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≪オープニング≫

 僕はモコモコっていう羊モンスターなんだ。・・・多分ね。
 なんで「多分」なのかって? それはね、説明書にちゃんと書いていないからなのさ。
 そんなモコモコ羊モンスターな僕だけど、嵐の夜に空から人間の町に落ちちゃったんだ。頭を強く打ったせいでその時のことはよく覚えていないんだけど、人間の女の子に拾われて、助けられたみたいなんだ。
 ・・・助けられといてなんだけど、ベッドまで引きずって行くのは勘弁してほしいなぁ。お姫様だっこをしろとは言わないけど、せめて・・・ねぇ?

 そして女の子は僕をベッドに寝かせると、なにやら怪しげなことをして「これでよし、と。」
 ・・・って、今なにやったの!? 変なことはしてないよね!? 「うふふふふっ」って、その笑い声、怪しすぎるよ! 治療したんだよね? まさか、変なものに改造したりはしてないよね!?

 そして女の子は部屋を出て行ったんだ。
 だーかーらー! いったい僕に何をしたんだよー!


≪人間になっちゃった≫

 いつの間にか眠っていたみたい。というよりも、気を失っていたっていうのかな?
 しばらくして目を覚ました時、僕は驚いた。なんと僕は人間になっていたんだ。少年っていうのかな? でも結婚できるというゲーム設定を考えると、10代後半なのかもしれない。よくは分からないけど、どこにでもいるような少年だと思う。もうちょっと格好いい少年だったら良かったのにな。
 ・・・まてよ。人間ってのは心構えでずいぶん格好良さが変わるものらしいから、ちょっと背伸びしてみようかな。
 一人称が “僕” っていうのは子供っぽいよな。これからは “私” にしよう。口調も変えてみようかな。

 ともかく、本来はモンスターのこの私、いつまでも人間の家にいるわけにはいかない。というか、居心地が悪い。私は逃げ出すように家を飛び出した。

 気がつくと、広場のようなところに来ていた。長い赤毛の女の子がいる。耳がとがっていることを考えると、普通の人間ではないのかもしれない。ちょっと安心した私は、彼女に声をかけてみた。もちろん聞くのは携帯の番号ではなく、「ここはどこ? 私は誰?」だ。

 女の子「・・・・・・。」

 女の子は一言もしゃべらず去って行こうとした。下心を読まれたのだろうか? それとも不審者だと思われたのだろうか?
 その時、私を助けてくれた女の子がやってきた。

 「おはようございます、トゥーナちゃん。」

 トゥーナ「・・・・・・おはよう。」

 どうやらもともと人づきあいが苦手で、無口なだけらしい。私が避けられたわけでも、下心を読まれたわけでもないのだな。良かった、良かった。
 そして助けてくれた女の子は、私に向かって、「どちらさまですか?」
 ・・・良かった。私があのモンスターだということは、ばれていないらしい。ついでに彼女が私を人間に改造したわけでもないらしい。
 しかしどう答えようか。「私はモコモコという羊モンスターかもしれません。」っていうのもなぁ。それに私は、自分のことが思い出せない。モンスターにだって名前はあるんだろうが、それすら思い出せないのだ。
 とりあえず、人間としての名前を考えて名乗ることにしよう。えーっと、えーっと・・・

 私「ヨシヒトって呼んでください。」

 女の子「ヨシヒトさん・・・・・・。うん、ぐっとくるお名前ですね。」

 良かった。とりあえず人間らしい名前を名乗れたようだ。もし「私の名前はヒッツージ・モッコモコーです。」などと名乗ったりしたら、一発でモンスターに認定されていただろう。もしくは病院送りだ。

 その後私は、女の子の頼みでトゥーナさんに連れられ、大樹の家に行くことになった。


≪大樹の家≫

 巨木をくりぬいて作られた大樹の家。中はだだっ広い一部屋になっており、壁際に家具などが置かれていた。
 トゥーナさんと会話を試みるが、あまりにも無口で会話が成り立たない。そんな時、例の女の子が戻ってきた。

 女の子「このお家、どうですか?」

 私「なんだか不思議な感じがします・・・・・・。大樹の中に家があるっていうのは、味があっていいものですね。」

 女の子「よかった〜♪」

 こらっ、機種依存文字らしき記号(音符)を使うんじゃない!

 彼女の名前はシア。この町の町長の孫娘らしい。彼女は祖父に私の居住権を申請してくれ、しかもこの大樹の家に住ませてくれるのだとか。
 ・・・私の希望やら都合やらは完全に無視されているような気もするけれど、普通に考えれば幸運なことであり、彼女はとても親切な女の子なのだろう。少々、どころではなくおせっかいな気もするけれど。

 シア「わたし、ヨシヒトさんがこの町にたどり着いたことに、なにか意味があると思うんです。」

 私「意味・・・・・・ですか。」

 私が人間の町に落ちてきて、人間として生活することに、はたしてどんな意味があるのだろうか。私にはモンスターと人間との交流を生みだす、懸け橋としての役目があるのだろうか。

 シア「案外、花の香りに誘われてきただけなのかもしれませんけどね♪」

 ともかく私は、シアレンスの町の大樹の家で、一人暮らしをすることになった。
 しかし、私がここにきた意味・・・か・・・。


≪人として、モンスターとして≫

 私には人間らしい生き方が分からない。そのことに気付いたからだとは思えないが、彼女はここでの生活の仕方を教えてくれるという。遠慮なく教えてもらおう。

 まずは家の中にある設備の説明だ。とりあえず、最低限必要なものはそろっているようだ。
 余談だが、シアの誕生日は春の月の11日らしい。私が春の月の12日だから、1日違いだ。これは運命なのか? もしそうならば、これはどんな運命なのだろうか? うーむ、のっけから謎が満載だぞ、この生活。

