≪秋の月、18日(金)≫
今日の依頼はソフィアから。「一緒に遊びに行かない?」ということで、氷原に咲く花を見に行った。
ただ出発前に、ソフィアがエリザさんから何か約束させられていたのが気になるが・・・。
今日のソフィアは明らかに変だ。遊びに行こうと誘ったのはソフィアのほうなのに、全然楽しくなさそうなのだ。
もしかして私、気に障るようなことをしたのだろうか? それに今日のソフィアは、言っていることがおかしい。いや、おかしくない。いや、おかしくないからおかしい。ああ、わけわからん。ともかく、いつもの逆言葉じゃないのだ。
・・・そうか、エリザさんに言われていたのはこれか。きっとウソをつくなと言われたんだな。
ソフィアが逆言葉でしゃべるようになったのには、エリザさんが大きく関係している。姉を愛するがゆえの行動と言ってもいい。そんなソフィアがエリザさんから言葉を注意されたとしたら・・・確かに、辛いだろう。どうすればいいのか分からなくなるだろう。
ソフィアは耐えきれなくなり、走って帰ってしまった。放ってはおけない。私はソフィアを追いかけた。「私は気にしない」、ただそれだけのことを言うために。
屋敷に行ったとき、エリザさんに出会った。ソフィアのことを聞いてみたら、やはりそうだった。
エリザ「あの子は相手を好きになればなるほど、その言葉で相手を傷つけてしまいますから。」
・・・それはどうだろうか?
ソフィアのことを本当に大切に思っている人であれば、ソフィアの口から出た言葉ではなく、彼女の心の声を聞くことができるだろう。彼女は自分の心には嘘をつかないのだから。むしろ直す必要があるとすれば、彼女のことを知らない人のため・・・ではないだろうか。
エリザさんも今になって気づいたようだ。私のために、というのであれば、直す必要などないことを。
私はソフィアがこもる、彼女の部屋の前に行った。
ソフィア「素直じゃないわたしと、正直なわたしと、どっちがキライ?」
・・・決められない。
そういうと、ソフィアは驚いた。私はモコモコに変身し、ソフィアを呼んだ。「これが僕の秘密だよ。」
私は自分が人間なのかモンスターなのか分からない。でもどちらも自分の本当の姿だ。大切なのは、表面的な部分ではないんじゃないかな?
・・・こんな私は、嫌いかな?
ソフィア「・・・・・・大キライに決まってるわ。」
そしてソフィアはにっこり笑うと、喜びに満ちた声でもう一度言った。
ソフィア「大キライよ、ヨシヒト。」
彼女は自分が楽に生きることよりも、姉への想いを、そしてこれまで作りあげてきた自分を大切にすることを選んだようだ。いや、選んだのではなく・・・それが正直な気持ちだったのだろう。彼女は自分の心には、決して嘘をつかないのだから。大切なのは言葉じゃない。それが彼女が学んできたことなのだろうから。
≪秋の月、19日(祝)≫
今日は「せまるカブ祭り」だが、例によって私は不参加。くぅ、本当にさびしいぞ。
そのうっぷんをグリモアにぶつけ、今日は1日での最多タイとなる、うろこ3つをゲット。グリモアにとってはいい迷惑だろうな。
≪秋の月、20日(月)≫
今日の依頼はトゥーナから。「大事な話があるから。」
そして会いに行ったら、インヴァエル川のほとりに行こうと言われた。そこで全部話すから・・・と。
全部話す・・・ということは、トゥーナは神隠しの光について、そして自分の秘密について、真実に気付いているのではないだろうか。でも辛い現実を認めたくない、だからこれまで自分にもウソをついていたのではないだろうか。
ともかく話を聞き、全てを受け入れよう。それが私にできることだ。
覚悟を決めて川のほとりへいったところ、いつものモコモコが倒れていた。慌てて手当てするトゥーナ。幸い大したことはなかったようだ。しかしこのモコモコ、私たちの行くところにはいつも現れるな。よっぽどトゥーナが気に入ったんだろう。
その時神隠しの光が現れ、時空の門が開いた。モコモコはそこへ入って行こうとする。また友達が消えてしまうと感じたのか、トゥーナは門の前に立ちふさがった。巨大な赤い鳥の姿になって。
・・・え!?
あの鳥は、トゥーナだったのか!? そうすると、彼女はもしかして、私と同じモンスターハーフ・・・。
トゥーナは気付いていたようだ。神隠しの光が自分のせいで発生していたことを。でもトゥーナはまだ気づいていないようだ。私と一緒の時には、さらに高い頻度で光が発生していたことを。
私がもっと早く打ち明けていれば、彼女を長く苦しめずに済んだのかもしれない。でも、今からでも遅くはない。私はモコモコに変身した。
トゥーナはまだ理解できていないようだった。いや、頭では理解できても、心がついていっていないのだろう。
その時、また神隠しの光が辺りを照らし、門が開いた。先ほどのモコモコが入って行こうとするのを、トゥーナはまたもややめさせようとした。でも・・・。
私はトゥーナを止めた。この門の向こう側。そこは多分、始まりの森だ。モンスターの故郷だ。モコモコやかつて消えたというトゥーナの友達は、きっと故郷に帰りたかっただけなのだろう。
モコモコは門に入る前に、「ありがとう」、そう言ったような気がした。
私たちが一緒にいれば奇妙なことが起こる。でもそれは決して、不幸な出来事ではなかったのだ。
でも驚いたな。こんな小さな町にモンスターハーフが2人も住んでいたなんて。・・・しかしトゥーナは、綺麗な赤い鳥か・・・。
・・・私なんてモコモコなのにさ。モコォー!
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