≪夏の月、8日(月)≫
カリンが本気で働いた日の翌日、台風は来なかった。それどころか朝から気持ちよく晴れている。カリンの新しい人生を祝福しているかのようだ。
・・・もっとも昼から雨になったんだけどね。
今日はドンチャコスさんの誕生日だ。誕生ケーキを作りたいのだが、蒸しケーキは作れても普通のケーキは作れない。うーむ、料理の腕はまだまだだな。
仕方がない、ここはめでたいということで、焼きトキメキタイを作ろう。成功率は90%か。楽勝だな。
失敗した。(汗)
1匹しかいなかった貴重なトキメキタイが失敗作になってしまったため、今度はタイの焼きものを作る。成功率100%だから、こんどこそ楽勝だ。そしてプレゼント。相変わらずの変な言葉で感謝された。喜ばれているんだよな?
今日の依頼はイオン師匠から。「デートしよっ!」って、こんな直球ど真ん中なこと、町の掲示板に書くんじゃなーい! それにこんな恥ずかしいこと、いつまでも掲載させておくわけにはいかない。ほったらかしにされたらイオン師匠も辛いだろう。さっさと引き受けて終わらせよう。
しかしデートか・・・。意中の女性以外とデートするのはなぁ・・・。
カルロス「俺は一人の女にはしばられない。誰のものでもないんだ。ああそうさ、俺は罪な男・・・・・・。」
私にはマネのできない考え方だ。
師匠の話では、一緒に釣りに行こうということらしい。なんだ、そういうことか、良かった。しかしこんなところを、妹ラブなカルロス兄貴に見られたら大変だな。別にやましい気持ちなんてないんだが。
ビクビクしながら谷に行く途中で、すさまじい雄叫びが聞こえた。まさか、あの声は・・・。
出たー! カルロス兄貴!
結局、予定していた渓流釣りは中止、兄貴の目がとどく釣り堀で釣りをすることになった。そして夕方、弁当を食べていた時に、私の竿に凄い引きが! それも竿が折れそうなくらいの大物だ!
・・・ぷつっ。
糸が切れた。はぁ〜、惜しかった。湖のヌシだったかもしれないのに。しかし、いるんだな、この湖には化け物のような巨大魚が。たまに巨大な鱗が釣れるけれど、本体はすさまじい大きさのようだ。いつか釣れる日が来るのだろうか? でもヌシを釣るのはカルロス兄貴の夢だしなぁ。私が釣ってしまったらまずいかな?
≪夏の月、9日(火)≫
朝から雨。カリン、頑張っているみたいだな。・・・って、なんだか最近、カリンの観察日記になっているぞ。天気だけで観察日記が書けるなんて、ある意味凄いかもしれないが。
昼から台風がやってきた。カリンが呼んだのか!? でも負けないぞ!
今日の依頼はヘーゼルさんから。忙しいので店の手伝いをしてほしいということらしい。台風も収まったことだし、ひと仕事してこよう。
そして商品の補充を担当して・・・と、ヘーゼルさん、なにを書いているんだろう?
ヘーゼル「手紙の確認やらクレーム処理やらね、意外と時間をとられるんだ。」
・・・確かに時間を取られそうだな。でもこれからは違うはずだ。今日もカリンは仕事を頑張っていたからな。
そしてずいぶん早い時間に仕事は終わった。どうやらカリンのことのお礼を言うのが本来の目的で、アルバイトは口実だったらしい。ヘーゼルさんはカリンの性格のゆがみを自分が作ったという負い目もあって、娘のことをずいぶん心配していたようだ。さすがは親子と言うべきか、ヘーゼルさんはカリンのことをよく理解していたんだな。
ヘーゼル「これからも、カリンのこと頼むよ。」
そりゃあもちろん。カリンは大切な友達だからね!
・・・って、カリンが聞いたら泣きそうな言葉だな。
≪夏の月、10日(水)≫
今日の依頼はダリアから。
まだ完成していない銅像に似合った指輪を作ってほしいという。
・・・えーと?
意味が良く分からないのだが、ともかくルビーの指輪がほしいという。それくらいは簡単に作れるんだが・・・なにか裏があるんだよね?
で、持っていったら、肝心な銅像のほうは壊したらしい。で、指輪はもらっておく・・・と。
どうやら私の作った指輪がほしかっただけらしい。いやー、もてる男はつらいなぁ。
・・・って、私は今のままでいいのだろうか? さっさと結婚して身を固めたほうが、他の女の子たちに余計なことを考えさせなくて済むと思うのだが。でも結婚の仕方が分からないしなぁ。そもそもエリザさんって、結婚対象外だしなぁ。
≪夏の月、11日(木)≫
今日の依頼はさくやから。「デートせん?」って、この町の女の子って積極的だよな。これが今はやりの肉食系ってやつなんだろうか。私はモコモコだから当然草食なわけだが。
もっとも詳しい話を聞いてみたら、旅館の仕事で観光案内をするための予行練習に付き合ってほしい、ということらしい。まったく冗談がきついよ。
そして4か所ある観光スポットを回って終了。虹のかかる滝でダリアが「レインボ〜」と叫んでいたことを除けば、わざわざ日記に書くようなことはなかったが、とても面白い体験だった。これならば観光客にも喜ばれること間違いなしだろう。レインボ〜。
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