なんでだよ
俺は約束したんだよ
あいつを守るって
それなのにどうして
何度も自分を責めて
何度でもあいつに謝りたかった
でもそれさえ叶わない現実に
俺はもう耐えられなかった





14.


翌日のことだった。

そう、前日にメンバーと会った翌日。

木村に最後のお願いをされた翌日。

俺はやっぱり病院へ向かっていた。

仕事があると、大抵は面会時間に間に合わないのだが、

その日は珍しくオフだった。

面会時間が始まる時刻に到着するように家を出て車を走らせていた。

俺は、木村の「最後のお願い」がずっと頭から離れず

結局ほんとんど眠っていない状態だった。

それでも身体は自然に病院へと向かっていた。

木村の心は相当弱っていることは確かで、

少しでも傍に居てやりたかった。



俺はずっと誤解していたのかもしれない。

「木村は強い」と。

しかし、決して木村は強いわけではなかった。

「強がって」いただけだったのだ。

何故それに気付けなかったのだろうか。

俺は本当に、自分のことでいっぱいいっぱいだったに違いない。

もっと早く気が付いてやれればよかった。

木村が強がる余裕さえなくなるぐらい弱ってしまう前に。

しかし―そんなに俺は頼りなかっただろうか。

いや、きっと違う。

木村は俺を安心させようと思ってそうしたのだろう。

しかし今はもう―

『あと3ヶ月、だろ?』

木村の言葉が不意に蘇る。

3ヶ月…

俺達が一緒にいられる残りの時間。

―タイムリミット―

それは確実に近づいていた。



それなのにどうして俺は…

俺は、あんなミスを犯してしまったのか。

そう。

俺はその日、大きなミスを犯した。

日頃、安全運転を心がけている俺なのに、

その日は考え事に気を取られ、見過ごしてしまったのだ。

「赤信号」を―。

そこは苦しくも十字路だった。

右から走って来た車が俺の車の横っ腹に思いっきり頭突きをしてきた。

そして俺は意識を失った。

意識を失う直前に頭に浮かんだのは木村の顔ばかりだった。

―あぁ、俺はあいつより先に逝くんだ―

そう思って少しだけホッとしたのは覚えている。

しかし、現実はそんなに甘いもんじゃなかった。

俺はその事故以来、一ヶ月以上もの間、昏睡状態に陥ってしまったのだ。

 

2005/5/8(HINATA)