トップページに戻る ゲームの話に戻る 前のページへ 次のページへ

≪滅びた城で≫

 女海賊のレイラを仲間に加え、彼女の船に乗ってディストへ向かう私たち。かなり長い航海になったが、無事にディスト島に着くことができた。
 目的地である城は、上陸してすぐに見つけることができた。かつてこの城には、竜騎士や飛竜たちが暮らしていたのだろう。大空を舞う飛竜と、それを駆る竜騎士。その姿は、きっとディストに生まれた子供たちの憧れであったはずだ。

 しかし今や、城は荒れ果てている。きっと帝国との戦争の傷跡だろう。子供たちの夢を壊さないためにも、飛竜が爪を研いだ跡ではないと信じたい。
 誰も暮らしていそうにないその城に入ったとき、私は意外な姿を目にした。少年だ。子供が生きていたのなら、他に生き残りがいても不思議ではない。
 竜騎士は全滅したという噂を否定する、小さな可能性が見つかった。しかしこんな所に子供が暮らしていたとは本当に驚きだ。きっと彼は戦争中はどこかに隠れ、残された食料を頼りに生きてきたのだろう。そしてずっと助けが来るのを待っていたのだろう。
 でも、もう大丈夫だ。私たちなら、子供を守りながらアジトに引き返すことくらいはできるだろうから。

 しかしこういった状況では、子供は見知らぬ大人を警戒するものだ。なにせこの城をこんなにしたのは帝国兵、つまり見知らぬ大人たちなのだから。だから私は少年の警戒を解くため、優しく話しかけることにした。

 「よく頑張ったね。でももう大丈夫だよ。お兄さんたちが助けに来たからね。」

 子供「かえれ! くるな!」

 がーん! ダメだ。この子は興奮して、まともな話ができる状態じゃない。ならば話が通じる相手、できれば大人の人を呼び出してほしいのだが・・・よし、この手でいこう。

 「えーっと、私たちは反乱軍、つまり君の味方なんだ。みんなを助けに来たんだよ。だからお父さんかお母さんとお話しをしたいんだ。私たちがここに来たことを、誰かに話してきてくれるかな?」

 子供「おかあちゃんに いいつけてやるー!」

 ありがとう。
 というわけで、私たちはその子の母親に会うことができた。どうやら生き残っているのはこの2人だけらしい。
 ・・・まずいな。竜騎士は本当に全滅か。せめて飛竜だけでも連れて帰りたいのだが。

 母親「この部屋の奥に最後の飛竜がいます。何か訴えかけてくるのですが、私には何を言ってるのか分かりません。『ペンダント』があれば飛竜と話せるのに・・・・」

 竜騎士は魔法のアイテムである、ペンダントを使って飛竜と話をしていたようだ。しかしそんなもの私たちには不要だ。さあガイ、通訳を頼む。

 飛竜「グァー グルルー ガウー」

 こらガイ、ちゃんと訳さないか。もう一度頼む。

 飛竜「グァー グルルー ガウー」

 ・・・もしかして、ガイは飛竜の言葉が分からないのだろうか。動物の言葉が分かるという彼が話せないということは・・・もしかして、飛竜は動物じゃないのか?

 少年たちの憧れであり、竜騎士たちの友であり、私たちの希望の1つである飛竜。しかしその姿が、急に得体の知れない存在に思えてきたのはなぜだろう。
 ま、まさか・・・飛竜は非竜なのか!?


≪理想と現実、そして真実≫

 近くにある飛竜の洞窟へ行き、竜騎士の墓からペンダントを入手した私たち。私たちの行動がどんどん勇者らしくなくなっていくが、他に手段がないのだから仕方がない。それにディストの城にはペンダントがなかったことを考えると、新人竜騎士たちもこうしていたのだろう。そしてこれはきっと、「伝統」とか「竜騎士になるための試練」とかいう言葉で納得させられていたのだろう。
 しかし飛竜の事といい、このペンダントの事といい、子供たちの夢を壊すような現実ばかりだ。この国に生まれなくて良かったと心から思う。

 さて、ペンダントを携えて城に戻った私たちは、飛竜との会話を試みた。
 飛竜は帝国兵が飲み水に入れた毒に侵され、もう長くはないという。時間がない。残酷なようだが、無理にでも話を聞かせてもらわなければならない。

 飛竜「帝国との戦いが始まる寸前に、リチャードという竜騎士が、究極の魔法を得るために旅立ちました。」

 竜騎士が戦争前に旅立っていた!
 つまり、まだ生き残りがいるということだ。しかも究極の魔法を得るためならば、同じ目的で旅立ったミンウと出会う可能性がある。これは・・・消えかけた希望の光が、また輝きを取り戻してきた。

