≪憧れの形≫
飛空船に乗ってレオンハルトに会いに行く私たち。目的? そんなものは分からない。分からないからRPGらしく、とりあえずボコボコにしてみる・・・ってのは、やっぱりまずいだろうか。
レオンハルトに会って、何を言えばいいのだろう。今の私に彼の行動をとがめる資格があるのだろうか。正しい道に導くことができるのだろうか。
彼がなぜ帝国兵となったのか、そしてなぜ皇帝となったのかは分からない。おそらくは何か理由があったのだろう。ならばもし、彼と私の立場が逆だったならば・・・私は彼と違う選択をすることができただろうか。
そもそも私は今、私が望んだ私になっているのだろうか。
私はミンウに憧れた。彼の未来をも見通す洞察力に憧れた。その時に私は思った。彼のような賢い人になりたいと。
私はヨーゼフに憧れた。彼の、自分を犠牲にしてでも他人を助けようとする生き様に憧れた。その時に私は思った。彼女のような、真の男になりたいと。
それ以外にも、いくつもの憧れを抱き、偉人達のようになりたいと、せめて少しでも近付きたいと、何度思ってきたことだろう。
だが今の私はどうだ。戦闘に関する技能は上がった。魔法だってうまくなった。しかし人としては? まったくというほど成長していないのではないだろうか。
というわけで今の私は、ヨーゼフやミンウの生き方を真似してみようと、彼らと同じ格好をしている。しかし1人ずつ真似するのは面倒なので、武器はヨーゼフと同じ素手であり、身にはミンウっぽい白のローブをまとっている。いわゆる形から入るというやつだ。
・・・しかしそんな私の姿が、コスプレに失敗した変なニーチャンにしか見えないのはなぜだろう。念のために書いておくが、現実世界の私が髪の毛ピンチなのは、決してヨーゼフのコスプレではないし、頭に装備しているのは “かつら” でもない。
おっと。そんなことを考えている間に、パラメキア城に着いたようだ。よし、この格好のままで突入しよう。
≪パラメキア精鋭部隊≫
見た目はアレでも、中身もアレでも、戦闘だけはやたらと強い私たち。強いはずのモンスターを、不真面目な戦い方で蹴散らしながら、レオンハルトがいるであろう玉座を目指して突き進む。
その途中でゴートスと出会った。ゴートスと言えばフィンを支配していた無能司令官だが、何体も出てくることを考えると、どうやら固有名詞ではなく、種族の名前だったようだ。
が、そいつが突然逃げ出した。
・・・もしかして、私の格好がアレなせいですか!?
関わらないほうが身のためだと思われたんですか!?
言っておくが、私は真面目だ!(注:さらに性質が悪いです)
さて、気を取り直して次の戦闘だ。
出会ったのはなんと黒騎士。私たちが故郷の村から逃げ出そうとしたときに、圧倒的な強さでボコボコにしてくれた奴だ。そういえばあの時、黒騎士の攻撃で、レオンハルトは28回死ねるダメージを受けたはず。それが今では、レオンハルトの方が偉くなっているとは・・・
・・・あやしい。
あれほど軟弱だったレオンハルトが、短期間でそれほどまでの力を手に入れるなんて、どう考えてもありえない。すると今のレオンハルトは、黒幕に操られている傀儡の皇帝だと考えるべきだろう。
この時、彼と出会ってどうするかの答えが出た。すなわち、ショック療法で彼を助けることだ。
待ってろよレオンハルト、すぐにボッコボコにして助けてやるからな! もちろんボコボコにしたいわけじゃないぞ! 仕方なくするんだぞ!
そう思いながら目の前の黒騎士は、とりあえずボコボコにしておいた。
いやー、私ってば強くなったなー。なにせあの時でさえ私は、黒騎士の攻撃で21回しか死ななかったからなー。ふっふっふ、レオンハルトとは実力が違うのだよ、実力がね。
≪皇帝レオンハルト≫
そして玉座の前にたどり着いた私たち。そこにいるのはもちろん、ダークナイトこと新皇帝レオンハルトだ。
レオンハルト「やはりお前が来たのか、フリオニール! 俺に・・・勝てるつもりか?」
私「うわあ、れおんはるとが操られている。しょっくを与えて助けなければ。」(棒読み)
マリア「やめて! 二人とも!! 兄さん、なぜ戦わなければならないの?」
レオンハルト「この世を支配するものは、なにか? それは力だ!! 俺は皇帝になったのだ! その力、手放しはしない!! さあ、そこをどけ!」
私「そうだそうだ。マリア、そこをどけ! そして力いっぱいぶん殴らせろ!」(本音)
しかし私の願いはかなわなかった。大地震とともに黒幕が現れたからだ。
・・・って、あれ?
やっぱりレオンハルトは操られているんですか? そしてボコボコにすれば治っちゃたりするわけですか?
という私の予想は、残念ながら外れていたことが、彼らの口から明かされる。ちっ。
≪皇帝復活≫
現れた黒幕とは、地獄で究極のパワーを身につけてよみがえった旧皇帝だった。なんでそんなことが分かるのかと言うと、本人がわざわざ説明してくれたからだ。
皇帝「レオンハルト、久しぶりだな。お前が皇帝とは、片腹痛いわ。世界に皇帝は私一人だ!」
レオンハルト「この化け物め! 帝国は、俺のものだ! お前などに渡さんぞ。」
皇帝「帝国? フッ、そんな物に、もう用は無い。命ある物を皆殺しにし、世界を破壊し尽くしてくれる!」
えーと、皇帝さん、言ってることが矛盾していませんか? 具体的には「世界に皇帝は私一人だ!」「帝国? フッ、そんな物に、もう用は無い。」って部分なんだけど。もっと分かりやすく言うと、帝国のトップじゃないと皇帝と呼ばれないんだけどさ! もしかして、脳みそ腐っていませんか?
