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≪きまぐれ月記:2004年8月≫

  1日 8日 15日 22日 29日  

≪8月1日掲載分≫

 “着やせ” という言葉はあるが、“脱ぎ太り” という言葉は聞いたことがない。人に使う場合も自分に使う場合も、太るという言葉を避けてしまうからだろうか。しかし基準は本当の体重のはずだから、言葉としてはどちらもあっていいと思うのだが。

 ちなみに私は、着やせもするが脱ぎ太りもする。骨が細いからだと思うが、長袖、特にスーツを着たりすると、5kg以上やせて見られる。しかし筋肉質で腕がマッチョなので、半そでTシャツなどを着ると、逆に5kg以上太く見られる。その差は軽く2桁で、2割も違って見える計算だ。

 余談だが、私は若く見られるが、頭(髪)はかなり老けて見られると思う。子供にではあるが、「男? 女?」と聞かれたこともある。
 なので、もし私が指名手配されてしまった時は、ニュースで私の特徴を、「やせ型で太り気味の年齢不明な男性らしき人物」と言うのではないかと思っている。きっと捜査は難航するに違いない。


 少し前の話になるのだが、テレビにスベスベマンジュウガニというカニが出ていた。以前にこの日記で名前を出したこともあるこのカニだが、その時には特に気にもとめていなかった。せいぜい、「マンジュウという名前ですが、毒があるので食べられません」とか言っているのを聞いて、「そういえばそうだったかなー」と思ったくらいだ。

 ところが今日、その話を突然思い出し、ついでに面白いことに気付いてしまった。
 以前の日記では、面白い名前の魚介類として、他にダンゴウオ(魚)とバフンウニ(ウニ)の名前を出したのだが、まあ、なんというか・・・。

 スベスベマンジュウガニ・・・マンジュウなのに、毒があるので食べられない。
 ダンゴウオ・・・ダンゴなのに、小さすぎて食べるところがないので食べられない。
 バフンウニ・・・食べられる

 命名者、出てこーい!


 愛のスパムメール物語、はぁと3。

 いやー、モテる男はつらいねぇ。またラブレターをもらっちゃったよ。それも2通。
 ・・・スパムメールだけどさ。
 以前にこの手のスパムメールなら月に2通までは大歓迎と書いたのだが、本当にそんなペースで届いている。
 でももちろん偶然だ。私としては、「愛のスパムメール物語を読んでヨシヒトさんに興味が湧きました」などというメールを期待しているのだが、現実にはなぜか掲示板を見たという主婦ばかり。専用のソフトを使って勝手に送りつけているのだろうが、いい加減にこのパターンはやめてほしい。

 で、そのメールだが、1通目は自分の年齢を一番に書いていることを除くと、わりと普通の内容だ。しかし2通目は秀逸だ。304文字のメールに8つも間違いを入れるなど、なかなかできることではない。その間違いの中でも特に注目すべきは、一番最後の部分だろう。

 暖かい雰囲気が貴方の文章から伝わりま。

 なぜ “ま” で終わっているのだろう。“伝わりました” と書こうとしたが、ウソをつくのが嫌だったのだろうか。だからといって “伝わりません” などと書くわけにはいかない。その葛藤の末にこうなったのだろうか。

 ・・・と、いつものように妄想していたら、またラブレターが届いた。
 今度は誰だろう。前にくれた人だったら面白いんだけどな。量産型スパム以外のメールなんて滅多に届かないから、差出人の名前、みんな覚えているんだよな。

 ども♪ゆかだよ☆
 久しぶりのメールだから、私の事なんて覚えてないかなぁ。もし覚えてたら、返事くれないかなぁ?

 ゆかさん、初めまして!


