≪きまぐれ月記:2005年6月≫
相変わらず工場で単純作業をしている私ですが、仕事が少し変更になりました。いままで2人1組でやっていたことを、1人ずつでするようになったのです。作業効率などを考えるとかえって悪くなることばかりで、これに何の意味があるのか誰にも分からないという謎な変更なんですが、私にとっては好都合。なにせこれまでの相棒君(途中で代わったため2人)は、どちらも喫煙者でしたから。今の勤め先はきっちり分煙になっているのですが、それはあくまでも形だけの話。タバコの臭いは人についてきますからね。あー、息が臭い! 空気が悪い!
・・・というのは今回の日記には関係のない恒例の愚痴なので、トウフの角にでも頭をぶつけて忘れてください。コンニャクの角でもオッケーです。
今の仕事、作業そのものは恵まれていました。本来のノルマは異常に厳しいのですが、私が配属された時期がたまたまヒマだったこともあって、ノルマを意識することなく働けましたから。他の人が時間を計られながら必死に働いているのを横目に、のんびり練習しながら作業していたのです。でも忙しくなってきた時期にこの作業変更。そう遠くない時期に、私も時間に追われながら働くことになりそうです。
というわけで、これまで相棒君がしていた作業もしなければならなくなり、練習しながら忙しく働いているのですが、先日の昼休みの後でリーダーがやってきました。
・・・もしかして、私がなにかヘマをしていたんだろうか。まさかポンと肩を叩かれて、「明日からこなくていいよ」とか言われるんじゃないだろうか・・・。
緊張の一瞬。そしてリーダーが口を開きました。
リーダー「ビビンバ丼、おいしかったー。」
私「あー、それ食べたことないですねー。」
あのー、ご用件は世間話のお相手ですか?
・・・と思ったのもつかの間。話をしながらも作業を続けていた私ですが、リーダーが何かを持っているのに気がつきました。
ま、まさか、私の作業速度を計るためのストップウォッチ? でも普通は時間を計る相手に、世間話なんてしませんよね。きっと他の人の時間を計る間、ヒマだったから話しかけてきたのでしょう。
リーダー「いつもなに食べてますか?」
私「定食かカレーが多いですね。」
私は作業をしているのでリーダーの方を見ることはできないのですが、彼が手に持っているのはやはりストップウォッチのようです。
リーダー「カレーは食い飽きたなー。」
私「定食も飽きがきますよね。」
・・・で、なんで私の作業の切りがいいところでストップウォッチを押すんですか?
などと思いながらも作業を続けます。世間話も続きやがります。
リーダー「大事な話があるんですよ。」
ついにきたー!
リーダー「来週から車を停める場所が変わるんですよ。」
私「あー、そうなんですかー。」
帰る前に終礼でする予定の話を、わざわざ仕事中にするリーダー。かなりヒマみたいです。
私「停め方はこれまで通りでいいんですか?」
リーダー「たぶん、いいと思いますよ。」
などと話しながら、私の作業の切りがいいところでストップウォッチを止めるリーダー。そして紙になにやらメモメモ。
・・・あのー、いまメモしたタイムって・・・だ・れ・の?
「無人島で1人暮らしをすることになりました。でもその無人島へは、何か1つしか持ち込むことができません。あなたなら、その1つに何を選びますか。」
・・・念のために書いておきますが、これは私がそういった状況になったわけではないですよ。注意書きをしておかないと、常連さんが誤解しそうで(そんな自分の人生が)怖いのですが。
これの正体は、私が中学生の時に担任教師から聞いた話です。哲学とかサバイバルとかの問題ではないので、細かいことを考える必要はなく、単に「(自然の豊かさだけが取り得の)無人島で一生ヒマを潰すためにはどうするか」という話です。
さて、あなたなら何を持っていきますか?
電気がないからテレビはダメですよ。ラジオやノートパソコンは電池やバッテリーの問題があります。漫画だって「何か1つ(一冊)」ではすぐに飽きるでしょう。朝から晩までヒマな日が何十年も続くのですから、よほど長く楽しめるものでなければなりません。
さあ、何を選びますか? さあ、あなたなら何を選びますか? さあ! さあ! さあ!
