≪友との対立≫
皇帝が倒れたことで滅びたはずの帝国。しかし戦争は、まだ終わってはいなかった。
ダークナイトことレオンハルト、皇帝に即位。
物語の初めに一瞬だけ登場し、以後は行方不明となっていたレオンハルト。
私ことフリオニールの幼馴染にして、マリアの兄であるレオンハルト。
予想していた通り、彼が帝国のNo.2、ダークナイトの正体だったのだ。
この報告を聞き、にぎやかだったパーティの場が、一瞬にして静まりかえる。
彼らが動揺するのも無理はない。私やマリアは反乱軍の中心的存在であり、有名人であり、注目される存在なのだから。レオンハルトが私たちと親しい関係であったことは、きっと誰もが知っていたことだろう。
・・・いや、みんな知っていると思っていたのだが・・・。
兵士「レオンハルト? いったい、何者だ・・」
これが現実だったらしい。ついでにパーティが静まり返った理由はこれらしい。
・・・ダメだ。これでは話が盛り上がらない。
そこで仕方なく、これが友との対立という悲劇であることを、自ら説明してまわる私たち。どうやら事情は理解してもらえたようだ。
しかしレオンハルトもアホな奴だ。地位とか名誉とかがほしければ皇帝に即位なんてせず、最後までひっそりと暮らしていればよかったのに。意味ありげに姿をくらましていながら再登場しなかったら、間違いなくRPGの歴史に名を残していたはずなのに!
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永世王者 : レオンハルト
愚かさゆえに欲望に負け、愚かな戦争を繰り返そうとするレオンハルト。しかし一応は幼馴染である以上、私が責任を持って修正してやるべきだろう。
ゴードン「レオンハルトはマリアのお兄さんだろ。戦うわけにはいかないだろう。」
私「いや。おれたちが自分で決着をつけるよ。」
そう。マリアはともかく、私はやる気まんまんだ。奴をボコボコにしてやるぜ!
ゴードン「・・・・君なら、そう言うと思ったよ。」
・・・そう言われると思ったよ。
≪賊は友を呼ぶ≫
こうしてかつての友と戦うことになった私たちだが、問題が1つある。それはレオンハルトがいるであろうパラメキア城は険しい山に囲まれており、部外者は近付くことすらできないということだ。帝国の戦力が整っているとは思えない今が、彼に近付く絶好のチャンスなのだが・・・
ということで、お約束の情報収集を行う私たち。
ゴードン「ポールが忍び込んだと自慢していたが、本当かどうか。」
レイラ「あそこに盗みに入ったっていうポールの自慢話を、あきるほど聞かされたよ。あんたも聞いたかい?」
おや? レイラとポールは知り合いだったのか。城で暮らしているレイラと、町に住んでいるポールだが、いつの間に知りあっていたのだろう。元海賊のレイラと現役盗賊のポールだから、類は友を呼ぶという奴だろうか。
しかしレイラはともかくとして、なんでゴードン王子までがポールと知り合いなんだろう。“類は友を呼ぶ理論”
をつかって想像してみると・・・
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ポール |
: |
盗賊 |
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レイラ |
: |
海賊 |
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ゴードン |
: |
× 王族
○ 王賊 |
覚えているだろうか、ゴードン王子のストーカー疑惑を。ウジウジしているフリをしてヒルダ王女につきまとい、挙句の果てに投獄された過去の事件を。
彼のストーカー行為に確固たる証拠はない。だがあれは真実だったのだ! 私の推理はやはり正しかったのだ!
くっ、ストーカー野郎のくせに、いまや王女の旦那候補ナンバーワンか。王賊らしく、外道な手段で王女の心を盗みやがって・・・。
もっとも王女の本性を知り、彼女への熱が冷めた今となっては、どうでもいいことではあるのだが。ブラックリストのNo.1とNo.2で、幸せな家庭を築くといいさ。
似たものカップルに幸あれ!