 サイト開設から7ヶ月もたって、初めてゲームサイトらしい現象が起こっている。
 今までこのサイトでは、“マイナー” あるいは “旬をすぎた” ゲームばかりを扱っていた。だから(?)アクセスはなかなか増えなかった。しかし7月29日発売のリメイク版ソフト、“ファイナルファンタジーI・IIアドバンス(FFI・II)” の影響で、旬をすぎていたはずのメジャータイトル “FF2” 目当ての方が、どっと押し寄せてきた。発売の数日前から、アクセスの多さは目を疑うほどだ。
 しかし最後に落とし穴が待っていたのは、いつもとまったく同じであった。

日付(曜日) ユニークアクセス数 補足
7/26(月) 30 平日はこのくらいで満足
7/27(火) 47  平日の最多記録更新
7/28(水) 52 最多記録更新
7/29(木) 65 FF1・2発売日
7/30(金) 79 ついに1日100ヒット 
7/31(土) 57 明日はFF1・2を買いに行くぞ! 
8/1(日) 台風直撃


注:ユニークアクセスは、何度アクセスしても1人につき1日1回しかカウントされない数え方。現在のこのサイトの場合、トップページのカウンタ表示よりも2割ほど少なくなる。


≪8月8日掲載分≫

 私の仕事は2交替制。だから同じ設備、同じ道具を2人で使っていることになるのだが、これらの管理は、ほとんど私がやっているようなものだ。
 反対側の人は落とした部品を転がしたまま帰ってくれるので、拾うのは私の仕事。道具をすぐに傷めてそのまま帰ってくれるので、直すのは私の仕事。職場を荒らすのも反対側の仕事で、整頓するのは私の仕事。
 まあ、ここまでは仕方がない部分もあるので諦めているが、今週はオマケが何個もついた。

 道具が紛失! → 必死に探す!
 派手な破損! → 必死に直す!

 しかし一番困ったのは、反対側の人の後始末ではなく、身内の問題だった。それは職場で一番の問題児、いや問題親父が邪魔しに応援にきてくれたこと。その人がどんな人かというと、風林火山の精神で生きている人と言えば分かりやすいと思う。もちろん武田信玄のではなく、イミダスに掲載されたこともある現代版の方。すなわち、「働かざること山のごとく、帰宅するとき風のごとし」とかなんとかいうやつだ。

 とにかく要領は悪いし作業は雑なので、今週の私は、手伝いにきた人を手伝いながら、不良品を出されないように目を光らせて働くという、何か間違っている毎日を送っていた。しかもこの人、年季の入ったへビースモーカーなので、タバコ恐怖症の私は側にいるだけで辛い。普通の喫煙者なら喫煙後15分もすれば臭いは気にならなくなるが、この人は1時間半は持続する。2時間おきに休憩がある職場なので、ずっと臭っているようなものだ。なのでこの人に近付くときに息をはき、離れるときに息を吸うという呼吸法を編み出して対処していたが、肉体労働で呼吸に制限がかかるのはかなり辛い。

 問題発生→新技開発→問題発生→新技開発・・・。

 これではまるで、出来の悪い物語の主人公だ。
 あーあ、この世がゲームの世界のように単純ならなぁ。そのうち財宝が入った宝箱を拾ったり、お姫様を助けるイベントが発生したりするんだが。
 現実の世界では、闇雲に働いていても問題が解決することはない。もちろん「お姫様と結婚して、末長く幸せに暮らしましたとさ」などという結末など、待っているわけがない。

 と、い・う・こ・と・で、女性読者のみなさーん、勇者ヨシヒトのためにお姫様になってみませんか?
 なってもいいという勇気ある方は、メールか掲示板で・・・

 ・・・やっぱりやめておこう。これではまるで、生贄を要求する大魔王みたいだ。


 私の勤め先は肉体労働の会社だ。だからなのか、たまに粉末のスポーツドリンクが支給される。会社としては1回1人あたり400〜500円くらいの出費になるのだろうが、社員の健康意識向上(生産効率にかかわる)を考えるならば、悪くない投資かもしれない。

 で、それに触発されたのか、私の本当の雇い主(派遣会社)も同じ事を始めた。しかしうちの会社がこんな時期にこんなことをすると、ボーナスが無いのをごまかそうとしているとしか思えない。やっぱり信用が一番、日ごろの行いは大切だと思う。

 ところで、もしあなたなら、ボーナスはどちらを選びますか?

