第６章ニセコレポート

ナチュラブ・北海道主催の連続シンポジウムシンポジウム徹底討論！“北海道の明日”シリーズの第６章「北海道を斬る」のニセコ町開催を機に、ニセコを堪能していただく企画を、㈱ニセコリゾート観光協会にお願いし実現できました。
　シンポジウムにはニセコ町外からの参加者（シンポジウム参加者総数約160人）も多く、【ニセコお泊まりツアー2日間】は、ニセコの温泉ホテル・甘露の森で開催された懇親会には約80名（そのうち宿泊者は53名）が参加され、翌日の【逢坂町長がガイドする　ニセコ町ミニツアー】には45名の参加がありました。

ここでは、逢坂町長（当時）がガイドされたニセコ町ミニツアーをレポートします。

なお、逢坂誠二さんは、2005年8月29日にニセコ町長を辞任されましたが、このレポートでは当時の肩書きである“町長”をそのまま使いますので、ご了承ください。

【逢坂町長がガイドする　ニセコ町ミニツアー】
　　　　　　　　　　　　　　　　　　2005年7月30日（日）9：00～12：30

ニセコ町外の全国行政関係者によるニセコ町視察とは別に、2005年春から一般の方向けにもスタートして好評を博している“逢坂町長のガイドによるニセコ長町視察ツアー”。今回、ナチュラブ・北海道のシンポジウムの参加者向けに「まちづくり」をポイントに、ニセコ町のみどころをピックアップして頂き3時間30分のミニツアーを特別編成していただきました。

コースは、
ニセコ町についての逢坂町長のレクチャー→ミルク工房→
　　　　　　　駅前温泉「綺羅乃湯」→ニセコ町役場→あそぶっく→
　　　　　　　　　　　　ニセコ生活の家→道の駅「ニセコビュープラザ」
　

では、出発！

■ニセコ町についての説明

前夜懇親会のあと、引き続き宿泊した「甘露の森」のビデオルームで逢坂町長が、人口4,700人の小さな町（逢坂町長が就任された11年前は4,600人でした）ニセコ町のまちづくりの仕組みを説明くださいました。詳細については、ニセコ町のＨＰ等でもよく知られていますのでここでは割愛しますが、この少子高齢化の時代に、100人という人口増の背景など、興味深くまた納得できる話が聞けました。

では、出頂上に雲がかかった羊蹄山が望めるほどの夏空のもと、ニセコ観光バスで出発進行！
　50人乗りのバスはほぼ満席で、観光のウキウキした気分とまちづくりのことを勉強しようという熱気で、ボルテージの高い空気が充満。

バスの中では逢坂町長の名ガイドぶりは想像通りで、そのテンポが良く、つぼを心得た説明に引き込まれ、一同まずは感心＆満足（笑）。単なる景色の見物とは違った「観光」に、笑顔の中にも真剣さが見られます。

■ミルク工房

優良ベンチャー企業の「高橋牧場」。羊蹄山を望む、のどかな丘陵に広がる牧場は、北海道らしい景色を満喫できるところでした。満開のひまわり畑、高原を渡る爽やかな風、馬、ワラの束、あたり一面の畑の緑、ジャガイモの花。写真撮影に、お買い物に、皆さん目を輝かせました。

牧場経営者の高橋さんは、助成金に頼らない自立した牧場経営をしようという志をもって起業されたそうです。どこにするか、何をするか、「企業」としてやっていく為の方法を思案に思案を重ねた末のスタートでした。敢えて大通りに面した場所ではなく、ニセコらしい景色のここを選んだとか。「それが正解だった」と今でこそ言えるけれども当初は冒険だったと、逢坂町長は、高橋さんのご苦労を振り返って代弁されました。

家族でスタートした小さな高橋牧場も、今では従業員25名が忙しく切り盛りしています。一度は都会に就職した高橋さんの娘さんも、ここへ帰ってきて働いています。「働く場所、働き甲斐を創出すれば、若い人材を吸引できるいい例です」との逢坂町長の説明に全員納得。笑顔で接してくださった従業員さんたちが、とても生き生きと見えました。売店のなかには、もちろん数々の表彰状やトロフィーが！
　牧場の看板商品「ソフトクリーム」の美味しかったことと言ったら！　写真で、その幸せそうな顔を見てください。「飲むヨーグルト」「プリン」「ロールケーキ」も絶品。添加物一切なしなので日持ちはしませんが、今日のおみやげに、皆さんはせっせと買い込んでいました。

