≪竜巻突入計画、結論≫
ヒルダ「まあ、飛竜ではありませんか! まだ子供のようですが・・・・。飛竜の翼が竜巻の力に耐えられれば良いのですけど・・・・」
子供とはいえ巨大な飛竜を連れて、城内を歩き回る私たちを見ても文句を言わず、冷静な意見を述べるあたりが王女の懐の広さであり、聡明さの現れなのだろう。
・・・と思いたいところだが、私たちの行動がいつもアレなので、あきれ返っているというか諦めているというか、もしくは話をそらそうとしているだけなのかもしれない。
結局私たちは、この飛竜に乗って上空から竜巻の中心部に突入することにしたのだ。そのことを報告しておこうと王女に会いに来たのだが・・・確かに、飛竜の幼さは気になるところだ。
以前にミシディアの町で読んだ本には、飛竜は4〜5人を同時に乗せて飛ぶことができると書かれていた。この場合の4〜5人というのは、完全武装の竜騎士の人数だろう。すると大人の飛竜ならば500kgくらいまでは問題なさそうだ。
一方私たちが連れている飛竜は子供だが、行き先が竜巻の中心部とはいえ飛行距離は短く、重い鎧を装備している人はいない。これならば何とかなるのではないだろうか? いや、念のために計算してみよう。
幼竜の限界が・・・400kgと仮定しよう。装備と荷物の合計が推定80kg。そして私・・・ではなく、私が体を借りているフリオニールの体重は65kg、リチャードは75kg、巨漢のガイは100kgほどだろうか。するとマリアが80kg以下ならなんとかなるということになる。
・・・。
「マリア、ちょっと聞きたいんだけど、いま体重は(ドカッ! バキッ! ゲシッ!)
注:しばらくお待ちください。
≪竜使いの乙女≫
作戦開始だ。
4人の決死隊を乗せた飛竜は、すぐ近くにまでせまっている竜巻の上空に向かって飛翔する。
竜巻上空までは思っていた以上に楽に到達することができた。下の方、つまり竜巻の中心部には空中要塞が見える。あの中に皇帝がいるのだろう。
よし、飛竜よ。あの中に突入だ!
しかし、そこからが正念場だった。竜巻中心部は風が弱いとはいえ、その部分だけを通って真っ直ぐに降りていくのは難しい。少しでも進路がずれると風に捕まり、吹き飛ばされそうになる。細心の注意を払いながらも全力で飛び続けている幼い飛竜は、どんどん力を失っていく。
くっ、もう少しなのに・・・。
「飛竜よ、頑張ってくれ! もう少しなんだ!」
しかし飛竜は応えてくれない。当たり前だ。今でも精一杯に飛んでくれているんだ。それ以上に頑張れといっても、そんなの無理に決まっている。
私の計算では、何とかなるはずだったのに・・・。
もしかして、体重計算を間違っていたのだろうか。まさかマリアが80kg以上あるなんてことは・・・なんて考えている場合じゃない!
私はもう一度、飛竜に向かって叫んだ。
「がんばれ飛竜! ここで力尽きたらマリアが怖いぞ!」
マリアが何か言いたそうだったが、飛竜にしがみつくのに必死で結局なにも言わなかった。しかし口に出さずとも、心が伝わることはあるらしい。
マリアの想いに応えて、飛竜、復活!
こうして私たちは、ついに要塞への侵入に成功した。飛竜よ、ありがとう!
共に危機を乗り越えたことがきっかけで、この幼竜に対する友情のようなものが芽生えた気がする。もっとも飛竜の幼い心に芽生えたのは、私に対する友情ではなく、マリアに対する
“何か” だったのかもしれないが。
・・・えっと、マリアが物陰から手招きをしているので、今回の日記はこの辺で。
私が新たな危機を乗り越えることができたなら、またお会いいたしましょう。
≪将軍≫
「回復魔法を覚えていて良かったなー」と心から思える事件が、要塞突入直後に(仲間内で)起こりはしたものの、それに比べれば要塞の探索は楽だった。親衛隊すら私たちにとっては大した敵ではなく、木製の人造巨人ウッドゴーレムは、炎の魔法で簡単に倒すことができる。回復アイテムをたっぷりと用意しているから、魔法は使い放題だ。
楽勝、楽勝!
こうして要塞内の宝箱を荒らしながら突き進んでいたのだが、その中の1つを開けたときに、親衛隊よりも身なりの良い騎士2人に襲われた。ジェネラル(将軍)だ。宝箱に入っていたということは、きっと2人は箱入り娘だ!
しかし残念ながら(?)どちらも男性だったらしく、彼らは怒り狂って攻撃を仕かけてきた。それも私にばかり集中で!
ちょ、ちょっとまて。あんたら攻撃力高すぎないか!? いくら私の言動が気に入らなかったといっても、その攻撃力で私を集中攻撃するのは卑怯じゃないのか!?
私とガイの2人がかりでも回復が追いつきそうにないため、マリアの防御魔法もつぎ込んで体勢を立て直し、その間にも攻撃専門のリチャードが少しずつダメージを与えていく。
以前に飛竜の洞窟で、キマイラ4体と戦ったとき以来の総力戦だ。いや、あの時以上の激戦だ。ちなみにキマイラ戦で苦戦したのも私が集中攻撃を受けたからだが、深い意味はないはずだ。
だが、今回も私たちは勝利した。ジェネラル2人がかりの攻撃とはいえ、とある娘さんの往復ビンタに比べれば大したことはない。
・・・えっと、マリアがニコニコしながら私を物陰に引きずっていくので、今回の日記はこの辺で。
あ、マリア。グーはいけないよ、グーは・・・ウギャー!
注:当分の間お待ちください。
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