冗談はともかくとして、私たちはポールに会いに行くことにした。
ちなみに私と盗賊ポールの関係は友達ではなく、単なる腐れ縁だ。これは重要なポイントなので、決して誤解しないようにしてほしい。
ついでに私と王賊ゴードンの関係も友達ではなく、師匠と弟子だ。そして私と腹黒王女ヒルダの関係も友達ではなく、部下と上司だ。これらも重要なポイントなので、決して誤解しないようにしてほしい。
・・・ん? すると私の知り合いは、みんな友達ではなく単なる関係者か?
友達がいない私に幸あれ!
≪託すもの、受け継がれるもの≫
ポールの家に行くと先客がいた。飛空船命の男、シドだ。彼もポールの友達だったらしい。
・・・ポール、あんまり友達つくるなよ。あんたの友達には賊疑惑がかかるんだぞ。
さてポールの話によると、彼は大きな凧に乗って空からパラメキア城に侵入したという。なるほど、闇にまぎれて空から行けば、今の帝国が相手ならなんとかなりそうだ。
・・・が、ポールが1人でというのならばともかく、私たち4人が武装してというのは無理がある。さて、どうしたものか。
帝国は遠い。それにいくら混乱しているとはいえ、大きなスキがあるとは考え難い。さすがに今度は、飛竜に乗ってというのは無理だ。すると手段が限られてくるどころか、存在するかどうかも怪しくなってくるのだが・・・
・・・あった!
シド、ちょうど良いところにいてくれた! すぐに飛空船を準備してくれ! 飛空船で近付き飛竜で侵入すれば、帝国の警備網を突破できる!
ところがシドの様子がおかしい。彼はパルムの町にいた時に、例の竜巻に巻き込まれたそうなのだ。幸い命は取り留めたものの、怪我の影響で体がまともに動かないという。
シド「俺はこんなざまだが、飛空船は無傷だ! 俺が動けるようになるまで、お前たちに貸してやる。いいか、貸すだけだぞ!! 大事に使え・・・・ウッ・・グフッ・・ゲボッ」
・・・シド? どうした!? 大丈夫か!
ポール「あれは、シドの遺言だったんだよ!! 分からないのか? 奴は死んじまったんだ! 死ぬって決まったときから、奴は飛空船をお前たちに譲るつもりだったんだ。あいつは飛空船を心から愛していたんだ! 奴の気持ちを分かってやってくれ!!」
シドの気持ちを・・・。
シドは飛空船のために、他のすべてを犠牲にしたという。しかしそれは本当に、趣味が高じてのものだったのだろうか。かつては正義と慈しみの心を持ち、騎士団のリーダーをも勤めていたという彼が、自分の幸せのためだけに、地位も名誉も、そして家族さえも捨ててしまったのだろうか。
今となっては、真相は誰にも分からない。ただ、こう考えることだってできる。
シドは飛空船の存在が、この世界に幸せをもたらすと信じていた。そして自分の幸せと社会の幸せを天秤にかけ、後者を選んだのではないだろうかと。
自分のためだけに生きていた人間が、自分にとって一番大切だったものを、単なる客にすぎなかった私たちに託すとは考えにくい。でも彼にとって一番大切なものが、実は飛空船そのものではなく、飛空船がもたらすと考えていたものであるならば・・・反乱軍に夢を託しても、何ら不思議なことではない。
シドから託されたのは飛空船。しかし私たちが受け継ぐべきものは、もっと大きなものなのかもしれない。
私とシドが友達だったのか。そんな小さな事は関係ない。
私とレオンハルトが友達だったのか。そんな小さなことも関係ない。
シドは何を思ってこの飛空船を貸してくれたのか。そしてレオンハルトと会ってどうするべきなのか。正直言って、よく分からない。
それでも、断言できることが1つある。
今のままではいけない。
だから私は飛空船に乗り、皇帝レオンハルトに会いに行く。
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