　ある町の議員さんが視察旅行とて、ソフトクリーム・プリン・飲むヨーグルトを全部味見していましたが・・・天晴れな議員根性？！

■駅前温泉「綺羅乃湯」

　ここは「指定管理者制度」が初めて適用された施設です。情報公開の大切さを町民の方々が実感したという「綺羅乃湯」。どういうこと？ここを造るにあたっては公開討論を重ね、それはもう様々な意見が出たそうです。「せっかくだから大きな施設を」「お金をかけすぎないことを優先して」、そのほか設備に関しても希望は様々。人の意見を聞くことで、自分とは違う視点もあるのかとお互いが気づくことが多かったそうで、そのプロセスが何より大事ですと逢坂町長はいつも強調されますね。その回り道のおかげで、町民の方の多くが「綺羅乃湯」を大切にし利用しているそうです。（注・綺羅乃湯ができた経緯については、連続シンポジウム第1章で、逢坂町長から詳しいご説明があり、その記録集に収められています。）
　施設内は大浴場・家族やグループ向けの小浴場・休憩室・売店などが、中庭を囲んでバリアフリーでぐるりと配置されています。売店には地ビールなどの地元産品も販売されています。駅前の好立地で、スキー客や観光客、地元の方で、いつも賑わっているそうです。次は、車ではなく列車でスキーに来て、帰りにここで温泉に入ってビールを飲んでゆっくり帰るのも良さそうです。加えて「ＪＲニセコ駅」の駅舎のかわいいこと！ここは、ほんとうに北海道？

■ニセコ町役場

　情報公開、情報共有を基本に掲げるニセコ町役場。日曜日なので閑散とした役場内に、一歩入るとすぐ目に入るのは、ファイリングシステムを導入した役場内では、各職員の机上にあるのは、電話とパソコンだけ。書類の山で雑然としている「役所」のイメージを完全に裏切られ、「さすがぁ～」の声が挙がります。元、ニセコ町役場職員である㈱ニセコリゾート観光協会の山本部長が説明してくださいました。書類保管のルール、１分以内でどんな書類も探し出せるシステム、誰でもがわかる情報・・・「担当じゃないと・・」というお決まりの返答は、この役場では帰ってこないはずです。「情報公開」で激変したのは、仕事のスピードや時間の創出だけではなく、職員と町民お互いの意識の変化も大きく、お互いの関係も少しずつ変わっていったそうです。
　そういう山本さんの説明をニコニコしながら聞いていた逢坂町長は、ひとこと「ま、説明は、70点かな」

■あそぶっく

　ニセコ町役場の向かいの「町民学習センターあそぶっく」に移動。ここは、お母さん達の有償ボランティアにより運営されています。もともとは郵便局の施設でしたが、町が買い上げ運営を委託する方法を選択。当時は隣の倶知安町の図書館まで行かなければならなかったのを、「町に図書館が必要」というお母さん達の熱意が、この「あそぶっく」産みの親です。
　町からの年間予算の中で、本の購入を含む全てを有償ボランティアの方々が企画運営しています。ミニ企画やお茶のサービスなども心がこもったもので、図書館の利用者数は増え続けているそう。子供の本のコーナーでは各社の歴史教科書が並んでいるのを発見。手にとって比較できます。運営する方達の思いが伝わってくる場所でした。
　定期的に行われる町長との懇談会では、役場では気づかない細やかな視点からの問題提起や提案で活発な会議になるそうです。行政関係の方の視察でも注目される場所です。翻って自分の住むまちを考えると・・　こういう場所があれば運営参加できるかもしれないと想像が広がります・・・。

■ニセコ・生活の家

　障がいをもつ成人とその家族、ボランティアの方が隣り合って住むコーポラティブ住宅です。1997年11月に完成し、障がいをもつ成人の日中の生活場＆作業所を兼ねた生活寮1棟と、その家族らが住む戸建住宅7棟に、8家族が生活しています。生活の家の皆さんは当初、札幌で暮し様々な活動をしていたのですが、都市で暮らす難問を突破する方策として「地方」を選択、ニセコのまちづくりと雄大な自然環境に惹かれ、ここで生きることを選択されたそうです。
「でもね、逢坂町長さんと初めてお会いしたときに、町長は『ニセコのいい時期だけでなく、冬を見て欲しい』とおっしゃったんですよ。町としてできること、できないことをはっきり示され、厳しい現実も隠さず話してくださる中で、冷静に考えることができました。ここへの移住が決まってからは、町民の一人として受け入れていただいて感謝しています」というメンバーの方の言葉が印象に残りました。