 A : 粉末スポーツドリンクを500円分。
 B : 500円玉1枚。


 この日記に何度か書いた、“エディ 攻略” という検索キーワードの正体が分かった。エディというのは、ギルティギアという対戦格闘ゲームに登場するキャラクターのようだ。なんでもその正体は、人に取り付いた魔物だとか。
 人に取り付く魔物といえば・・・やっぱりこのエディ、貧乏神か疫病神の類なのだろうか。
 不吉な名前だ・・・。


 トイレの電気をつけようとしたら、スイッチに変なものがくっついていた。普通の人はどう思うのか分からないが、私が暮らしている寮では、誰かがイタズラでガムをくっつけたと考えるのがもっとも自然だ。

 が、その正体はカナブン(コガネムシ)だった。電気を点けられ安眠を妨げられないように、スイッチにしがみついてしっかりガード!
 うーむ、実に合理的な眠り方だ。私もよく同室の相方さんに眠りを妨害されるから、参考にしてみようか。しかし私の場合は起こされるんじゃなくて、眠らせてもらえないんだよな。交替制勤務の関係で同じ時間に眠るのは土曜と日曜くらいだけど、休日にしっかり休養しても月曜日は睡眠不足。これは辛いし悲しい。

 しかし参考にするといっても、具体的にはどうすればいいんだろう。なにせ相手が人間だから、小細工は通用しないし無茶はできない。
 いくら考えても、いい案が浮かばない。しかし時間をかけて考えているのに何も結論がでなければ、時間を無駄にしたことになる。
 ・・・うーん、なにか、なにか、なにか・・・せめて日記のネタ、いや、オチになるようなことでも・・・オチ、オチ、オチ・・・。

 そんなことを自室のパソコンの前で考えていたら、相方さんが仕事から帰ってきた。

 「ただいま〜。あー疲れた〜。」

 オチ枯れさまー

注:失礼!


≪8月15日掲載分≫

 このところ2週間に1度は食べているのが、寮食の牛丼大盛り生卵付き。以前はレトルトだったのだが、いつの頃からかちゃんと作ってくれるようになったからだ。その理由が、人気があったからなのか、それとも評判が悪かったからなのかは分からないが。

 今日の夕飯もこれを食べることにした。
 ・・・で、なんで普通サイズの丼につぐんだろう。ご飯をついだ時点ではみ出しているんだから、そこに具をのせて凹みを作らず卵を落としたら、もっと下まで落ちていくのは分かりそうなものだがなぁ(合掌!)。

 新しい卵を入れてはもらえたし、その分のお金を私が負担したわけじゃないけれど、食べ物が無駄になるのを見るのはちょっと悲しい。できたての玉子焼きが床に落ちたのを見て、少なからずショックを受けたこともある(貧乏性というな!)。
 今のところ、食べるものに困るほど生活に苦しんでいるわけじゃない。それでも貧乏性物を大切にする心は、大事にしていきたいと思う。生産、製造の仕事を真面目にしている人ならご存知だと思うが、物を作るのはとても大変なことだ。だから物を無駄にするのは、材料はもちろん、多くの人の努力さえも無駄にすることになるのだから。

 お金さえあれば、今の日本で生活に困ることはない。しかし物に金銭的な価値しか見出せないというのは、とても悲しいことだと思う。それは視野が狭いということだし、豊かな発想を妨げる原因にもなるのだから。
 私が育った家は、経済的に恵まれてはいなかった。両親が共働きでやっとの生活だった。今思うとそんな環境で育ったからこそ、今の私の価値観が作られたというのがよく分かる。
 だから恵まれた家庭で育った人は、私と同じような価値観を持つことは難しいだろう。ある意味では不利な価値観を持っているともいえる。でも私の価値観だって、生活の中で身についた、つまり学習によって身に付いたものだ。学習によるものならば、大人になってからでも身に付けられるのではないだろうか。(注)

 経済的には貧しくてもきちんとした家庭で育てば、心は豊かになりやすい。逆に裕福な家庭で育てば、豊かな心を持つためには努力が必要になる。
 相変わらず根拠に乏しい理屈ではあるが、実際にそんな傾向があるような気がしてならない。こう考えると、人間というのは平等にできているのかもしれない。