皇帝「まずはお前たちを血祭りにあげてやる!」
うわー! ツッコミを入れたら皇帝がキレた! やばい、みんな逃げるぞ!
ところが、こんな時に集団行動を乱す奴がいた。
リチャード「こい、化け物め。私が相手だ!」
リチャードは飛竜に私たちを連れて逃げるよう命令すると、皇帝に飛びかっていった。私たちを助けるためだろう。・・・自分の命と引き換えに。
≪軍事裁判≫
フィン城に戻った私たち。レオンハルトも連れてきたせいで王女が驚いているが、彼女は冷静に判断しようとしているようだ。
レオンハルト「皇帝を倒さない限り、もっと多くのものが死ぬ!」
ふっふっふ、そんなことを言って話をそらそうとしても、君がダークナイトだったことは誰も忘れてはくれないのだよ。
さあこれから、レオンハルトを軍事裁判にかけるぞ!
私「王女! 彼を、仲間に(ボコボコに)させてください。」
ヒルダ「ダークナイトのことは、あなたに任せましょう。」
よっしゃ、王女の許可が出た!
というわけでレオンハルトは、マリアの説得を受け入れて降伏し、私たちのパーティに加入することになるまで、みんなから袋叩きにされるのであった。
めでたし、めでたし?
≪プレイ日記、番外編≫
注:この文章は、見出し通りの番外編です。FF2やプレイ日記の内容には、直接関係ありません。本来は
“きまぐれ月記” に掲載すべきお話なんですが、ゲームを知っている人向けに書いたほうがすっきりした文章になるため、ここに掲載することにしました。
お忘れの方がほとんどだと思いますが、このプレイ日記は帰省中に行った、わずか5日程度の突貫プレイが元になっています。その突貫プレイは順調に進み、1日の余力を残してレオンハルトの前にたどり着くところまできていました。
私「ここまでくれば、明日には確実にクリアできるだろう。もうすぐ夜の10時だから、レオンハルトを仲間にしたら、セーブして寝ることにしよう。」
パラメキア城に突入してから2時間の連続プレイ。その日はそこで止めようと思っていたのです。しかしその時に聞こえてきたのは、階段をどたどたと駆け上がる、2つの小さな足音でした。
姪A「にーちゃん、あそぼー!」
姪B「あそぼー!」
そして私の部屋に乱入してきたチビ2人。
こらー! 良い子は寝る時間だぞ!
姪A「あー、兄ちゃんゲームしてる! それなに? なんでメモしてるの?」
プレイ日記を書くのに必要だから・・・なんて説明を、小さな姪に分かるようにするなんて、面倒くさくてできません。
えーと、その、あの・・・って、こら姪B! ケーブルをまたぐんじゃなーい! 本体の周りを走り回るんじゃなーい! まだセーブしてないんだから、ここで電源が落ちたら2時間前に戻るんだぞ!
姪の質問を適当にごまかしながら、私はプレイ日記のため必死にメモを取り続けました。手と目はゲームとメモのために、頭は小悪魔たちの質問をかわすために、まさにフル回転状態です。
私「あー、やっとイベントが終わったー! ・・・っと思ったら、自動でフィン城に移動してまたイベントが始まったー!」
姪A「わーい、わーい!(どたばた)」
姪B「にーちゃん、あそぼー! あそぼー!(だきつき!)」
だーかーらー! 本体をまたぐんじゃなーい! タックルするんじゃなーい!
パラメキア城にはボスがいない。そう思っていた私が甘かった。ボスは現実世界にいたのです。なにせ負けるとセーブしたところからやり直しになるのは、モンスターもチビちゃんズも同じなのですから。
・・・いえ、ゲーム内のボスの方がずっとマシです。だって普通のボスならば、やっつけてしまえばいいだけですから。でもこの小悪魔どもときたら・・・やっつけるわけにはいかんでしょ? だって小悪魔2人のバックには、母親である魔王がいるんですよ!
・・・無理です。
「ゲームの邪魔になるから」という理由でやっつけたりしたら、私に未来はありません。
姪A「ゲームやめて、はやくあそぼー!」
姪B「あそぼー!」
私「だーかーらー、もうちょっと待ってくれー!」
その時です。
魔王「こらー! 2人とも風呂いくよー!」
姪A&B「はーい。(どたどた)」
た、助かった・・・。
無神論者の私ですが、思わず魔王を崇拝しそうになりました。
これでお分かりいただけたと思います。このプレイ日記で戦っているのは、登場人物だけではないということを。最も過酷な戦いを強いられているのは、著者であるこの私であるということを。
でも私は負けません。何があっても戦いに勝ち抜き、このプレイ日記を完成させてみせます。例えどんな攻撃を受けようとも!
大魔王「ヨシヒトの子供も、早く見たいんだけどねぇ。」
クリティカルヒットはいらん!
小悪魔「にーちゃんて、なんで結婚せんの?」
しないんじゃなくて、できないの!
大魔王「髪の毛があるうちに、早く相手を見つけんとなぁ。」
ハゲ増しの言葉なんていらないよ。
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