逢坂町長が、補足説明をされた中に、時代が移り変わっても決して変わらない人と人のかかわりの原点と思われるものがありました。

「人はひとりでは生きられません。いろいろな人と生きていくのが当たり前です。赤ちゃん、幼児、学齢期の子どもたち、兄弟姉妹、お父さん、お母さん、それにおじいちゃんやおばあちゃん、若い人もお年寄りも、男の人も女の人もいる。そして、そういう人たちの中には、目や耳や手足や精神やこころなどに障がいを持った人もいる、それが人の社会です。そういう環境が自然です。いろいろな人が居て、みんな一緒に生きている社会を、小さい子どものうちから経験することが、子どもたちにとっても必要なことです。ニセコは小さな町ですが、そういう社会になっているのは、ありがたいことです。」と。

障がいのある人たちが安心して逢坂町長のまわりに寄っていくのも、逢坂町長がよく訪ねてくるからでしょうか。

　この生活の家は、有島記念館（今回は時間が無くパスしました）が真向かいにあり、その後ろには羊蹄山が控えているという最高の立地条件にありますが、ここでは、ミニコンサートなども開催されるそうです。
　そのように、生活の家がニセコにすっかり馴染んでいるのがわかりました。

■道の駅「ニセコビュープラザ」

　道内屈指の優良「道の駅」です。
　観光バスと地元の方が押しかけ、連日、昼ごろには農産品等の直営店では、販売品が売り切れて棚がガランとするとか。いまは約350種類の商品が並んでいるそうです。朝8時半には開店します。
　また、ソフトクリーム、おにぎりに地元農産物たっぷりのいもだんご汁、いももち、あげポテト、金つば、ソーセージに地ビールにホットドッグ、肉ジャガマン、そしてスープ餃子など、目移りしながら選ぶのもまた嬉しいショップ。
　ビュープラザの一角に、全国初の株式会社化された観光協会「㈱ニセコリゾート観光協会」が入っています。行政からの委託料をカットし、自主自立を目指し、自分達の町を素材にアイデアを商品化して収益を上げていこうというチャレンジだそうです。株主の半分は町民。農業・商業・観光が連携して魅力に磨きをかけていくそうです。これからも目が離せませんね。楽しみにしています。
　熱弁をふるうのは、観光協会の山本契太統括部長。お話をきいたからにはお土産を買わずにいられません。皆さん帰りは大きなビニール袋をたくさん抱えて解散となりました。

ここでも、また頂上付近は雲の中の羊蹄山のどっしりとした姿が・・・。

　また、あまりにも当たり前で書き忘れましたが、観光バスで移動する道々の美しさに感動したことを、やはり申し添えなければなりません。どこかで見たことのある風景・・・そう、ヨーロッパの農場に似ているのですね。緑の畑や林のなかに点在する民家とその周辺のこぎれいな庭・・・花々で飾られた道端、そして何よりも、そういう美しいまちつくりに心を傾ける町の皆さん・・。

この半日で、ぐっとニセコが近しくなりました。
　やはりただ見て遊んで回るのとは格段にワケが違います。まさに、百聞は一見に如かず。

何か違うなあと感じる裏に、「人」の思いや努力があることを知りました。ニセコファンが増えたに違いありません。私どもナチュラブ・北海道のスタッフも、参加者の皆さんと一緒に、とても楽しませていただきました。
　そして、今回の各訪問先が、ニセコ・ミニツアーの主役であることに異論はありませんが、名ガイド・逢坂誠二・ニセコ町長とニセコのほぼどこからでも眺められる羊蹄山を、参加者は決して忘れないでしょう。

　今回のシンポジウムの講師であった金子　勝・慶應義塾大学教授も、シンポジウム前に、逢坂町長によるニセコ町ミニ視察をされましたが、ニセコアンヌプリの山頂からニセコ町を眺め、ミルク工房ではソフトクリームや飲むヨーグルトなどしっかりお腹におさめられ、昼食には手作りソーセージを食べられたそうです。また1泊2日の温泉ホテルでは4回も温泉を楽しまれたそうで、「ニセコ、いいね！また来ます！」というセリフを残されました。

ニセコ町役場および（株）ニセコリゾート観光協会の皆さま、ご尽力どうもありがとうございました。

また、ご一緒できる企画を、いつか必ず・・・と欲張りつつ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（レポート：ナチュラブ・北海道スタッフ）

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