≪世界が見えた時≫
私たちがフィンに逃げ帰ったとき、マリアがこんなことを言っていた。
マリア「竜騎士が・・・私たちを逃がすために・・・。ヨーゼフ、ミンウ、シド、リチャード・・・。みんな死んでしまった・・・。もうたくさんよ!!」
リチャードの死は今のところ確認されていないのだが、マリアはそう思っているらしい。・・・っていうか、そう思いたいんだろうか。酷い人だ。
というのは冗談だが、前回の日記で私がリチャードの死のことをさらっと書き流していたのは、私が彼の死を受け入れていなかったからだ。より正確に言うならば、あれが現実に起こったことだと信じられなかったのだ。
ヨーゼフ、ミンウ、リチャード。この3人は、みな反乱軍のために命を捨てた。立派な行為だとは思うが、みんな自分の命を軽く考えすぎではないのか。特にリチャード。あの状況で、彼だけが残る意味があったのか。「みんなで逃げる」「みんなで戦う」のどちらかで良かったのではないのか。彼が残ったのは、飛竜が4人乗りだからなどと、頭の固いことを考えていたとも思えない。
なぜリチャードが残った!? なぜリチャードが死ななければならなかった!?
ヨーゼフはなぜ、見え透いた、それも軽石の罠にかかって死んだ!? サラマンドだからといって、あれはあんまりではないか!?
ミンウはなぜ、封印の鍵の代わりとなって死んだ!? そもそもなぜ、封印の鍵が存在しなかったのだ!?
ありえない状況での理不尽な死。その時私には、この世界の真理が見えた。
この世界は夢なのだと、私はずっと信じてきた。それでも現実世界に戻ることなくこの世界にとどまり続けたのは、この世界が好きだからだ。この世界の住人が好きだからだ。この世界で暮らしたいからだ。今の私が暮らしているこの世界が、例え夢でも幻でもプレイ日記の中だとしても、私たちはそこで生きているのだ。手を取り合って生きようとしているのだ。
それなのに、それを邪魔しようとしている奴がいるのではないだろうか。
もしそんな奴がいるとすれば、この世界の創造主に他ならない。そしてその創造主は、自分が作った世界の住人がどうなろうと知ったことではなく、自分が気に入るように話を進めることしか考えていない、愚かで邪悪な奴なのではないだろうか。皇帝さえも、そいつの手ごまにすぎないのではないだろうか。ヨーゼフも、ミンウも、リチャードも、他の反乱軍の人々も、そして名も無き帝国兵も、創造主がまともな奴ならば死ななくて済んだのではないだろうか。
もしそうならば・・・私たちが倒すべきは、皇帝という目に見える災厄ではない。そして創造主に歯向かえるのは、このことに気づいている、そしてこの世界で唯一創造主に作られた命ではない、この私だけなのではないだろうか。
私がこの世界にやってきた理由、そしてこれからすべきこと、今それが分かったような気がする。
≪ジェイド≫
創造主を倒す。
とはいえ、その方法はまだ見つかっていない。それに皇帝を放っておくわけにもいかない。私たちは皇帝が新たな居城とするために魔界から呼び寄せた魔王の城、パンデモニウムへ向かうことになった。しかしパンデモニウムは幻の城、通常の手段では入れない。
しかしカシュオーンに伝わる昔話にヒントがあった。入った者は地獄へ行くという、呪いの泉。ジェイドと呼ばれる地方にあるその泉こそが、パンデモニウムの入り口になっていたのだ。
泉の中には洞窟があった。その中をパンデモニウム目指して進んでゆく私たち。敵が強いため少し訓練をつむことにしたが、そのおかげでなんとかなりそうだ。もちろん途中で宝箱を探すことは忘れない。むしろこっちがメインという説もある。そして何個目かの宝箱を開けてみたら、最強の短剣である猫の爪と一緒にドラゴンが入っていた。
ドラゴンと猫の爪の組み合わせって・・・。
ドラゴンも飛竜と同じく猫みたいに、所かまわず爪を砥ぐ癖があるんですか。ああ、そうですか。
≪君の名は・・・≫
宝箱に入っていた巨大なブルードラゴンを倒し、私たちはなおも進み続ける。そして見つけた宝箱を開けたら、こんどは最強の斧ルーンアックスと一緒に、キングベヒーモスが入っていた。
キングベヒーモス。名前や姿から想像してみると、闘技場でヒルダ王女をかけて戦った巨獣ベヒーモスの王だろう。
しかし私は知っている。動物の世界では、キングが付いたからといって大したことは無いことを。
例えばキングペンギンはエンペラーペンギンよりも小さいし、キングスネークは毒が無いどころかペットにしている人もいる。キングサーモンにいたっては、日本語にするとマスノスケだ。ならばキングベヒーモスが日本の動物園にいたら、きっと名前はウシノスケ、もしくはカバノスケ、あるいはサイノスケになるに違いない。もちろん希望はウシノスケだ。
「ウシノスケ、勝負だ! ステーキを食わせろー!」
ウシノスケに負けたら末代までの恥になる。もちろん勝ったのは私たちだ。
そして倒した後には・・・ちっ、激レアアイテム「キングベヒーモスの肉(サーロイン)」は入手できずか。
その後も私たちはモンスターを蹴散らし、宝箱をあさりながらジェイドの洞窟を進み続け、やがて不思議な魔法陣にたどり着いた。魔王の宮殿パンデモニウムへと繋がる魔法陣に。
こうして私たちは、ついにパンデモニウムに侵入することに成功したのだった。
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