 それから日記帳というものがあった。これはセーブするためのものらしい。調べると「日記を書こうかな」という選択肢が出るのだが、残念ながら「プレイ日記を書こうかな」という選択肢はない。牧場物語の時にも書いたのだが、自動でプレイ日記を書いてくれる機能があれば便利なのに。・・・さすがにそれは無理か。書けてもつまらなければ意味がないしね。

 その後、部屋から下に降りると、そこは農場になっていた。いや、未来の農場に、と言い換えておこう。今はまだ荒れ地だ。石や岩や切り株はあっても、巨大な岩や巨大な切り株はないので、牧場物語よりは親切な設計になっているようだ。なにか物足りないような気もするが。

 シア「ちょっと荒れてますけど・・・・・・、家賃だと思って、キレイにしてくださいね。」

 ちょっと待てい! こんな広い畑、きれいにするのは大変だぞ!

 シア「確かに大変ですけど、これもヨシヒトさんのお仕事ですから♪ 引越祝いです。これをどうぞ。」

 ボロのクワとボロのじょうろをいただいた。

 うわーボロボロだぁ。もしかして、私は強制労働をさせられようとしているのだろうか。
 しかしこの農場、この町で唯一のものらしい。この町の人がどうやって生活していたのか不思議だが、きっと交易によって賄っていたのだろう。食料自給率、きっと10%以下だな。
 ・・・そうか、その自給率の低さが問題になっていて、安い労働力として私を受け入れ、こき使うことにしたんだな。きっとモンスターには人権が無いから、いくらこき使っても問題なしだから。

 判明。シアは私の正体に気付いている。そして彼女の職業はモンスター使いだ。まさに美女と野獣というところか。
 ぐすっ、いいですよ。使われてやろうじゃないですか。そして町の人が想像もしなかったような財を築いて信頼を勝ち取り、モンスターに人権をもたらしてみせようじゃないか!
 見てろよ、シア!

 その時、謎のモンスターが現れ、私たちに襲いかかってきた。
 それシア、モンスター使いの腕の見せ所だぞ!
 ところがシアは働かない。・・・仕方がない。私が追い払って見せようじゃないか。もしかしたら私がモンスターだった時の仲間かもしれないが、それはそれでOKだ。なにせ敵を欺くにはまず味方からっていうからな!
 ・・・って、あれ? この場合、誰が敵で誰が味方なんだ? もしかして、味方を欺くにはまず敵からになってる? それとも前門の虎、後門の狼? ま、まさか四面楚歌?

 ともかく戦闘だ。私はクワを振りかぶってモンスターに襲いかかる。こら、避けるんじゃない! そのせいで畑を3マスも耕してしまったじゃないか! ・・・って、まてよ。これはこれで正しいのか? 何せこのゲームは、戦闘と農作業の両方を楽しめる作品だからな! でもだからといって、戦闘中に農作業してどうするんだ!

 ともかくクワで何度も殴ると、モンスターは消えていった。シアの話によると、農具や武器には『タミタヤ』という魔法がかかっているおかげで、モンスターを倒そうとすると彼らを傷つけることなく本来の世界へと返してあげることができるのだとか。

 ・・・えっと、つまり、私がこのクワで切腹すれば、元の世界に戻れるってことですか?

 ブルブルブル、さすがにそれは無理だ。試してみる勇気がない。
 そんなことを考えていると、今度はモンスターが2体で襲ってきた。私は駆け付けた謎の男性から片手剣をもらい、難なく撃破する。

 謎の男性「君の名ハ?」

 私「ヨシヒトです。武器をありがとうございます。アナタは?」

 男性「オレの名はガジ。見事な腕前だったヨ。」

 私「ありがとうございます。」

 ガジ「ハハハ。礼ならトゥーナにいってくレ。モンスターが出たとトゥーナが呼びにきてくれたんだからネ。」

 そうだったんダ。ありがとう、トゥーナさン。
 ・・・あ、うつったヨ。

 シアによると、最近暴れまわるモンスターの噂を耳にするらしい。物騒な話だ。もっとも一番たちの悪そうなやつが、すでに人間の中に混ざっているけどさ。
 ともかく私の戦闘技術にはシアもビックリだ。そりゃそうだろう。私だってビックリしたからな!

 シア「武器の扱いはうまいみたいですけど、農具の扱いはどうでしょう? わたしが畑のノウハウを伝授しましょうか?」

 もちろん教わることにしたのだが、まず教わったのが、雑草の9段重ねをバランスをとって持つこと。まるでざるそばの出前100人分だ。こんなことができるんだったら、農作業よりも大道芸人になったほうが儲かるんじゃないのか?
 ともかくシアの教えを一通りこなした私は、わずかながらも自信を身につけることができた。

 シア「がんばったご褒美に、この種と少しばかりのおこづかいを差し上げます。」

 うーん、これってやっぱり、飴と鞭だよな? 私って、いいようにこき使われているだけだよな?
 でもいいさ。なんたって、楽しそうだから! これからの生活が、とっても充実していそうだから! なんだかシアのペットって感じもするけれど!

 そうそう、この農場・・・もとい牧場の名前を、私が付けていいことになった。サイト名からとって、よあけ牧場・・・では語呂が悪いな。よし、よあけの牧場だ。
 これから私の、人間もどき生活が始まるのだ。
 もっともその後、少し働いただけで力尽きそうになったから、今日はもう寝るけどね。

 就寝時刻、昼の2時。


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