 そういえば、私が好きな絵日記サイトの管理人さんの中には、自分の貧乏性をネタにしている人が多いような気がする。類は共を呼ぶというが、貧乏性は貧乏性を呼ぶのだろうか。
 ならば貧乏性同盟というのを作ったら人気が出そうな気がするのだが、もうあるんだろうか。

【貧乏性同盟、活動内容】
 * 自分の貧乏性体験を自慢しあう。
 * 寄せられた貧乏性体験談をデータベース化する。
 * データをもとに、貧乏性の人が資源節約にどれだけ貢献しているのかを計算する。
 * 貧乏性精神の素晴らしさを世界中に知らしめ、世界平和に貢献する。

 もうお分かりだろう。貧乏性は世界を救う。世の中を変えられるのは貧乏性精神しかない。
 21世紀は、きっと貧乏性の時代となるだろう。

 さあ、あなたもぜひ貧乏性同盟に!
 今なら抽選で、ポケットティッシュが当たります!

 注:信じないでね。

注:人は思い込むことで、事実ではないことを事実だと確信するようになることがある(自己暗示? 強迫観念?)。これは一般的には良くないこととして扱われるが、私は学習能力の一面ではないかと思っている。そしてこれを生かす事だってできるはずだ。私のタバコ嫌いおよびタバコ恐怖症は恐らくこれが絡んでいるが、せっかくなので直(治)すつもりはない。直してしまえば生活は楽になるだろうが、そうすると禁煙運動への熱意が薄れてしまうだろうから。・・・という考え方をするのも、これが絡んでいるのかも。


 「趣味はなに?」
 こう聞かれると返事に困る。趣味がないわけではないが、「○○です!」と言い切れることがないのだ。

 趣味といえば好きでやること。ならば一番夢中になれることになるのかもしれない。だとすると、私の場合はスポーツということになる。高校の時は軟式テニスに明け暮れたし、他に野球やサッカー、バスケットに陸上、卓球やバドミントンなどなど、ほとんどのスポーツが大好きだ。
 ・・・が、本格的にやったのは軟式テニスくらいだし、今現在やっているのは1つもない。しかもナマケモノなので、きっかけがなければ自分からはやらない。ということで、スポーツは趣味とはいえない。

 趣味といえば、一番無理なくやれること。と考えればゲームになるが、楽しんでやっているのかというと疑問だ。このサイトには大量のゲームレビューを掲載しているが、楽しく遊べたのは極一部でしかない。大抵の場合、もったいないから、あるいは研究のため(笑)にクリアするまでやっているだけで、ゲームで遊ぶこと自体は苦痛に感じていることが多い。これを趣味というのは、ちょっと違うような気がする。

 最近はサイト巡りが一番の楽しみになっている。しかしネット環境が悪いせいであちこち見ることはあまりなく、1日の巡回サイト数は一桁。実際に読んでいる時間は、10分にも満たない日が多いと思う。楽しんでいることは確かだが、やっぱり趣味とはいいがたい。
 サイト運営も楽しいことではあるが、サイト名、あるいはURLを聞かれたらピンチだ。だからこんな質問につながることは言えない。

 他に読書というのもある。しかしこう答えて、「最近はどんな本を読んだの?」と質問の続きがきたら大ピンチだ。うっかり正直に、「国語辞典と食品成分表」などと答えたりしたら、空気が凍りつくのは間違いない。

 と、いろんなことを書いてみたが、実をいうと「一番の趣味はこれじゃないかな?」ということはあるにはある。それは、こんなどうでもいいことをあれこれ考えること。

 Q.「趣味はなに?」
 A.「理屈っぽい妄想です。」

 だから私は、趣味を答えるのが苦手だ。


≪8月22日掲載分≫

 釣りをする夢を見た。
 猫が釣れた。


 個人的な都合で、盆休みは帰省もせず寮に引きこもり。しかし食べるものに困るので、時々コンビニまで買出しに行く。その時は運動不足を防ぐために、自分の足で1キロのジョギングだ。肉体労働のおかげか、思ったよりも走れてちょっと満足。

 それから2日後、再びコンビニへ行く。前回よりも調子よく走れたため、ちょっと飛ばしすぎたのかもしれない。翌日、軽い筋肉痛になった。
 そう、筋肉痛になったのは運動の翌日だ。私もまだまだ若いなぁ。
 と喜んでいたものの、これの原因って、3日前の運動じゃないよね!?


