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≪RPGコラム、その2:計算式の大切さ≫

 2010年1月に、「ドラゴンクエスト6 幻の大地」がニンテンドーDS用ソフトとして発売されました。私は購入していないのですが、スーパーファミコン版をプレイした時に「ひどいシステムだ」と感じており、その部分が修正されているのかどうか気になっていました。そしてネットで情報を集めた結果、その部分での改善は無し。予想通りではありましたが、同時に開発者の能力を情けなくも思いました。
 私がひどいと感じた部分、それは就いている職業によって能力値が変化することです。問題なのは変化することではなく、変化のさせ方です。

 実際のゲームでどうなっているかを簡単に説明しておきますと、職業についていない場合、戦士タイプのキャラクターがHP100の時に魔法使いタイプのキャラクターはHP60程度。そして戦士に転職すればHPが+10%され、魔法使いに転職すればHPが−40%されます。
 このような単純な計算式の場合、戦士タイプのキャラクターが戦士になり、魔法使いタイプのキャラクターが魔法使いになると、HPはそれぞれ「110」と「36」になります。その比率はなんと3倍。これでは魔法使いが打たれ弱すぎて、まともなゲームバランスにはなりません。つまりドラクエ6というゲームは、キャラクター設定にあった職業に就かせることが困難なゲームと言えるのです。

 念のため、基本設定とは逆の職業に就いた場合を考えてみます。
 戦士タイプを魔法使いにし、魔法使いタイプを戦士にした場合、HPは60と66。戦士タイプの基本値が100であることを考えると、戦士タイプが魔法使いになってようやく後衛としてはまともであり、魔法使いタイプは戦士としても役に立たないと言えます。

 ここでの問題は、HPの基本値が「100:60」と極端に差があることや、魔法使いになった時の「HP−40%」という修正が極悪であることは、すぐに気付かれると思います。しかし基本値や修正の幅を抑えれば全てのキャラクターが万能化してしまい、パーティプレイの面白さを損ねてしまうのは明白です。

 ではどうすればいいのか。私ならばこうします。
 戦士になった時に「基本値+10%」とするような単純な計算式を廃止し、代わりに「(職業値×2+基本値)/3」という計算式で求めるようにします。職業値とはレベルと職業によって決まる値であり、HPの場合、戦士ならば「レベル×5+25」、魔法使いならば「レベル×3+15」という計算式で求めます(その職業に対する適正が最も高いキャラクターの能力値とほぼ同じになるように設定する)。
 このような計算式にした場合、戦士タイプが戦士になれば(レベルは15とします)HPは100で無職状態と変わりませんが、魔法使いタイプが戦士になった場合はHP86と跳ね上がり、前衛も務められる数値になります。逆に戦士タイプが魔法使いになった場合はHP73と、「それらしい値」になりますし、魔法使いタイプが魔法使いになった場合は、HP60と現状を維持できます。これならば魔法使いタイプのキャラクターが魔法使いとして冒険することが可能ですし、戦士タイプを戦士にした時に強くなりすぎることも防げます。

 ここで考えてほしいことがあります。それはこの計算式には、「足し算」「掛け算」「割り算」しか使っていないということです。つまりこのコラムで書いていることは、小学校レベルの算数であるということです。高度な数学を学んでいなくても、RPGの仕様というものは既存の名作よりもはるかにレベルの高いものを作ることができるのです。逆にいえば現在のRPGの計算式を組み立てている人は、算数も満足に扱えないと言えるわけです。

 RPGの楽しさの1つは、プレイヤーのイメージを実際に体験できることにあります。そして計算式をうまく使えば、それを実現することが可能なのです。逆にうまく使えていない作品ばかりという現在のRPGは、RPG本来の楽しさを持ち合わせていないと言えるのです。
 計算式の工夫。それはダメージ計算などにも言えることであり、この分野が発展しない限り、RPGは何十年たっても進歩しないと、私は考えています。事実ドラクエ6は、14年以上たっても何の進歩もしていないようです。

 コンピュータRPGというジャンルに関しては、スーパーファミコン(昔のゲーム機)レベルの性能があれば、最高レベルの「楽しさ」を生みだせると考えています。もちろん「凄さ」を生みだすことには性能による限界がありますが、その「凄さ」ばかりを追い求めてきた結果、肝心な「楽しさ」が向上していないのが、RPGというジャンルであると考えています。
 そこであなたが今後面白いと感じるRPGに出会えた時には、「そのRPGはどこが楽しいのか」を考えてみてほしいと思うのです。きっと「凄さ」や「快適さ」ばかりに目を奪われて、あるいは「損得」ばかりを考えており、「自由に遊べる楽しさ」や、「イメージ通りに遊べる楽しさ」を味わえていることは、まれであると思いますので。

おまけ:趣味語りのページに、RPGに関する判定式のアイデア集を載せています。


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