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≪秋の月、15日(火)≫

 今日は「イカす! 釣り大会」の日だが、交流祭の関係でウェルズさんに話しかけられないので、私は不参加だ。くうっ、独りぼっちでさびしいぞ。もっとも町を回って、お祭りの気分だけは味わったのだが。


≪秋の月、16日(水)≫

 今日の依頼はカリンから。だったはずなのだが、家出したカリンを捜すことになってしまった。
 カリンは推奨レベル28のオッドワードの谷を1人で抜けて、都会へ行こうとしていたことが判明し、モンスターの餌食になっているのではないかと焦ったが、そこはさすがにカリン、谷の入口で休憩していたので助かった。発見した時には拍子抜けして、盛大にずっこけたのだが。

 カリン「ホントは都会に行こうと思ってたんだけどね。でも・・・・・・。(・・・・・・・・・・・・) それに、こんなモンスターだらけのところ、怖くて通れるはずないよね。」

 モンスターだらけのところ、怖くて・・・か。
 ・・・・・・。
 でも良かった。カリンが無事で。それに都会に行ってしまったりしていなくて。
 ともかく帰ろう。ヘーゼルさんも心配しているしね。
 ところがカリンは、「働き手が減ると、仕事が回らないもんね。」と、自分が単なる従業員だとしか思われていないようなことを言う。親の心子知らずだ。そして爆弾発言をした。

 カリン「しばらく、ヨシヒトの家に泊めてもらえないかな。」

 ちょっと待てい!
 年頃の男の子の家に、年頃の娘さんが泊るって、あた、ふた、あた、ふた・・・。

 しかしカリンは、「家には帰らないわよ。(・・・・・・絶対に)」と言ってきかない。
 ・・・仕方がない、一晩泊めて、明日にでも帰らせよう。でもその前に聞いておかなければいけないよな。なんで家出しようと思ったのかを。

 カリンの話によれば、以前の依頼で仕事に対する情熱を見せてからというもの、急にヘーゼルさんから仕事を大量に押し付けられて困っているという。カリン自身はお店を継ぎたいのかどうかまだ良く分からない、それにまだまだ遊びたい。それなのにお母さんは・・・。

 ・・・事情は分かった。今まで甘えていたんだから、急に仕事人間になるってのは大変だよな。普通はそこを頑張って乗り越えるものだが、カリンだしなぁ。
 でもヘーゼルさん1人で切り盛りしていた雑貨屋なんだから、カリンも1人前になれば1人で切り盛りできるんじゃないのかな? それにカリンが一人前になれば、ヘーゼルさんと2人で手分けして働くことで、2人ともが自由時間を作ることができると思うのだが。

 ともかく、今日は寝よう。私はそこらへんで寝るから、ベッド使っていいよ。


≪秋の月、17日(木)≫

 今日の依頼は昨日の続きだ。
 居候を私と同じ6時に叩き起こし、嫌がるカリンを店に連れて行くことにした。

 カリン「お母さんが心配してるのは、お店のことだけなんだよ。私のことなんて、これっぽっちも分かってくれないんだ。きっと、どうでもよかったんだよ。私のことなんて・・・・・・」

 本当に親の心子知らずだ。ヘーゼルさんはカリンのこと、本当によく分かっていると思うんだけどな。ただ照れくさくて言葉にしないだけで。

 その後もカリンは、お母さんは昔からお店のことばかりで、自分にかまってくれなかったと愚痴をこぼす。でも、それも違うんじゃないかな。仕事って、家庭を守るためにするのが理由の1つなんだしさ。甘えたい年頃に甘えられなかったのは辛いことだろうけど、頑張ってそれを乗り越えてこそ大人になれるんじゃないかな?
 ともかく、家に帰ってみればカリンにも分かるはずだ。

 そして雑貨屋へ。カリンは自分が家出したその日から、臨時休業になっていたことに驚いていた。
 店の中では、親子の感動の再会・・・になるはずがないんだよな。この2人では。まったく、素直じゃない親子だ。

 その時、紙切れが落ちているのに気がついた。これ、クレーム処理の紙だ。これってもしかして、昔ヘーゼルさんあてに届いたクレーム? なんでそんなものが今頃・・・。もしかして、今のカリンを見ていて昔の自分が懐かしくなったのか?

 ヘーゼル「最初はあたしもそんなもんだったよ。ま、あたしには守るもんがあったから、それなりに頑張れたんだけどね。」

 そういえば、カリンには責任感を持つ必要性がないんだよな。これまで守られてばかりの生活だったから。でも必要性が生まれてから頑張ろうとしても、なかなか頑張れるものじゃない。普段から少しは頑張っておかないと、いざという時にどうにもならないと思う。

 ともかく、後は2人の問題だ。口では文句ばかり言っている2人だけれど、あれはあれで仲は良いみたいだし・・・後は時間や経験が解決してくれるんじゃないかな?
 というわけで、今回の仕事は完了だ。ところで報酬は?

 カリン「そもそも、こんなおんぼろ雑貨屋、誰も継ぐなんて言ってないじゃない。」

 ヘーゼル「それはこっちのセリフだよ! だーれがあんたになんて継がせるもんかね!」

 ・・・催促できる雰囲気じゃないな。


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