 私の勤め先は通門証が必要になるのだが、これが中途半端な大きさで携帯に不便なので、私はサイフのお札入れに入れている。
 今日も守衛さんの近くまできたとき、いつものように財布を取り出し、通門書をさっと抜き取る。

 ・・・はずが、手にもっていたのは一万円札。
 賄賂じゃなーい!


 相変わらず出会い系スパムメールがよく届く。とはいえ最近は、ひと目で業者からと分かるものばかりで、面白いものにはお目にかかれない。わずかに1つ、データの入力ミスをしている広告メールがあったくらいだ。

【会員数】
男性 1546758人
女性 1031172人
合計 257793人

 こんなんじゃあ、この日記のネタにもなりゃしない(したけど)。
 ええい、スパムメール作家よ、もっと頑張らないと面白くないぞ!
 と思っていたら苦情がきた。

 私の会社は連休が無いんだぁ
 今日やっと休みもらえたけど
 みんなどっか行ってだ〜れも居ないし
 お盆の休みはどこか行きました?

  美弥子

 この美弥子さん、盆休み返上で働かされていたらしい。この業界も大変だなぁ〜。
 ということで、彼女のために協力してあげませんか?
 みんながこの手のメールを無視すれば、そのうち会社が潰れて、彼女は毎日が盆休みだ!


≪8月29日掲載分≫

 またまた変なキーワードで検索してきた人がいた。それもなんと、「私の会社は連休がないんだぁ」という長ったらしいもので7人。このキーワードは、前回の日記でネタにしたスパムメールの一部なのだが、以前にも別のスパムメールの一部で検索してきた人がいた。偶然とは思えないことが何度も起こる。これが偶然であるわけがない。

 そこで調べてみたところ、このキーワードで検索すると、なんと247件もヒットすることが分かった。これってなにごと!?
 と思ったのだが、理由はすぐに分かった。私と同じように、スパムメールをネタにして日記を書いている人が大勢いたというだけだった。

 しかし検索した理由はなんだろう。本物のメールかスパムか分からなかったから、とりあえず検索してみたのだろうか。それともスパム日記巡りが好きな人がいるのだろうか。

 届いたスパムメールを大切に保存しておいて、今年の秋の夜長はスパム日記巡り。こんな優雅な過ごし方はいかがでしょうか。


 私が住んでいるのは寮。かなり大きなところだから、出勤時には多くの人と出会う。
 今日、寮の廊下で出会った人は、奇妙な動きをしてみせた。突然回れ右して、引き返していったのだ。
 その理由に気付いた人はどれだけいただろう。しかし私はすぐにピンときた。こっそり彼の足元を見る。案の定、スリッパを履いていた。

 そりゃあ分かるさ。私は元、常習者だからね!


 たまには真面目な話でも。

 タバコ恐怖症を抱えて暮らしていると、「もうダメかもしれない」と思うことがある。それが原因で鬱病になったときには、「もう生きていけないんじゃないか」「死んでしまった方が楽になるんじゃないか」「このまま眠ったら、もう2度と目を覚まさないんじゃないか」と何度も考えた。それも10回や20回ではない。
 実際には鬱病は、そこまで酷い病気ではない。直接命にかかわることはないし、辛さそのものも普通の発熱と同等か、ややマシなくらいだろう。それなのにこんなことを本気で考えてしまうところに、鬱病の真の怖さがある。そして本当に死を選んでしまう人もいる。

