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≪パンデモニウム四天王≫

 パンデモニウムの敵は非常に強い。・・・はずなのだが、私たちが強すぎるせいで緊張感は全く無い。鼻歌を歌いながら雑魚を蹴散らし、宝箱に入っていたボスっぽいティアマット(竜の女神)やベルゼブル(ハエの悪魔)もついでにやっつける。そして次に出てきたのは・・・っと、暴言ボーゲンのゾンビじゃないか!
 うわー、ボーゲンってば以前に倒されたとき、「先に地獄で待ってるぜ!」って言ってたけれど、本当に地獄で待ってたよ! でもゾンビになっているから、しゃべれないみたいだよ!
 あの暴言が聞けないのは残念だが、襲ってきたからやっつけよう。今度は天国で待ってろよ!

 で、1ターンで戦闘終了。ボーゲンの奴、相変わらず弱すぎだ。

 そして次は、アスタロート(悪魔)。・・・を倒すと、後にはリボンが残されていた。見た目は可愛らしいリボンだが、実は強力な魔法の品であり、総合的には最強の頭部防具だ。少し前にザコとの戦闘で1つ入手していたのでマリアに装備させていたのだが、2つ目が手に入ったということは・・・
 さてこのリボン、いったい誰に装備させようか?

 答え:レオンハルト


≪秘策≫

 さあ、ついにラスボスだ。魔宮殿の最奥で待っていたのは、もちろんあの皇帝だ。

 皇帝「ついに、ここまでやってきたな! だが、私を倒すことはできん! 死ね!」

 四天王っぽい中ボスは大したことなかったが、こいつはどうだろうか。以前の皇帝はザコレベルの弱さだったから、今度も大した事はないのかもしれない。
 だが普通に倒しても意味はない。この世界最凶の存在はこいつではなく、この世界の創造主なのだから。そして姿を見せない創造主に痛手を負わせるためには・・・

 この時のために、私は計画を練っていた。それが最武器ブラッドソードの二刀流。激重ゆえに命中率最悪のこの武器を使いこなすために、防具は力増強効果のある物ばかりを身につけている。それゆえ命中率は79%。ブラッドソードとしてはありえない数字になっている。
 しかし、これでもまだ終わりではない。

 私は二振りの魔剣を手にし、皇帝に向かって突撃する。走り出すタイミングは、わざと少し遅らせている。仲間の援護を受けるためだ。そしてガイがマジックアイテムに秘められた力を解き放ち、私に攻撃回数増加の魔法、ヘイストをかけてくれる。それに続いてマリアのヘイストが・・・・・・・・・こない!? えーい、マリアめ、一体何をしているんだ。くそっ、こんな時に結束力のなさが出やがったか! なにせこれまでずっと、最大の敵は身内だったからな! しかたがない、このまま皇帝に攻撃だ!

 そして右手の魔剣で12回ヒット! 左手の魔剣で5回ヒット!
 ブラッドソードは1回ヒットにつき、敵の生命力を最大値の6.25%奪いとる。つまりこれで106.25%。かろうじてラスボス瞬殺に成功だ。

 そう、私が狙っていたのはこれだったのだ。
 創造主が作りだした最狂の武器で、創造主が生み出した最強の存在を瞬殺するという、これ以上ないほどつまらない展開。これが最凶の存在である創造主に対して私ができた、唯一の抵抗だったのだ。


≪そして現実へ・・・≫

 皇帝を倒してフィン城に凱旋した私たち。誰もが私たちに祝福とねぎらいの言葉をかけてくれる。それはブラックリストのNo.1とNo.2である、ゴードン王子とヒルダ王女も例外ではない。これぞ大団円と言うものだろう。
 た・だ・し、ラストバトルの最中でさえもケンカ寸前だった、パーティ内だけは別だ。空気の読めないマリアが、「また4人で暮らしましょう!」なんて言っているが、私がこの世界に来る前のような、平凡だけど幸せな毎日なんて、もう戻ってくることはないだろう。なにしろ初めから最後まで、仲間内でケンカばかりしていたのだから。

 レオンハルト「俺たちは、いろんな事を知りすぎた・・・。もう昔には、帰れない・・・。」

 そして一人で旅に出ようとするレオンハルト。その気持ちは私にもよく分かる。
 そう、家族だと思っていた仲間たちのハラグロさをあれだけ知れば、もう昔のような生活に戻れるわけがないのだ。・・・っていうかレオンハルトの場合、知りすぎたからじゃなくて、知られすぎたからじゃないのか?

