黙が続いた後、木村がふと口を開いた。
「なぁ、中居…もし、俺がいなくなったらどうする?」
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2003/4/20(HINATA)