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≪帝国本拠地、闘技場へ≫

 ヒルダ王女をゲットするため・・・もとい、救出するため、ゴードン王子を再びパーティに加え、パラメキア帝国の中心にある闘技場へ行くことになった私たち。追い出されるような形でレイラがパーティから外れ、留守番をすることになったのだが、はて、この世界には5人以上で旅をしてはならないという法律でもあるのだろうか。そ、それとも彼女は私の本性を知り、スケベ大王と旅をするのが嫌になったのだろうか。

 しかしそれは誤解というものだ。だから読者は惑わされてはならない。なぜなら偽王女ラミアクィーンは、相手を魅了する「ゆうわく」という特殊能力を持っていたのだから。あれは私が魔法にかかっていたからであり、つまり不可抗力だったのだ。
 本来の私は真面目で理性的な男であり、相手が誰であろうと惑わされることはない。この文章の初めに「ヒルダ王女をゲットするため」などと書いたのも本心ではなく、文章のバランスを考えての軽い冗談にすぎないのだ。だから私を信じてほしい。私は色恋沙汰などに興味はなく、ただ平和のためだけに戦っているということを。

 さて、闘技場には皇帝が来ているという噂がある。これはチャンスだ。うまく立ち回れば皇帝に近付けるかもしれない。王女救出と同時に皇帝を倒せれば、戦局が一気に逆転するのは間違いない。
 いや、これはチャンスなんてものじゃない。千載一遇の大チャンスだ。
 王女を救出しつつ、彼女の目の前で皇帝撃破! そうなれば私の株は上がり、きっとエンディングはこうなるに違いない。

 美しい王女と結婚し、末長く幸せに暮らしましたとさ。めでたし、めでたし。

 でっへっへ(妄想中)・・・・・・はっ!

 私は真面目一筋の誠実な青年です。お願い、信じて!


≪闘技場での戦い≫

 パラメキア中心部は砂漠と険しい山に囲まれた厳しい環境にあり、そこへ行くためには、強力なモンスターが住んでいる砂漠を通るしかないようだ。しかしカシュオーンまで飛空船に乗ってゆき、そこからチョコボに乗って行けば、闘技場まで簡単にたどり着くことができるのだ。飛空船もチョコボも片道切符なので、帰りがちょっと心配なのだが。

 王女を連れて砂漠を縦断。

 ・・・ま、先のことは後から考えよう。

 さて、闘技場には皇帝がいたのだが・・・何で頭に角が生えているんだろう。皇帝って悪魔の類なんだろうか。
 しかし今は、そんなことを考えている場合ではない。

 皇帝「さあ戦うのだ! 勝者には、フィン王女ヒルダを与えよう!!」

 ベヒーモスという巨獣が闘技場に解き放たれる。こいつに勝てば王女をゲッ・・・いや、救出できるというわけか。
 しかし気になるのが今の皇帝のセリフだ。もし私たちが敗れれば、勝者であるベヒーモスに王女が与えられるということになる。つまりこの闘いには、私たちの命だけでなく王女の命もかかっているのだ。王女をベヒーモスのエサにされるわけにはいかない。
 そして私たちとベヒーモスとの、食うか食われるかの戦いが始まった。

 ・・・え?
 この文章、別に間違っていませんよ。もしかしてご存知ないんですか?
 ベヒーモスって食べられるんですよ。
 というわけで、勝てば焼肉食べ放題に目の色を変えた私たちは、猛然と巨獣に襲いかかる。今の私には、ベヒーモスが黒毛和牛にしか見えない。しかしベヒーモスは体格から想像できるとおり攻撃力、防御力ともに高く、かなりの苦戦を強いられた。が、見事に勝利!
 そして・・・ちっ、レアアイテム、ベヒーモスの肉(カルビ)はゲットできずか。

 しかし本番はこれからだ。これから賞品(?)が授与される。堂々と皇帝に近づける。

 「・・皇帝を倒すチャンスだ!」

 しかし予想していた通りこれは罠。皇帝は私たちの正体に気付いていたようだ。皇帝の姿が突然消えたかと思うと、ダークナイトが3人の部下を連れて現れる。

 ダークナイト「フッ。牢屋にぶち込んでおけ!」

 牢屋に・・・。
 しかしこれも予想していた、そして望んでいた展開の1つだ。王女は牢屋に入れられているはずだから、これで王女に一歩近づけたというわけだ。
 ただ問題は、王女を救出する前に・・・

 誰か助けてー!

