2002年度版
      

■除夜の鐘を聴きながら

去年今年を 除夜の鐘分くる その刹那 耳すまし聴く 無常の響きを (月刊「兵庫教育」平成14年3月号掲載)







■1月6日祖母(享年99歳)死去

百歳を 待たずして逝く 祖母の顔 観音のごとく 自愛に満ちて

九十九で 逝きたる祖母よ 一筋の 紅さされいて 涙をさそふ(月刊「兵庫教育」平成14年5月号掲載)

栂池高原スキー修学旅行(1/14〜18)

この子らと 来年も共に 歩みたい そう思わせた 修学旅行

教室を 離れて集う 山荘で 和が深まれる 修学旅行

■澁谷昌彦・長田高校長逝去に際し(2月11日)

覚悟秘め 団長の任を 果たせるも 修学旅行の ひと月後に逝く

通夜席に 愛聴せる曲 流れ来て 故人を送る 哀悼歌となる

「校長と 話せたことが うれしい」と 遺影の前で 涙す生徒ら

人の死を はかなしかなしと 一言で 弔辞のなかに 納められたり

■綾部山の梅林

梅林は 優しき春の 通り道 瀬戸の海へと 芳香放つ

観梅の 道の行く手の 楼閣が 漢詩の世界に 我を誘う

■学年末のワックス掛け

学年末の ワックス掛けの 手際よさに 我はただただ 微笑む達磨

■クラス文集を見て

ナンシュウの つうしんぼなるもの 渡されて 見たこともなし もったいない点

■バリ島旅行(2002・3/28〜4/1

ガムランの 響きにのせて バロン舞ふ デンパサールの 青空の下

バッテリーの 切れて心の 印画紙に ボロブドゥールの 遺跡を焼き付け

■桜の散るを惜しみ

心あらば 散るをとどめよ 桜花 せめて入学 祝ふ日までは

何思ひ 入学式を 前にして 花散り急ぐ 清明の朝

緑葉に 春を残せる 桜花 見つめられてか また散りかかる

古へより 琴線に触るる 花として 咲きても桜 散りても桜(月刊「兵庫教育」平成14年7月号掲載)

■四月八日、新年度、始業式に

感激の 卒業式を 夢見つつ この一年に 全力投球す

■通勤電車の車内にて

足悪ろき 人に席譲る 若者に してやられたと 思ひ見る我(月刊「兵庫教育」平成14年7月号掲載

■今年から週五日制始まる

週五日 ゆとりのつけは 余りあり 七限授業の 後のためいき
(月刊「兵庫教育」平成14年7月号掲載)

■六甲全山縦走(第三区)

六甲の 緑まばゆき 樹の間より 心癒せる うぐひすの声

■もっこう薔薇の咲くを見て

連休の 谷間を埋めて 咲きほこる 黄もっこうの 命の輝き

■茉莉花が咲いて

楚々として 咲く茉莉花の 香をかげば 胡同小路へ 我を誘ふ

■燕を見た日

どこからか 雨のにほひを かぎつけて 傘忘るなと 燕の低く飛ぶ

■偶感

涼しさを 目で追いながら 舌つづみ 京の貴船の 川床料理

薬指に 蛍のとまりて 妻が言ふ こんな指輪が あったらいいね(月刊「兵庫教育」平成14年9月号掲載)

蛍ひとつ 人差し指の その先を ETのごとく あくがれ出づる

■三年生の模試の監督で

模試ごとに 受験生になる 君を見て 監督する我 目を細めをり(月刊「兵庫教育」平成14年9月号掲載)

■サッカー・ワールド・カップ開幕

スタンドを 紫陽花色に 染め抜いて 国の威信を 賭けて戦う

あのジタン 地団駄踏んで 悔しがり 王者フランス まさかの敗退

■山崎菖蒲園で蛍の夕べに

身を焦がす 源氏蛍の 一群れが 幻の巻へと 姿隠しつ(月刊「兵庫教育」平成14年9月号掲載)

■暑中見舞いを書くに

万年筆に せめて文月 インク充たし 暑中見舞いは 手書きの味を

■イタリア旅行(2002・8/3〜8/11)

離陸前 期待と不安で 高まりぬ 胸の鼓動が 始まり告げる

七時間 時計の針を 戻しつつ まだ見ぬ国へ 思ひ馳せたり(月刊「兵庫教育」平成14年11月号掲載)

後五時間 心はすでに 降り立ちて ミラノの街を 歩く我あり

何よりの 至福の時を 過ごしたり 十五分間の 「最後の晩餐」

旅人が リアルト橋に たたずみて ヴェニスの風に 身を委ねをり

ヴェネチアの 路地で迷へる 旅人を カーニバルの マスクが笑ふ

ゴンドラが ため息橋に さしかかり つひ先程の 悲話よみがへり

我もまた 斜塔支ふる ポーズとり 妻微笑みつつ シャッターを押す(月刊「兵庫教育」平成14年11月号掲載)

糸杉の 木立の奥の 尖塔群 サンジャミャーノは ゴッホの絵に似て

憧れの 青の洞窟 見ぬ旅に 「ナポリ見て死ね」 次へのおあずけ

ゆとりなく バッグ押さえて 列をなし 添乗員の 歩幅で旅する

炎天下の ポンペイ遺跡を 冷ややかに 見つめていたり ヴェスビオスの山

知り合へる 旅の仲間と 杯を上げ 我饒舌に カンツォーネに酔ふ

■父の十七回忌の日に


わが父の 十七回忌に 集ひし日 老いたる者の 多きに驚く
(月刊「兵庫教育」平成15年1月号掲載)

■二学期を前に

新たなる 学期を前に 心なしか せわしく聞こゆる 法師蝉の声

一日の 始業式が 日曜日 教師も生徒も 得した気分

■長月の夜に

長月の 心静める 雨の夜に ふと枕元に 義母の立ちをり

■ゴッホ展を観て(兵庫県立美術館)

照明を 落とした中に 浮かび出づ ゴッホの自画像 憂色を帯ぶ

書簡にて 耳傷つけし 故知りて 再び見なほす ゴッホ自画像(月刊「兵庫教育」平成15年1月号掲載)


■巨人のリーグ優勝の夜に

敵地にて 負けて優勝 原巨人 六甲おろしで 宙に舞ひたり

■偶感

パソコンに 我の気持ちを 読まれてか 「あい」と入力 「哀」と打ち出す

■尿路結石と診断され

3ミリの 結石我を 痛めつけ 帰りの列車の 異様な遅さ

■食後のウォーキング

夕まぐれ 妻と食後の ウォーキング 刈り干す稲束 秋匂ひ立つ

■山陽電車の事故の朝


事故ありて 代替輸送せる 新快速の 静かな音に つひまどろみぬ

■花粉症の季節に

キリン草の 名に反してか むずむずし くしゃみと涙の とまらざりけり

■USJへの遠足(10月31日)

久々に 顔会わせたるは USJ 今日の笑顔を 明日も見たい

受験生も 教師もこの日は 子に戻り アトラクションへと 一目散に駆く

■霜月の早朝

気がつけば 今年は秋を 見ぬうちに 吐く息白き 冬は来にけり