≪地下?階−1≫
私たちの勢いは止まらない。黄泉の国へ落ちてきた勢いで、今度は街に帰還する!
・・・いや、なんていうか、怪しげな場所に足を踏み入れたらそうなっていたのだ。見事なまでのUターン。落とし穴に落ちたら、底にトランポリンが仕掛けてあったようなものだ。
しかし黄泉の国ではあせった。地下11階から落ちたのだから地下12階だとばかり思っていたのだが、そうではなかったのだ。見出しに
“?階” と書いているのはそのためだ。
落とし穴から進入したせいで、自分の足で戻ることができず、しかも現在地が分からないからマロールで帰還することもできない。もし怪しげな場所を素通りしていたら、久しぶりに遭難日記を書くことになっていただろう。
・・・もしかして、私も少しは進歩しているのか?
≪地下?階−2≫
「黄泉の世界は地獄の魔王のつどう場所。重々警戒せよ。」
これが掲示板に書いてあったメッセージだ。そう、この階はまさにそんな場所だった。通路はほぼ一本道。その途中にはいくつかの広間があり、そこにはまさに魔王と呼ぶに相応しい、強大なモンスターが居座っていたのだ。
そんなことを知らず、初めて広間に入ったときには驚いた。圧倒的な威圧感をもった存在が、なんと口上つきで登場したのだから。
「’Fools! Welcom to your doom!’」
うわっ、こいつなんか言ってるぞ!
ハエの魔王ベルゼブブがモデルと思われる、フライプリミアーの登場だ。
しかしウォーマスターを軽くひねった勇者たちなら、魔王とて敵ではないだろう。
・・・と思いきや、なにこいつ!? 200ダメージ以上与えているのに、死のブレスによる攻撃が125ダメージだと!
ブレス(息)のダメージは、残りHPの半分。つまり、HPがまだ250も残っているということだ。もし無傷の状態でブレスを使われたら、全員が200を軽く超えるダメージを受けることになる。一撃でリセット決定だ。
なんとか倒すことはできたのだが、冷や汗ものだった。どうやらこれまでの延長ではなく、完全な別世界と考えなければならないようだ。私たちは兜の緒を締めて、次の広間に侵入する。
「熱風が吹きぬけた。熱砂をわたる乾いた風。風の魔神のさきぶれだった。」
というナレーションとともに現れたのは、砂漠の魔神パズスがモデルと思われるマイルフィック。ウィズ1の最強ザコだった奴だが、戦闘はあっさり終了した。魔王の中にも弱い奴がいるようだ。
そして3つ目の広間。
「全ての者に平等なる者・・・それは我。我こそ ’死’ そのものなり」
巨大な鎌を持った骸骨、デス。・・・死神か。対峙しているだけで、背筋が凍りつきそうになる。だが気おされていては戦いにならない。私は仲間たちを勇気づけるために叫んだ。そう、言葉をつむぐことだけが、詩人にできることなのだから。
「死神など恐れるな! 我々には疫病神がついている!」
その直後、リセットすることになりましたとさ。
≪地下?階−3≫
魔王たちの強さは半端じゃない。しかし私たちは、時には地下11階に戻って鍛えなおしたりしながらも、特殊能力
“リセット” を頼りに、何度でも復活する魔王たちに挑み続ける。6体いる魔王たちの中には、楽に倒せる者もいれば、幸運に恵まれなければ倒せない者もいる。しかしそのどれもが、今回の事件の黒幕ではなかったようだ。すると魔王をすべる存在がいるのかもしれない。だが今の私たちには、そんな奴を倒すことはできないだろう。
力が足りない。装備の強さが足りない。そしてなにより、指示を出す者のおつむが足りない!
最後のは諦めるしかないとしても、他は克服可能なはずだ。勇者たちは黄泉の国を探索しながらも、黙々と戦闘を繰り返していく。そして魔王たちとも互角以上に戦えるようになり、また地図がほぼ完成したころ、突然奇声を上げる奴がいた。
≪地下?階−4≫
結果はっぴょーう!
きっとみんな忘れている、カルフォの成功率の調査結果を公表したいと思う。
宝箱を見つけるたびにコツコツとデータを取り続けていた私だが、ついにサンプル数が1000に達し、十分なデータを入手したと判断したのだ。ということで、100回ごとの失敗回数を書いておく。
4/4/9/2/8/1/4/6/3/5
ウソっぽい時もあれば、最も集中したときで6回中4回失敗と本領を発揮した時もあるが、合計すると46回。つまり成功率は95.4%。説明書に書いてある
“成功率95%” を統計という手段で証明することはできないが、信じて構わないのではないだろうか。もちろんこれは
“外伝2” の結果であり、他はどうか分からないのだが。
≪地下?階−5≫
勇者たちはさらに強くなり、伝説の英雄に匹敵する強さを手に入れた。装備だって伝説級の物ばかりだ。
デスをも真っ二つにする侍専用の究極兵器、ムラマサ。ロードの最強武器ということになっている、ベイキングブレード。本当のロード最強武器、エクスカリバー。そして4つも入手してしまった聖なる鎧。そしてその他もろもろ。
今の私たちは、ボルタック商店もビックリのお宝集団になっている。全てを一度に売りつけ、数百万Gものお金を即金で払ってもらえるか試してみたくなるほどだ。
もちろん装備だけではない。平均レベルは37。あの役立たず・・・おまけ・・・足手まとい・・・にぎやかし・・・ええい、名前が出てこない! ともかく奴でさえ、全ての魔法を遠慮なく使うことができるのだ。今や彼女は、縁の下の力持ち的な存在だ。
今の力がどれほどのものなのかを知りたい。そこで1つの挑戦をしてみた。それはノーリセット魔王6人斬り。
ページの都合で、前述の3体は省略する。
トライアス
「蹂躙せよ! この空間を我らが眷属のものとするのだ!」
おお、かっこいい! でも “眷属” が4人じゃ、蹂躙などできないと思うのだが。人数に勝る勇者たちは、阿修羅がモデルと思われる鬼神と眷属たちをあっさり蹂躙する。
ディスペラント
「まるで闇が染み出すように見えた。それが翼を広げたのだ。恐怖が突き上げてくる。」
・・・のは私だけだったらしく、勇者たちはこいつもあっさり打ち倒す。間違っていたら恥かしいので、こいつの由来は書かないことにする。
アークデーモン
「’None shall past. If ye wish,Ye shall die.’」
ミーは日本男児アルネ!
陰に隠れて震えていた私だが、勇者たちはついに魔王6人斬りを達成した。それも圧倒的な強さで。
これ以上、訓練を重ねることに意味はない。こうしている間にも、マナヤ様たちはもがき苦しんでいるのだから。時間をかければかけるだけ、多くの人を苦しめることになるのだから。
私たちがすべきことは、残すところ後1つ。そう、魔王をすべる者を倒すこと。
・・・どうか、そいつが黒幕でありますように。ここまできて人違いはごめんだ。
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