 マリア「兄さん・・・なぜ? 待って!! フリオニール、兄さんを止めて!!」

 ムリ! だって一番の悪者は、きっと私なんだもの!

 現実から逃げるためにこの世界に来たつもりだったのだが、この世界にも居づらくなってきたようだ。さて、そろそろ現実へ逃げようか。体を貸してくれていたフリオニールさん、後のことは任せたぞ!

 それでは皆さん、さようなら〜


≪拝啓、レオンハルト様≫

 ・・・なんて書き出し、そっちの世界では使わないのかな?
 逃げ出すようにそっちの世界からいなくなった私だけれど、私は今、自分の世界でそれなりに楽しく暮らしているよ。
 モンスターのいない世界が羨ましいかい? でも残念ながら、私の世界にも魔物はいるんだ。
 だから私は、こっちの世界でも戦っている。敵はとてつもない化け物だ。なにせブラッドソードも、極限まで高めたアルテマさえも、奴には全く通用しないんだからな。
 そいつは人間が途方もない時間をかけて生み出してきた魔物。常識のゆがみって奴だ。そいつがどれほど厄介なのかは、そっちの世界にもいるんだから分かるだろう? なにせ創造主自身が、そいつに取りつかれていたんだからな。
 そういえば君が旅に出たのも、そして私がそっちの世界から逃げ出したのも、そいつのせいだったのかもしれないな。だって今考えると、あの時の私たちの行動が、正しかったとは思えないんだから。

 私たちはまだまだ子供なんだと思う。だから世の中のことを少し知っただけで大人になったと思い込み、それに満足して、あるいは絶望して、学ぶことを止めてしまう。そしてつまらない結論を出して、望んでもいない生き方を選んでしまう。
 でも世の中って、そんなに簡単に知ることができるものなんだろうか。私たちが当たり前だと思っていることって、本当に正しいことなんだろうか。
 君は知りすぎたと言ったけれど、本当はもっともっと知る必要があるんじゃないだろうか。真実を知り、それを生かせるようになることこそが、大人になるって事じゃないだろうか。

 でも本当の大人になるのは簡単なことじゃない。なにせ子供でも分かるような社会の矛盾を、大人たちは必死になって正されないようにしているんだからな。だから子供たちは、過ちさえも正当化して受け入れるのが大人なんだと誤解してしまう。そして理屈を軽視してヘリクツばかりを身につけ、常識を身につけないままで大きくなる。
 でも理屈っていうのは、正解を見つけるための手段なんだ。常識って言うのは、あらゆる判断の基準になることなんだ。だから理屈を正しく扱えない常識のゆがみこそが、人間にとって最も大きな問題だと言えるんじゃないだろうか。
 つまりこの世で最大の災厄とは、私たちの心の中に潜んでいると言えるんだ。だから自分と戦い、社会と戦わなければ、本当の平和は決してやってこないんだ。
 もちろんそんな生き方は大変だ。過ちを受け入れて生きていく方がずっと楽なんだろう。だってほとんどの人が、そんな生き方をしているんだからな。
 それでもさ、平和を脅かす強大な存在があることを知ってしまったら、放っておくわけにはいかないよな。

 勇者や英雄とはかけ離れていた私だけれど、そっちの世界で暮らしたことは無駄じゃない。いや、無駄にするわけにはいかない。だからそっちの世界で一番心に残ったことを、私は私の世界で活かしていこうと思っているんだ。
 私は自分の心に、のばらの紋章をかかげて生きていくよ。今はどんなに厳しくとも、いつか必ず花ひらく。そんな未来を信じるために。



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