事実をつきつけられた彼らを
守ることさえままならないほど
俺は弱っていた
守るどころか逆に
彼らに支えられてなんとか生きる日々だった





13.


「中居…」

「ん?」

3人が帰り、2人きりになった病室でふと木村が口を開いた。

「ありがとな」

「何が?」

木村が何のことを言ってるのか分からなくて俺は木村の顔を見つめる。

「あいつらに話すの、辛かっただろ?」

「あぁ…そんなの気にするようなことじゃないだろ」

「ん…あいつらのこと頼むな」

「木村…」

気づかないうちに木村は、心まで相当弱っていたのだ。

そのことに改めて気づいて、俺はただ木村の手を握ってやることしか出来なかった。



「中居…」

眠ったと思っていた木村が目を閉じたまま俺を呼んだ。

「…ん?何?」

「好きだよ…」

「あぁ…」

「愛してる…」

「分かってる」

「ずっと一緒にいたかった…」

「ずっと一緒だよ…」

「あと3ヶ月、だろ?」

「…っ」

木村の言葉に思わず俺は言葉を失う

そう。

俺が木村の病気を知ってからもう、半年の月日が流れていた。

木村の宣告された余命は…すでにあと3ヶ月。

「ごめん…困らせるつもりじゃなかったんだ」

「…」

「中居」

木村が今度はしっかりと目を開き、俺を見据える。

「ん…?」

「最後に1つだけ…」

「うん」

「お願いしてもいい?」

「…何?」

「最後にもう一度…」

「ん…」

「中居を抱きたい…」

「…木村」

「ダメ…?」

「だって…」

「大丈夫だから」

「そんなわけないだろ」

「お願い…」

木村の思いもかけない『お願い』に俺はどうすればいいのか分からなかった。

出来るだけ、今の木村の要望は受け入れるつもりでいた。

でも、今の状況で俺を抱いたら、木村の身体は確実に危ない。

これ以上俺は木村の命を縮めたくなかった。

だからといって、これ以上回復する見込みはないということも分かっていた。

時が経てば経つほど木村の体力は奪われていく一方なのだ。

「木村…」

「中居…」

「ほんっとうに大丈夫なんだな?」

「あぁ…」

「お前、嘘付いたら承知しねぇからな」

「うん、分かってる」

「…分かった」

「中居…」

「大体、そう簡単にお前に逝かせてたまるかっての」

「うん」

「俺がお前を守る…」

「…」

「ずっと一緒だよ、木村」

「…ありがとう…中居」

でも俺は木村を守ってやれなかった。

それどころか―

俺は自分のことさえ守れないような、弱い人間だった。

 

2005/4/22(HINATA)