 飛竜「最後の願いを聞いてください。この卵を、北の洞窟にある命の泉に沈めてきてほしいのです。これは最後の飛竜の卵です。命の泉に沈めなければ、干からびて死んでしまうのです。」

 へ? 泉に沈めなければ死んでしまう?
 魚や両生類(カエルなど)の卵は乾燥に弱く、そのため水中に生まなければならない。しかしそれを克服したのが爬虫類や鳥類であり、彼らの卵は丈夫な殻に守られ、少しくらいの乾燥には耐えられるようになっている。が、爬虫類の王様だと思っていた飛竜の卵が乾燥に弱いとなると・・・

 私はまた、知ってはならない現実を知ってしまった。なんと、飛竜は両生類だったのだ
 そういえば、炎の精霊でありドラゴンの一種として扱われることもある火トカゲと、両生類の一種であるサンショウウオは、どちらも英語でサラマンダーという。ますます怪しい。
 さらに物語に登場する忍者は、巨大なカエルに乗っていることがある。
 ・・・そうか。真の戦士とは、両生類を友とするものだったのだ!

 少年たちよ、現実から目を背けてはならない。現実を知ることが大人になるということであり、竜騎士になるための試練でもあるのだから。
 君が憧れていた飛竜の正体は、非竜というカエルの親分であり、所構わず爪をとぐ猫のような習性を持っており、竜騎士たちには墓荒らしの前科がある。このことを知ってなお夢を捨てなかった者だけが、名誉ある竜騎士になれるのだ。

 少年たちよ、真実を見誤ってはならない。真実を知ることが真の大人になるということであり、真の竜騎士になるための試練でもあるのだから。
 君が憧れていた飛竜の正体がなんであれ、竜騎士の友であることに違いはなく、竜騎士たちは墓まで友情の証を持っていく。後輩たちに、竜騎士としての生き様を伝えるために。このことに気付いた者だけが、偉大なる竜騎士になれるのだ。


≪いつの日にか≫

 命の泉があるという北の洞窟。それはペンダントを取りに行った飛竜の洞窟のことだ。
 しかしここに出現する敵は非常に強い。特にヒルギガース(丘の巨人)など、1体だけでも全力で戦わなければならないのに、2体で出現することもある。全力で戦うと当然ながら消耗が激しく、頻繁に回復を行わなければならなくなる。なのにディストは滅びた城であるため、回復するための宿がないのだ。
 そこでいったん引き返して、バカ高い携帯用宿屋であるコテージを買い込むことにした。そのための移動でかなりの時間をロスしたはずだが、飛竜の卵はまだ無事だ。意外に丈夫なものらしい。

 さて、この洞窟の最深部で、ついに命の泉を見つけた。しかしそこに住み着いていたのはキマイラという魔獣。なんと4匹もいる。それだけでも辛いのに、なぜか奴らは私ばかりを攻撃する。私に恨みでもあるんですか!?
 本当にやばかった。何度も倒れそうになりながら、というよりも初めから最後まで倒れそうな状態が続きながらも、自分とガイの回復魔法でかろうじて持ちこたえ、マリアの魔法とレイラの弓で攻撃し、1匹ずつ葬っていく。
 男性が回復を担当し、女性が攻撃を担当する。世の中はどうだか知らないが、これが私たちのパーティにおける立場というものを表しているのかもしれない。

 邪魔者を排除した後、私は飛竜の卵を、命の泉にそっと沈めた。
 城に戻ったとき、その母親はすでに生き絶えていた。あの卵は、本当に最後の飛竜となったのだ。

 飛竜の成長速度は分からない。だからあの卵がいつ孵化し、いつ戦えるようになるのかも分からない。それに成長した飛竜が、どれだけの戦力になるのかも分からない。
 でもあの卵を救ったことには、もっと大きな意味があるはずだ。

 飛竜が戦争に間に合わなかったとしても、そんな人間の都合はこの飛竜には関係のないことだ。せっかく生き延びられたのだから、その幸運を幸せに変えてほしい。人間のようなちっぽけな生き物に翻弄されることなく、大空の覇者として生きることで。
 あの卵から生まれる飛竜は最後の1匹だという。しかしそれはディストでの話。空を飛ぶ飛竜のことだ。きっとどこかに彼らの楽園があるに違いない。そこへ行けば、飛竜らしく生きてゆくことができるはずだ。
 だから私は誇りに思う。1つの命を救ったことを。
 だから私は誇りに思う。竜騎士探索という今回の任務が、例え失敗だったとしても。


トップページに戻る ゲームの話に戻る 前のページへ 次のページへ