≪アルテマ疑惑≫
ミンウの命と引き換えに、アルテマの魔法を手に入れた私たち。あのミンウが自分の存在よりも重要だと考えた代物だ。そして古代の魔道師たちが、この世界をも揺るがしかねないと考えた代物だ。きっとこれからは、反乱軍の怒涛の反撃が始まるに違いない。
そう考えながら、報告を行うためフィン城に帰還した私たち。リバイアサンに襲われたときに行方不明になっていたレイラが、無事に戻っていたのは朗報だ。しかしその喜びすら吹き飛ばす、新たなる脅威が迫っていた。
竜巻。
フィン城の近くに、巨大な、しかし奇妙な竜巻が発生していたのだ。
兵士「あの竜巻の中に皇帝がいるのです。」
ヒルダ「皇帝は魔力で竜巻を作り出し、アルテア、ガテア、パルム、ポフトを破壊し、このフィンの側まで来ています。皇帝自ら、竜巻をコントロールしているに違いありません。」
ゴードン「せっかくアルテマの魔法を持ち帰ってもらったのに、このままでは使う間もなく竜巻に飲み込まれてしまう。」
なにを悲観的な。アルテマは究極の魔法なんだぞ。本物の竜巻ならいざしらず、魔法で作られた模造竜巻なんか、アルテマで吹き飛ばせばいいじゃないか。
よし、反乱軍の士気を高めるために、アルテマの威力をちょっとだけ見せてあげよう!
私たちは外に出て、うろついている魔物や帝国兵に戦いを挑む。皇帝は竜巻とともに温存していた戦力を投入してきたのか、以前よりも強力な奴ばかりが現れる。しかしこちらにあるのはアルテマだ。ザコなんか相手にならんわ!
それ、アルテマ!
・・・あれ?
気を取り直してもう一度。
くらえ、アルテマ!
・・・・・・・・・・・・・・・ありゃ?
どうやら私たちが手に入れたのは、模造品である空極磨法アノレテマだったらしい。あのミンウがこんな失敗をするとは思えないから、きっとミシディアの塔で命を落としたのは、双子の兄弟であるミソウだったのだろう。おっと、あの塔の正体はミシ〒”ィアの塔で、守っていたのはリバイアサンではなくリバイアくんだった可能性もある。
私は、アルテマがイマイチなのは自分の能力が足りないせいだという事実をひたすら隠し、もう1つの頼みの綱である飛竜に頼ることにした。
・・・しかし今回のアルテマもそうだし、以前のミスリルもそうだが、反乱軍の頼みの綱というのは、どうにも信用が置けない。飛竜は大丈夫なんだろうか。竜騎士が持つペンダントを使えば、この城にある魔法の鏡から飛竜を呼び寄せられるというが、私たちが飛竜と別れたときには、飛竜はまだ卵の状態だったのだが。
以下、妄想。
迫り来る竜巻。
混乱する反乱軍。
最後の希望だった飛竜はまだ卵。
そんな状況下で卵を抱えて、呆然と竜巻を見上げる私たち。
最期を確信した私たちは、きっとこんなことを話し合うのだろう。
「・・・無念だ。だが我が友である飛竜を放ってはおけない。いっそのこと食べてしまおう。」
「オムレツにしましょう。ベヒーモスのお肉、まだ残っていたよね。」
「せっかくだから道具にもこだわろう。ミスリルフライパンなんてどうだろうか。」
「炎も、こだわる。アルテマ、きっと、うまく焼ける。」
「バッカスの酒で香りをつけて、カシュ○ーン風にしよう。」
「ケチャップで、のばらの紋章を描きましょう。・・・みんな、これまで本当にありがとう。」
これまでの戦いの結末が、究極のオムレツになるのだけは勘弁してほしい。
≪マネーロンダリング?≫
竜巻に守られた皇帝をどうすれば倒せるのか。私たちは不安要素が大きい飛竜以外の手段を求め、世界一のコソドロにして戦友の、ポールに会いに行くことにした。彼の持つ特殊な知識と技能は、今回のようなケースでも役に立つかもしれないからだ。
ポール「お前ら、あの中に入ろうっていうのか? まったく大した奴らだ。よし! とっておきのお宝を使ってくれ。ベッドの横の壁を探してみな!」
そこには隠し扉があり、隠し部屋には武器や防具などが保管されていた。
・・・つまり彼は私たちに、これらを装備して竜巻に突撃しろと言いたいのだろうか!?
無理だってば。いくら極悪武器ブラッドソードの2本目が手に入ったからといっても。
それよりも気になるのが、このお宝の出所だ。コソドロのお宝というと、どう考えたって盗品だ。
しかしどんなに出所が怪しい武器でも、勇者が世界を守るために使えば正当化される。そんな法律などあるはずもないのだが、ある種の世界ではそれがルールになっているとしか思えないのもまた事実。
そして今回の場合、私たちが竜巻に突撃すれば、後に残されるのは装備のみ。後からこっそり回収すれば、怪しかったこれらの武器が、なんと勇者愛用、伝説の武器に早変わり!
・・・ポールめ、憶えていろよ。絶対に生きて帰って、貴様の野望を阻止してやるからな!
≪飛竜と竜巻≫
あわせて飛竜巻き。たぶんカッパ巻きよりも高級品だろう。カッパがキュウリなら、飛竜は・・・何が好物なんだ?
竜騎士たちは、飛竜に何を食べさせていたのだろうか。竜騎士のリチャードならよく知っているだろうが、なんとなく怖い返事が返ってきそうで聞く気になれない。万が一「ああ、飛竜巻きとは卵焼きを巻いたもので・・・」などという返事が返ってきたら、卵焼きの材料が心配になってくるからだ。
さて、アルテマや飛竜やポールをネタにして遊びながらも計画を練っていた私だが、どうやら飛竜に頼るのが一番良さそうだ。竜巻の中心部は風が弱く、飛竜に乗って上空から進入できそうだと分かったからだ。
そこでフィン城にある鏡の間へ行き、巨大な鏡にペンダントを映してみた。
ペンダントから放たれる光が鏡に吸い込まれていくと、なぜか鏡に飛竜の姿が写しだされた。
あの、「飛竜のたまご」から産まれた飛竜だ!
よかった! まだ卵のままじゃなかった!
飛竜はまだ幼いようだが、私たち4人を乗せてなんとか飛ぶことはできそうだ。
鏡に映る飛竜は力強く羽ばたき、やがて羽音が聞こえてきた。
・・・羽音?
やがて目の前に降り立つ1頭の飛竜。ようやく、竜騎士と飛竜がそろったのだ。
・・・が、ここ鏡の間は城の中にある。この飛竜は、一体どこから入ってきたのだろう。
もし城の壁を壊して入ってきたのなら・・・リチャード、修理代はよろしくな。
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