・・・って読者をいじめていても私の得にはならないので、答えを言っちゃいますが、その担任教師が言った模範解答は、広辞苑(有名な辞書ですね)というものでした。確かに、「何か1つ」で最も長く時間をつぶせそうなのは、こういった分厚い辞書かもしれません。枕にもなりますし。辞書というと堅苦しく小難しいというイメージがあるかもしれませんが、実際には広く浅く膨大な知識が詰まった雑学本でもあるからです。
適当にページをめくり、知っている単語を探し、それを読んでみる。するとそれに関する別の言葉を思い出し、その言葉を探してページをめくる。その途中で気になる言葉が目にとまり、探していた言葉をそっちのけでそれを読む・・・。
これは意外に楽しいもので、国語辞典でも英和辞典でも、見ていると1時間や2時間はすぐに経ってしまいます・・・という私は少数派かもしれませんが、辞書だって「避けたくなる先入観」がなければ、おもちゃと大して変わらないんですよね。ちなみに私が使っているのはその広辞苑ですが、こんな分厚くて高い辞書でなくても、同じように楽しめます。
もちろん辞書は実用品ですから、ムリに楽しもうとする必要なんてありません。でも「知りたいことが載っている本」であることに気付いていれば辞書を引くのが苦になりませんし、「勉強しよう!」なんて思わなくても、他の人がゲームや漫画を楽しむのと同じような感覚で、様々な知識を身に付けることが可能になります。
このようなことは、なにも辞書に限ったことではありません。どんなことにも何らかの楽しさはあるもので、勉強だろうと、仕事だろうと、クラブ等の活動だろうと、より良くやろうとすればするほど、その奥深さや楽しさが分かってくるものです。逆に「つまらない」「めんどくさい」「やらされている」というような先入観で初めから全てを否定し、サボったり悪ふざけをしたりする人は少なくありませんが、そういった考え方は「自分が楽しく生きる」という意味でも損をしているとしか思えません。
本当の楽しさとは真面目な生き方の中にあり、それゆえ真面目に生きている人の方が、ずっと人生を楽んでいるのではないでしょうか。逆にいえば、まじめに生きていれば退屈することなんてないのかもしれません。
っていうか、そう思いたいですね!
ちなみに冒頭の問題、当時の私は答えを出せませんでした。考える間もなく模範解答を言われてしまったから、というのもあるかもしれませんが。でも今なら、辞書よりももっといい答えがあることを知っています。その答えとは、友達。
・・・ん? これでは1人暮らしといえないか。
【マジメな後書き】
何かをするときに楽しめるかどうかの違いには、実際には本文とは別の要素も大きく関わってきます。なにせ「していることが実は非効率的」、「していることが実はしてはいけないこと」という場合、それに気付いていると楽しめるわけがないのですから。つまり「知らない人の方が幸せ」という現象が起こりうるわけですね。そして悲しいことに今の世の中は、「知らない人の方が幸せ」ということの方がずっと多いようです。
でも、「知らなかった(気付かなかった)おかげ」の幸せというのは、いずれ大きな不幸をもたらすことが多いのもまた事実。・・・なのですが、ここで問題なのが、不幸の原因が自分の無知であることに気付かない人が多いということ。歴史が繰り返される理由はこれでしょう。だからこそ「楽しい人生を送るために楽しく学ぼう」ということが重要になるわけです。
1人の人間が自分の人生から学べる量というのは微々たるもの。学んだときには手遅れということも珍しくありません。しかし人間には言葉があり、文字があり、今この文章を読んでくれているあなたにはインターネットがあります。サイトに書かれているのが、マジメな話だろうと趣味の話だろうと愚痴だろうと笑い話だろうと、読者にとっては「自分の知らないこと」。そして私がユーモア日記として書いているこの文章だって、読者にとっては1つの情報であり、例え反面教師という形であっても、ここから何かを学ぶことはできるわけです。例え私が意図していないことであっても、そして読者が意識していなかったとしても。ほら、ことわざにもありますよね。「三人寄れば文殊の知恵」って。
・・・え、それを言うなら「人のふり見て我がふり直せ」だろうって? ほっとけ!
私はこの日記で、「もっと学ぼう」ということを何度も書いています。「けっ、勉強なんて」と思う人も多いでしょうが、これはとても大事なことであり、また楽しく生きるためには欠かせないことでもあると思っています。
考えて見てください。もし現在の日本に義務教育がなく、お金持ちでもない限り教育を受けることができなかったとしたら、今のあなたはどうなっているでしょうか。少なくとも、こんな漢字だらけのサイトを見ることなんてできないはずです。漫画やゲームのような分かりやすい娯楽でさえ、字が読めなければ十分に楽しむことはできないでしょう。算数ができなければ、買い物をするのも一苦労でしょう。
このような「学んだこと」の成果である成長は、自覚できる分かりやすいことだけでも数多くあります。そしてその影響と大切さに気付くことが、より良く学ぶことの第一歩ではないかとも思うのです。
先日の日記で「国民年金を滞納して未納通知が届いた」と書いた私ですが、当然ながら反省し、そこから多くのことを学びました。
・・・いえ、学んだはずでした。
今度は軽自動車税未納で、督促状が届きました。
前回は未納通知で、今回は督促状。これはある意味、成長でしょうか。
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