〜 アンジェリーク 〜
それから一年に一度だけ、山が桜の花に染め上げられる季節になると、少女は誰にも告げず『桜翁』の元へと赴き、その人と他愛のないおしゃべりに時間を費やすのだった。
そんな日々を重ねていく内、幼かった少女も美しい女性へと成長していった。
しかしそれほどの刻が流れ去ったというのに、その人の姿は一向に変わる様子がなく、少女が初めて出会った頃のままだった。
その人が年を重ねないことに、少女は早い時期から気づいていたが、それをその人に尋ねることはしなかった。 そんなことをしてしまえば、その人が二度と自分の前に姿を見せなくなってしまうような気がしていたから。
そしてそれからさらに数年が経ち、少女が『桜翁』の元へ訪れることはなくなった。
少女の意志に反して、少女は『桜翁』の元へ行くことは叶わなくなってしまった。
少女は親の勧めに従ってある男性の元へと嫁がされたのだった。
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