1787年5月16日、ヴィーンで作曲される。(自筆目録による)
弦楽五重奏曲の分野では断片を除き、モーツァルトは6曲の作品を遺した。モーツァルトの弦楽五重奏曲は、ヴァイオリン2、ヴィオラ2、チェロ1の編成である。作品のナンバーリングやケッヒェル番号と作曲年代にはズレがあるようであるが、第3番 ハ長調 K.515 とこの第4番 ト短調 K.516 はほぼ同時期に作曲されている。
この作品について語るには、小林秀雄(1902〜1983)氏の著作”モオツァルト”に触れなければならない。小林氏のモオツァルトは、昭和22年(1947年)7月創元社から初版(単行本)が発行されている。この著作以前の戦前の日本では、広く出版されたモーツァルトに関する文献はほとんどない。
モオツァルトの欠点としては、
1 小林氏が音楽関係の批評家(評論家)でないこと。
2 引用されているのも、フォン・ゲーテやスタンダールなどの文学関係者であること。
3 当時のクラシック音楽の劣悪な環境 (限られた曲しか聴くことができなかった。)
が挙げられる。最初に欠点を指摘したが、この不朽の名著の価値をさげることにはならいことを理解されたい。
モオツァルトの九の章で小林氏は、弦楽五重奏曲 ト短調 のアレグロ冒頭をゲオンが疾走するかなしさと表現したのを取り上げ、萬葉の歌人の「かなし」の感性と結びつけた。室内楽のテーマは演奏家の表現の仕方で印象はかなり違うが、しかし、このアレグロは、私自身にはとてもメランコリックに聴こえる。モオツァルトのかなしさは疾走する、或いは、涙は追ひつけないとの表現には同意するが、どうも、根本的な部分の捉え方が、小林氏と私は違うようである。モーツァルトの音楽は人間的で、かつ、感覚ではなく理性的に創られているのである。いとかなしの世界とは別の次元であると思う。
小林秀雄氏の文章は難解で、私の学生時代、難関大学の入試問題でよく出題されていた。意図的に文章を削っているようで、読んでいくと頭痛がして精神分裂症的な気分になる。個々には共感するのであるが、さて全体を読み通すと何を読んだか分からなくなってしまう。いまどき、小林秀雄氏のモオツァルトを読んで、モーツァルトの作品を聴いてみようとする人はいないかもしれないが、時々読み返してしまう。ちなみにモオツァルトは現在文庫本にも収録されているが、私の手元にあるのは、昭和24年(1949年)の再版である。1984年2月25日池袋西武のスペースの古本市場で500円で購入したものである。K.Hayamiのサインがしてある。他に、1949.4.17 はっちゃん より 東京旅行のおみやげに ありがとう! 和 と同じインクで文字が書かれている。戦争から間もないこの時期、モーツァルトに関心を持っていた人達はどのような人物であったのであろうか。なぜ、この本を手放したのであろうか。
第1楽章の半音下降の優柔不断さから、更に、第2楽章は悲痛な響きになる。第3楽章でやや落ち着いた雰囲気になり、第4楽章の主部では一転してト長調になるが、しかし、それは輝きのある長調ではない。
最後に余談になるが、私が敬愛する作曲家 シューベルト と ブルックナー も幸運なことに不滅の弦楽五重奏曲を遺してくれた。モーツァルトを含め別の視点からも解説したいが、モーツァルトのサイトであるので割愛する。しかし、結論を述べると、おそらく、この3人の中で一番耳が良かったのはシューベルトであろう。
演奏・録音
私は、長く アルバン・ベルク弦楽四重奏団(+マルクス・ヴォルフ) の録音を聴いてきた。非常に丁寧に演奏されている。しかし、最近響きが薄いようにも感じられるようになってしまった。先日、BRILLIANT CLASSICS という輸入盤のストリングクワルテット&クインテット全集(トリオも含まれている。)を何気なく購入した。演奏しているアンサンブルは数団体あり、統一されていないが、弦楽五重奏曲 第4番 ト短調 については、オルランド弦楽四重奏団(+今井信子) の演奏である。モーツァルトが弦楽四重奏の編成にヴィオラを1本加えた意味を考えると、この演奏と録音は優れていると思う。オルランド弦楽四重奏団はオランダの団体であるが、メンバーは国際的であるらしい。なお、音源のクレジットのレーベルは BIS であり、デジタル録音の状態もすばらしい。
String Quintet No.4 in G minor K.516
Music was written in Vienna on May 16 ,1787.Mozart left the work of 6 String Quintets.
Mozart's String Quintets are organization of violin 2,viola 2,cello 1.
Kobayashi Hideo's (1902-1983) writing "Mozart" was published in July,1947.In Japan of the Worldwar2 days before,there is almost no reference about Mozart published widely.But,Mr.Kobayashi is not a music's critic.He was took up the Allegro beginning of String Quintet in G minor.It is "grief".
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