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≪RPGコラム、その3:やり込み要素は必要か≫

 今回のコラムは、大抵のRPGに存在し、最近のRPGでは力が入っていることの多い、やり込み要素について書いていきます。ついでにその対極ともいえる、「データを引き継いだ強い状態での再スタート」についても少し書いてみます。

 やり込み要素とは何かというと、そのゲーム本来の目的以外にも楽しめるおまけ要素(大抵の場合はクリア以降も長時間遊べる要素)、と考えていいと思います。昔のRPGではレベルを上限まで上げたり、アイテムをすべて入手したりというだけのものでしたが、最近のRPGでは開発者がそれを楽しみ方の1つとして取り入れているものが少なくありません。つまり元々はプレイヤーがそのゲームを遊びつくすつもりで、あるいは好きなゲームから離れられなくてしていた行為を、開発者がゲームの一部として採用した、と考えられます。
 ところで、なぜ容量が厳しくムダを極限まで減らすことが必要だった昔のRPGに、やり込める余地があったのでしょうか。理由はゲームによって様々でしょうが、最も共感できるものは、そのゲームを全てのプレイヤーがクリアできるようにするためというものです。レベルなどにゆとりを持たせているからこそ、RPGの戦闘が得意ではない人でも時間さえかければ(そして謎解きなどでつまらなければ)、そのゲームを最後まで楽しむことが可能となるのです。この誰でも最後まで楽しめるように作れる娯楽であることは、RPGの大きな特長であると思います。

 そして現在。ハードの性能が飛躍的に向上し、数値データ的な仕様に関しては容量無制限と考えられるほど自由に作れるようになった結果、やり込み要素の存在は、開発者にとっては作り込んだ証明として考えられているように感じます。これ自体は、さほど大きな問題だとは思いません。ゲームバランス上のゆとりがきちんと存在するのであれば、そのゲームをいつまでも楽しみたいというファンへのサービスとして、あるいは後日譚的なシナリオの都合として、クリア以降も目的や目標を存在させることに意味は見出せると考えています。また本来の目的以外にも寄り道的な遊び方を可能にすることで、世界の広さ等を演出することも可能でしょう。
 ようするに、ゲーム本編がきちんと作られているならば、きちんと作られたやり込み要素はプラスになる可能性があるということです。

 しかし実態はどうか。ゲーム本編が素人目にも明らかな手抜き仕事でありながら、やり込み要素に力が入っているRPGは珍しくありません。またやり込みにかかる時間が異常に長く、目標達成までがつまらない単純作業になってしまうものも存在します。これでは「やり込み要素を入れれば十分に作り込んだことになると、開発者が勘違いしている」「ゲーム本編を楽しく作ることができないから、やり込み要素でごまかしている(そんな開発者だからやり込み要素をきちんと作ることもできない)」「プレイ時間を引き延ばすセコイ手法」などと思われても仕方がありません。そしておそらくは、そういった部分が少なからずあると思います。

 しかも過剰なやり込み要素にはデメリットも存在します。どこまでも成長できる、あるいはゲーム進行の速さがプレイヤーによって大きく異なるということは、それだけバランス調整が難しくなるということだからです。優れたシステムとバランスを実現させるためには、数値データの範囲を想定し、ある程度制限することも必要なのですから、過剰なやり込みRPGには、きっと質の限界があることでしょう。そしてそれは、やり込み要素のせいでゲームがつまらなくなり、やり込む気がしなくなる可能性もあるということです。
 そもそもやり込みの楽しさとは、物欲を満たすような単純かつ原始的なものです。様々な物語を内包した冒険の過程そのものを楽しむ、ゲーム本編に匹敵するだけの充実感が得られるものではありません。
 そう考えると、理想のRPGとはどこまでもやり込めるものではなく、初めから何度もプレイしたくなるものではないかと思えます。やり込み要素はあってもいいけれど、あくまでおまけであって中心にしてはいけない、と考えるのが良さそうです。

 そんな考えから生まれたわけではなさそうですが、再プレイを容易にするためのデータ引き継ぎが可能なRPGも存在します(分岐があるRPGでのみ確認)。しかし引き継ぐデータの種類によっては見せ方が違うだけで通常のやり込みと大差ないですし、優れたRPGならば主人公が弱い時には弱い時にしか味わえない楽しさが存在するはずで、その楽しさを殺してしまうことにもなります。
 つまり能力の引き継ぎとは、「戦闘がつまらないゲームのつまらない部分を省略する」という効果しかなく、引き継ぐ内容や方法にもよるとはいえ、私はほぼ不要なアイデアであると考えています。そもそも初めて遊ぶゲームと2周目ではプレイヤーの知識量が異なり、普通にプレイしても2周目の方が楽になるのですから、その辺りのバランスを考慮するならば、逆にハードモードを追加する方がまだ筋が通るくらいです(ハードモードが存在するRPGは既に存在しますが、その意図は不明です)。

【後日追記】
 「理想のRPGは〜初めから何度もプレイしたくなるもの〜」と書いた直後に分岐のことを書いているので、私の考える理想のRPGは分岐がある作品だと思われた方もいるかもしれませんが、これは単なる偶然です。ゲーム部分での自由度は重要だと思いますが、シナリオ部分での自由度はあっても無くてもいいと思っています。


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