 現在の私は、鬱病自体は完全に治っている。しかしタバコ恐怖症ゆえに、人と同じように生きることは難しい。それでも働かなければならないから無理をするようになり、時として激しく落ち込むこともある。
 先日も仕事中に、「もうダメかもしれない」と本気で考えた。生きる、死ぬといった大仰なことではないが、「もう働けない」「会社を辞めたら、この先どうなるんだろう」と。
 このようなことを考え始めると、落ち込みが加速して悪循環を引き起こす。そしていつかは鬱病などにつながるだろう。今のうちに、迷いを断ち切らなければならない。せめて空元気でもだして、気持ちを切り替えなければ・・・。

 そう思ったとき、私は吹き出しそうになった。高校時代のことを思い出して・・・

・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・

 私は高校生のとき、軟式テニス部に所属していた。
 先輩が引退し、私の学年が最上級になったとき、当然ながら新しいキャプテンが選ばれることになる。しかし私たちの年は、おそらく類を見ないであろう決められ方をした。
 キャプテンに最も相応しいと思われる人はいた。テニスがうまく、お調子者で誰からも好かれ、勉強もまずまず。しかし問題なのがサボリ癖。たいした理由もないのに練習を休むことは珍しくなかった。
 監督はきっと悩んでいたのだろう。だからこそこんな決断を下したのだろう。監督は部員全員の前で、その人にこう言った。

 「おい、キャプテンになるか退部するか、どっちか選べ。」

 こうして彼は、私たちのキャプテンになった。
 しかし私たちの部は、普段は陽気でも練習は黙々とする人が多く、はたから見ると活気が感じられなかったのだろう。ある日、練習後のミーティングで、監督に空元気でもいいから出せと言われた。正論だ。スポーツは修行ではない。好きでやっていることだから、楽しくやった方がいいに決まっている。そして楽しいと感じられるからこそ、無理なく真剣になることができるのだから。
 そして監督の言葉の後は、キャプテンの言葉で解散となるはずだった。しかしお調子者のキャプテンは、意図的かどうかは分からないが、彼らしいメイ台詞をはいた。

 「監督に言われたとおり、空元気を出して頑張りましょう!」

・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・

 記憶の中のこの言葉で、頭の中を渦巻いていた悩みは吹き飛んだ。
 笑えるうちは、まだ頑張れる。そう、まだまだやれる。ここで挫折するわけにはいかない。

 笑えるって素晴らしい。
 最近では笑いの健康効果が注目されており、「健康のためにも笑いましょう」なんて言う人もいる。でも笑うのに理由なんていらない。笑うことは手段じゃない。目的だ。笑いたいから、楽しく暮らしたいから、そのために何かをするのだ。仕事だってそうだ。他の人が楽しく生きるのに必要なことをして、その見返りに自分が楽しく生きるためのお金を貰っているのだ。

 「あなたは何のために生きてるの?」
 笑いたいから生きている。みんなで笑いたいから、これからも生きていく。
 単純なことじゃないか。


 朝食を食べていてふと思った。今の私は寮で暮らしているというよりも、秘密基地で暮らしているような気がする。
 六畳一間の2人部屋だが、同室の相方さんは見事としか言いようがないほど荷物を置いているため、はっきりいって倉庫としか思えない。私の方は一見すっきりしているが、棚や押入れの中には少なくとも5食分、買出し直後はその数倍以上の食料を置いている。常に非常事態に備えているようなものだ。秘密基地を思い浮かべたのは、無理もないことだと思う。

 私は子供の頃、何度か秘密基地を作って遊んだことがあるが、あれはとても楽しいものだ。残念ながらそこで寝泊りしたことはないが、読者の中にはそんな経験がある人もいるかもしれない。
 でもまさか社会人になってから、秘密基地暮らしをすることになるとはなぁ。

 さて、非常用食料を食べてエネルギーを補給し、栄養ドリンクを飲んで準備完了。
 私は今日も、秘密基地から出勤します!


 な、な、な、なんと、相方さんが個室に引っ越すことになった。いや、これを書いている時点で、すでに引越しは完了している。天井まで積み上げられていた相方さんの荷物がなくなり、今や普通の部屋になっている。以前は実質二畳半の生活だったから、その違いには驚くほどだ。
 うひゃー、六畳の部屋って、こんなに広かったのか!


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