注:ベヒーモスの原典は知りませんが、旧約聖書に登場して人間の食料になるようです。聖書を読んだことはないので、詳しいことは知らないのですが。ちなみに同じくFFシリーズでおなじみのリバイアサン(レビヤタン)も旧約聖書に登場し、ベヒーモスと一緒に食料になるようです。余談ですが、リバイアサンの原典はバビロニアの神話(ティアマトの子供として登場)で、これは(一部の人が実話だと信じている)旧約聖書よりも、ずっと古い作り話です。


≪意外な助け≫

 牢屋に入れられた私たち。大戦艦でシドと偽王女を救出したときには、手で牢屋をこじ開けた私たちだが、さすがに中からでは開けられない。いや、あの時は罠だったのだから、外からならこじ開けられるように、何らかの細工がされていたのかもしれない。

 途方にくれる私たち。ミイラ取りがミイラになってしまった。しかもここは帝国のど真ん中。助けなど現れるはずがない。はずがないのだが・・・?
 牢の外から妙な音が聞こえてくる。誰かが争っているような音だ。まさか!?

 そして現れたのが、自称世界一の盗賊ポール。反乱軍アジトのあるアルテアに身を寄せていながら、サラマンドの鉱山にまで出稼ぎに出かけ、ついでにお勤めまでしていたという、とても仕事熱心な盗賊だ。
 彼はさすがに盗賊だけあって、牢の鍵を簡単に開けてくれた。・・・ように見えたのだが、実は看守から奪い取った鍵を使っていただけなのかもしれない。

 ポール「鉱山で助けてもらったお返しだ!俺は借りを作るのが嫌いでね! さっさと逃げるんだぜ!!」

 敵の本拠地で、ここぞの時に再会する。これが偶然だとは思えない。私たちの任務は反乱軍の人は誰だって知っていただろうから、ポールは借りを返すチャンスがあると考え、密かに後をつけていたのかもしれない。まあなんにせよ助かった。盗賊の中にもいい奴がいるんだなぁ。
 ・・・って、ポールはどこに行った!? もしかして、これから帝国の人間相手に一仕事するつもりなのか!?

 窃盗反対! 万引きだって犯罪だ!
 ポールめ、次に出会ったら、みっちりくどくど説教してやる!


≪(恋の)ラストバトル≫

 牢屋から脱出する途中で、ついにヒルダ王女を発見した。今度は本物だと信じたい。
 ちょっと予定は狂ったが、ここで先頭に立って助ければ、私の株は上がるはずだ。そこで必死になって鉄格子をこじ開ける。

 私「王女! 今開けます!」

 ・・・・・・・・・開いた!
 私は扉を開けて中に入ろうとする。しかしその時、鍵を開けるために体勢を崩していた私を追い抜いて、何者かが牢の中に入っていった。

 ゴードン王子、ダーッシュ!!!

 ゴードン「ヒルダ! 大丈夫か!!」

 ヒルダ「ゴ、ゴードン?! あなたが・・」

 王女から、助けられたこと以上の喜びが感じられるのは、私の気のせいではないと思う。
 そういえばゴードン王子がたくましくなって、今では指揮官を務めているってこと、本物の王女は知らなかったんだよな。こういうギャップって印象に残るからなぁ。
 くっ、ヒルダ王女争奪戦、私の悪あがきもここまでか。ふん、2人ともお幸せに!

 ・・・と、素直に(?)祝福できないのが恋愛問題。
 お、おにょれゴードン王子。こうなったら・・・

 私「ゴードン、王女をつれて先に逃げろ!! 俺たちが敵を引きつける!!」

 王子を呼び捨てにしているのは彼が戦いの弟子だからであって、深い意味はない。が、先に行かせたことには深い意味がある。
 ふっ、頑張って敵を倒してくださいな。王女を守りながらだと気合も入るでしょうね。へっへっへ。私たちはその後をつけて、安全に帰らせていただきますよ。

 しかしこの陰謀はなぜか大失敗し、敵はみんな私たちの方にばかり襲いかかってくる。
 納得できーん!
 しかも外にたどり着いたとき、王子と王女の姿はどこにも見えなかった。どうやら誰かが飛空船で迎えにきたものの、私たちを忘れて帰ってしまったようだ。
 ・・・仕方がない。砂漠は歩いて、その後はチョコボで帰るとするか。

 というわけで、踏んだり蹴ったりの王女救出作戦だったが、最後に1つだけいい話があった。それは黒毛和牛ベヒーモスと戦った場所から、死体がなくなっていたことだ。おそらく王子たちが、アジトに持ち帰ったのだろう。つまりこれからしばらくは、焼肉が食べ放題になるということだ。
 反乱軍の食糧問題はこれで解消だ。帝国よ、素晴らしい賞品をありがとう!


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