夢に成れ
何度そう願っても
ちっともその願いは叶わなかった
夢に成れ
どれだけそう祈ってみても
全く祈りは届くことがなかった





19.


吾郎が来た日から俺は、すっかり情緒不安定になった。

上手に笑えなくなったし、不意に泣き出したくなったことも何度かあった。

木村からの手紙を読んで、俺は初めて現実を受け入れざるを得なくなってしまったみたいだった。

誰が言おうが、新聞に載ろうが、本当は認めたくなかったのだ。

木村はもうどこにも居ない、ということを分かっている振りをしながら、

本当は全然分かっていなかった―いや、分かりたくなかった。

木村の死を知ってからの俺は、現実を生きているようでいて、ずっと夢の中にいた気がする。

夢の中ではいつも木村が傍で笑っているのだ。

でも、それも叶わなくなった。

夢の中に居たいのに、すぐに現実に引き戻される。

いくら幸せでも、それは所詮夢なのだと思い知らされる。

それなら、いっそこの現実が夢に成ってしまえば良い。

俺はそう思うようになった。

そう―現実が夢になってしまえば、夢が現実になる。

そうしたら、木村とまた一緒に居られる。

そんなバカなことを考えるようになった。

そのころの俺はもう食事さえ面倒になっていた。

もう、何もしたくなかった。

それでもどうにか仕事だけはこなしていた。

不思議とそれだけはちゃんとやらなければならない気がした。

「SMAP、頼むな。」

手紙にそう書かれた木村の言葉を無意識のうちに思い出していたのかもしれない。



そんな日々が続いて1ヶ月が過ぎようかという頃だったろうか。

アイツが俺の元へとやって来たのは。

「中居くん、無理しないで…」

アイツはそう言って涙を流した。

「中居くんのそんな笑顔、辛すぎてもう見てられないよ…」

そして泣きながら俺を抱きすくめたのだ。

 

2005/8/7(HINATA)