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≪きまぐれ月記:2006年5月≫

20日 31日

≪5月20日掲載分≫

 今月の初めに、職場が異動になりました。これまでとは違う部署とはいえ、単純作業であるのは同じです。
 ただし以前の職場のような、ムチャな仕事をさせられることはなさそうなので、とりあえずホッとしています。単純作業なら得意ですしね。

上司 「早いなー」「超人やな」「新人とは思えんな」「新人扱いするのはもったいないな」

 というわけで、実作業開始から3日目にして、ベテラン扱いされることになりました。
 ベテラン扱いになると、何かいい事あるのかな〜。わくわく。

上司 「新人は1日350台なんだけど、1000台を目指して頑張ってね。」

 え?

上司 「忙しいから、残業して助けてね。」

 は?

上司 「今度の土曜日、休日出勤をお願いします。」

 ちょっと待てーい! かえって損しているじゃないか!
 それに、土曜日に出勤って・・・
 今週が夜勤で来週が早番だから、生活のリズムを変えるだけで休日が終わっちゃうんだけど。

 というわけで、明日の更新はお休みさせていただきます。(恒例の言い訳)


≪5月31日掲載分≫

 民放の生活情報番組は、デタラメな内容のものがほとんどです。5月28日に放送された “発掘あるある大辞典(フジテレビ系列)” もその1つで、事実(?)が元になってはいるものの、内容は見事にデタラメでした。
 どんな内容だったのかというと・・・
 「DHA(ドコサヘキサエン酸・・・栄養素の一種)を摂取すれば頭が良くなる(実験付き)」
 「DHAを摂取するにはサバがお薦め」
 「サバを使った料理の紹介」
 ・・・というもの。
 違和感を感じることなく見ていた人も多いのでしょうが、だまされてはいけません。

【DHAで頭が良くなる?】
 実際のDHAの影響というのは様々で、解明されていないことも多いようですが、「頭が良くなる」ということに関しては明らかに間違いです。これは「頭の機能を維持するのに必要な物質、と考えてよさそう」というのが正しい表現でしょう。
 番組の実験では、DHAを摂取した後ではテストの結果が良くなっていた(程度がはっきりせず、誤差の可能性も否定できない)のですが、この結果をもとに「頭が良くなる」という結論を出すことはできません。
 でも想像できることだってあります。それは、
 「DHAのおかげで成績が上がった人は、DHAが明らかに不足していた人」
 ということです。

 DHAとは、人間にとって無くてはならない物質の1つであり、不足していれば悪影響が出て当然です。逆に十分に摂取できていれば、余分に摂取したところで目立った変化は無いはずです。するとその実験は、「栄養バランスが偏っていた人をかき集めて行った」というような、信憑性を欠くやり方で行われた可能性があります。
 このような実験は、この手の番組でよく使われるあくどい手法です。「健康とは言いがたい人に普通の生活をさせれば、何かは改善される」という当たり前のことを、特別なことのように見せかけているのにすぎません。

【DHA摂取にはサバがお薦め?】
 DHAが大切な栄養素であることは本当です。人間の場合は、植物性の油などを原料にして体内で作り出すことができますが(注)、それだけでは十分な量にならないため、魚(DHAが豊富)を日常的に食べることが良いとされています(もっともこれはDHAのためというよりも、総合的な栄養バランスのためなんですが)。
 そこで番組では、「魚といっても様々な種類があって良い食べ方をするのは難しいから、総合的に最も優れたサバをお薦めします」というようなことを言っていました。そしてわざわざ、サバ料理の話を長々とやっていました。

 しかし番組でも紹介されていたのですが、サバ以外にも優れた魚はいくらでも存在します。ですから「サバを食べましょう」よりも「魚を日常的に食べましょう」の方が、現実的であり常識的です。
 ではなぜ、番組ではサバを強調したのでしょうか。

 筋の通らない内容になったというのは、筋の通らない理由があったからと考えるのが自然でしょう。例えば「魚を食べましょう」という内容ではインパクトが薄く、番組自体が作りにくいからとか、単に筋の通った考え方ができない人が番組を作ったからとか・・・

【まとめ?】
 DHAは、魚の油以外にはほとんど、あるいは全く含まれていません。ですからDHAのことだけを考えて食事をしていたら、ほぼ確実に栄養バランスが崩れます。あるいは「肉を食べてはいけない」などという、極端な生活をしなければなりません。
 でも全体のバランスを考えて、あるいは深く考えずに様々なものを食べていたら、結果的にDHAだけでなく、各種のビタミン、ミネラル、その他の栄養素が、大きく不足することはありません。極端に不足していなければ、人間というのは健康に生きられるようにできていますので、それを目指すのが現実的だと思います。
 そもそも、普通に食べていれば栄養が偏らない国など、ほとんどありません。それでもちゃんと人が暮らせているということは、それくらい栄養素というのは融通が利くということでもあります(もちろん “理想” の食事と比較すると見劣りするのですが)。

 もちろん例外というのはありまして、普通に食べていれば優れた栄養バランスになる食文化を持った国もあります。でもそんな国は、もしかしたら1つだけかもしれません。
 そのたった1つかもしれない例外、それが日本です。
 日本という国は、それほど恵まれているんです。ですから商業主義のマスコミに騙されて、わざわざ体に悪い食生活に変えたりしないようにしてください。

 ・・・まったく、あんな番組を見たせいで、社員食堂の “サバの味噌煮定食” が食べにくくなったじゃないか。「あの人、マスコミに騙されてサバ食べてるよ」なんて思われていたらどうしよう・・・って危惧していたら、せっかくの料理が不味くなるじゃないか!
 ったく、マスコミはもうちょっとちゃんとした番組を作れってんだよ!

 とか思いながらも、結局は食べたんだけどね。
 港町で生まれ育ったこの私。・・・というのは関係ないけれど、海の幸は大好きです。

【注】DHAを体内で合成できるかどうか。
 番組では、初めはDHAを摂取することの重要性を強調するために(?)「できない」と言っていたのですが、後の方ではDHAの原料が豊富なサバをお薦めする理由付けのために(?)「できる」と言っていました。意図的な言い回しのように感じます。


【おまけ】
 DHAの話によく出てくる、マグロのトロ。DHAが最も豊富ということになっています。でもマグロを凄い魚とか、DHAの王様などとは思わないでください。
 DHAというのは油の一種ですので、油が多い部分に豊富に含まれています。マグロは大きな魚ですから、トロや赤身という風に、場所ごとに分けて食べるのが普通ですが、当然ながら油が多い部分もあれば、少ない部分もあります。そしてトロは、お腹の、油が多い部分のことです。

 ・・・気がつきましたか?
 マグロのトロや赤身というのは加工食品であり、一匹丸ごとの魚とはちょっと違うんです。トロや赤身などを無視して平均した数値でデータが表示される他の魚とは、厳密には異なるんです。
 もちろんマグロは切り身でしか売られませんから、トロと赤身を分けて扱うこと自体は間違っていませんし、結果としてマグロの切り身は(良くも悪くも)栄養成分が偏っているのですが、それはそれ、これはこれです。

 ・・・というのは大して重要な話ではないのですが、マグロ神話のようなものを信じている人がいそうなので、念のために書いてみました。

(記:ヨシヒト@無免許栄養士)


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