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≪地下10階−1≫

 ・・・落ちていく。一体どこまで続いているのだろう。いまだ底が見えない。やがて空気が変わってきた。
 懐かしい・・・。そんな思いにさせてくれる空気。日本の私の部屋を思い出させてくれる空気。
 そして私たちは、ついに最下層、地下10階にたどりついた。そして私は、その空気をさらに強く感じていた。
 間違いない。これは私が慣れ親しんだ空気と同じものだ。

 「ひんやりとしたカビ臭い空気に 禍禍しい気配が満ちている。血の臭いが漂っていた。」

 ・・・前言撤回。


≪地下10階−2≫

 この階は、ほとんど1本道になっていた。しかしこの階へのマロール移動はできない。つまりモンスターを蹴散らしながら前進していくという、強行軍を強いられるということだ。
 この階で出会うモンスターは、地下9階よりもさらに1ランク上。中には2ランク上といってもいいほど強力なものもいる。しかしこちらも負けてはいない。いまだ圧倒的な威力をほこる魔法を連発し、力ずくで突き進んでいく。そして地図を埋めていった私たちは、ついに怪しい部屋を見つけることができた。

 周囲を通路で囲まれた小部屋。地図を見るとまだ空欄がかなり残っているが、他に行けるところはなく、ここが皇帝の部屋であることは疑いようもない。私たちは場所を確認すると引き返し、この階での訓練を行うことにした。相手はラスボス。妥協は許されない。


≪地下10階−3≫

 この階で最強の、そして何度戦ってもかなわなかった強敵、グレーターデーモン(上級悪魔)の群を葬りさる。かなりの苦戦を強いられたが、ついに私たちは勝利した。これで皇帝に挑戦状を叩きつける資格を手に入れたといっていいだろう。
 この階では苦戦を強いられることが多い。ゆとりを持って皇帝の部屋にたどり着くことはあまりない。しかし次にそんな時があれば、その時こそが決戦となるだろう。


≪地下10階−4≫

 うげげっ、宝箱の罠に引っかかった! 悪魔の目玉1発で5人が石化。幸い難を逃れたのが回復魔法を使えるリュードだったため、最悪の事態は免れる。
 更に前進。皇帝の部屋の直前で、ドラゴンゾンビと遭遇。通常は敵が出ないこの場所でこんな奴に出会うということは・・・このまま皇帝に挑戦しろということだろうか?

 「仕掛けられた罠をかいくぐり、護衛のドラゴンを打ち破り、最後の戦いに挑む冒険者たち。」

 おお、これぞファンタジーだぜ! よし、このまま皇帝の部屋に突入だ。度重なる戦闘でボロボロになってはいるが、これを知恵と勇気で克服してこそヒロイックファンタジーというものだ。
 全員、突撃!

 部屋に突入した途端、視界が一瞬みだれる。・・・どうやら、ワープの部屋だったらしい。
 ああ、見事な肩透かし。うっかり日記を盛り上げてしまった私は勇み足。

 余談だが、肩透かしと勇み足は、どちらも相撲の決まり手から生まれた言葉だ。念のために書いておくが、どすこいというのはちょっと違う。いや、全然違う。


≪地下10階−5≫

 地図の空欄部分に行けることが分かったため、さらに探索を続ける私たち。やがてリュードのレベルが19に達した。そして・・・魔法を修得した!

 以前にリュードが、16レベルになっても最低ランクの魔法であるカルキを覚えていないと書いたのだが、18レベルの時点でもまだ修得していなかったのだ。残るはカルキとマバリコだけ。こんな時、どちらが最後になるのかが楽しみに思えてくるのは、はたして私だけだろうか。
 最低ランクのカルキか? それとも最高ランクのマバリコか? 私は緊張しながらリュードの呪文の書を確認する。すると・・・両方とも修得していた。

 ああ、一番つまらない結果になってしまった。これがならば、きっと何かをやらかしてくれたと思うのだが。
 例えば最後までどちらも覚えてくれないとか、代わりに他の呪文を忘れるとか、呪文の書から落書きやヨダレの跡が見つかるとか、「捜さないで下さい」という置手紙を残して姿をくらますとか・・・。


≪地下10階−6≫

 ついに決戦のときが訪れた。その部屋の中央に置かれていたのは豪華な棺。私たちを待っていたかのようにふたが開きはじめ、突如として跳ね除けられる。そして姿を見せたのは、ローブをまとった大柄な男だった。間違いない。彼が皇帝だ。

 皇帝「愚か者、愚か者めが! 貴様らは何も分かっておらぬ。」

 んげげ、皇帝の名前を知らないのがバレてる!?

 皇帝「せめてその命を 我が糧としてくれようぞ。」

 名前を知らなかったくらいで命を取られたくはない。それに交渉の余地がないことは明白だ。皇帝、勝負!

 ・・・ティルトウェイトをくらってリセットしましたとさ。


≪地下10階−7≫

 敵全てに平均80ダメージ。100ダメージを超えることさえ珍しくないティルトウェイト。私たちの快進撃を支えてきた最強ダメージ魔法だが、その恐ろしさをはじめて理解した。この魔法を操る皇帝を倒すのは、今のままでは無理だ。

 考えてみれば、私たちがこの階のザコ敵よりも明らかに優れているのは、素早さだけといってもいい。先手を取って魔法を連発していたからこそ勝ち続けていたが、実は能力そのものはほとんど変わらないのだ。
 私は自惚れていた。結果だけで全てを判断していた。この敗北を無駄にしてはならない。私たちがまだまだ未熟であることが分かったのは大きな収穫だ。

 そうそう、あの戦いではもう1つの収穫があった。なんと皇帝の名前が判明したのだ。その名はハルギス!
 ・・・って、今さら分かっても盛り上がらんな。地下1階の掲示板にでも、自分の名前を書き込んでくれてたらよかったのに。
 ばったり出会ったりしたら嫌だけど。


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