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≪城には秘密があるもの、とはいうけれど≫

 私たちの活躍により、ついにフィン城を取り戻すことができた。少し前までは魔物がうろついていたこの城だが、すでに修復作業(と、大掃除)は終わっており、玉座の間にはヒルダ王女とゴードン王子が居座っている。
 ・・・けっ、ゴードン王子め。すっかりヒルダ王女の婿気取りかよ。ブラックリストのトップに名を連ねているとも知らないで、いい気なもんだぜ。

 ・・・失礼。
 フィン城奪回の闘いでは大活躍した私たちだが、その後の復旧作業でも実は一仕事していた。ちなみに私が何をしていたかというと・・・ゴードン王子が座っているイスが、少し前までは魔物ゴートスが座っていたものであることを述べれば、賢明な読者はお分かりいただけると思う。
 そんなネチネチ、ジメジメとした陰険な王子いじめをして楽しんでいたのもつかの間。私たちに新たな任務が伝えられた。

 ヒルダ「ひとつ気がかりなのは、ミシディアへ向かったミンウのことです。あれから、何の連絡もありません。ミシディアへ行ってくれませんか?」

 魔道師の国、ミシディア。白魔道師ミンウはそこへ、究極魔法アルテマを求めて旅立っていたのだが、ずっと連絡がないという。・・・便りがないのは元気な証拠ってことで、放っておくわけにはいかないんだろうな、やっぱり。しかたがない、また長旅になるが、行ってくるか。

 王女の話では、アルテマはミシディアの塔に封印されており、その封印を解くためには仮面が必要になるらしい。その仮面はこの城の地下にあるというのだが・・・って、ちょっと待て。ミンウが先に行っているんだから、私たちに仮面はいらないんじゃないのか? っていうか、仮面はもう、ミンウが持ち出しているんじゃないのか?
 また、地下へ行くためには、どこかにある扉を通らなければならないそうなのだが・・・。

 ヒルダ「ごめんなさい。私はどこに、その扉があるか知らないのです。」

 ちょっと待てーい!
 それじゃあミンウは、必要な仮面を持たずにミシディアへ向かったってことなのか!? 彼はいったい、何をしに行ったんだ!? 連絡がないのは、恥かしくて連絡できないからじゃないだろうな!
 ・・・いや、隠し扉のこと、王女は知らないがミンウは知っていたと考えることにしよう。ついでに仮面は、いくつもあるんだと考えよう。この柔軟な思考。これが大人の対応って奴だ。

 さて、王女が知らないとなると、他に知っている人はいないと思うのだが、念のためにゴードン王子にも聞いてみよう。もちろん彼に聞くのは地下室とその扉のことであり、私が推薦したイスの座り心地ではない。

 ゴードン「この城のことは、ヒルダが一番知っているはず。彼女が知らないのでは・・・・そうだ! ポールなら、そういうことに詳しいだろう! あいつは世界一のドロボウらしいからな。」

 なるほど、その手があったか。でも、城の秘密を盗賊から教えてもらうって・・・。しかもそれを、王族から勧められるって・・・
 ・・・こんなことで、本当にいいのだろうか。


≪城下町の片隅で≫

 先日の戦いで取り戻したのは城だけではない。城下町を歩いていると、そこかしこから人々の喜びの声が聞こえてくる。やはり自分の家に帰ってこれたというのは、特別な喜びになるのだろう。
 そんな城下町の片隅に、「自称、世界一の盗賊」から「王族公認、世界一のドロボウ」に出世(?)した、義理堅いコソドロ、ポールの家がある。
 ポールとは知らない仲ではない。異国の地で一度は助け、一度は助けられた、腐れ縁とでもいうべき間柄だ。そして彼の故郷でもあるフィンを取り戻したことで、また1つ貸しを作ったことになる。それをこれから、情報という形で返してもらおうというわけだ。

 ポールの家はすぐに見つかった。通りすがりの人に場所を聞いたら、すぐに教えてもらえたからだ。どうやらこの町の人は、みんな彼の家を知っているらしい。さすがは “世界一” の肩書きを持つ有名人だ。
 ・・・でも、盗賊がこれでいいんだろうか。

 ポール「フィン城の隠し扉? 知ってるぜ!! 中には何があるんだ? 白い仮面? なんだ、そんな物。おれには用はないな。よし、教えてやろう。大広間の右上のすみだ。」

 さすがはポール。その腕といい、義理堅さといい、まさに世界一のドロボウだ。
 ・・・でも、やっぱり私はこう思う。こんなことで、本当にいいのだろうかと。第一このこと、ヒルダ王女になんと説明すればいいのだろう。正直に説明した場合のことを、ちょっと想像してみよう。

 私「隠し扉の場所は、盗賊ポールから教えてもらいました。」
 王女「まあ、それはよかったですね!」
 私「場所は大広間のすみ、つまり、すぐそこの壁です!」
 王女「まあ、それは気付かなかったわ!」

 ・・・あ、涙が出てきた。


≪王城の怪談≫

 王子と王女が引きつった顔つきでこちらを見ているのには気付いているが、だからといって任務を放棄するわけにはいかない。勇気をふりしぼって玉座の間の隅にある隠し扉を開き、地下へと向かう私たち。その途中で1人の兵士と出会った。

 兵士「この部屋で装備を整えていってください。」

 ラッキー! 宝物庫からアイテムを分けてもらう私たち。大したものはなかったが、それでも嬉しいことに変わりはない。そしてその場を後にする。
 ・・・って、ちょっと待て。ここって王女すら知らなかった、隠し扉の先なんだぞ。なぜ兵士がここにいるんだ!?
 私はたくましい想像力を働かせて推理する。

 今は使われておらず、存在すら忘れ去られた宝物庫。そこはかつて、1人の真面目な兵士が警備にあたっていた。しかし宝物庫の使用中止が決定し、隠し扉によって下界と切り離されたその時、彼は長年働いてきた職場との別れを惜しみ、まだ最後の大掃除をしていた。そして気持ちの整理がつき、その場を離れようとした時、すでに帰り道は失われていた。その後、彼は何日も何日もそこで耐え忍んだが力尽き、彼の想いは宝物庫とともに・・・

 ひえー!!!

 あわわ、あの兵士は何者だ!? まさか、彼には足がないなんてことは・・・

 しょえー!!!

 私たちは振り返ることなく、足早に地下室へと向かう。そこで待ち構えていたのは、レブナントやワイトなどといった、死者の国の住人たち。ま、まさかこいつらは、あの兵士とともにここに閉じ込められた、かつての住人たちなのでは・・・

 ほげー!!!

 途中でモンスターの魔法で記憶を消された私を助けるため、ガイがトンカチで頭をぶっ叩くという暴挙にでたのは、きっと彼もパニックを起こしていたからだろう。またグリーンソウルという魂のようなモンスターが、なぜか私たちを回復してくれたのは、きっと生前の記憶が残っていたからだろう。
 死後の世界。それは間違いなく存在する。そう、今この文章を読んでいるあなたの側にも・・・

 うぎゃー!!!

【追記】
 途中でモンスターに記憶を消されたからか、それともトンカチで頭を叩かれて記憶をなくしたからかは分からないが、この探索のことはよく覚えていない。もしかしたらこの心霊体験、そして隠し扉に関する一連の話は、私の夢に過ぎなかったのかもしれない。ただ1つだけはっきりしていることは、私の持ち物の中に、いつのまにか白い仮面が混ざっていたということだ。
 もしかしたら、これこそが最大の心霊体験なのかもしれない。

 ぎょえー!!!


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