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≪反乱軍リポート・2≫

 ヒルダ王女が帝国に捕まった。
 王女が飛空船に乗っていたのは、私たちを出迎えるためだったらしい。その気持ちはすごく嬉しい。しかし部下が止めるのを振り切ってまでした、身の危険をおかしてまでした行動が、結果として仇になってしまった。

 反乱軍の勢力は、帝国とは比較にならないほど小さなものだ。それでもこれまで戦ってこれたのは、指揮官たるヒルダ王女の存在が大きい。彼女がいなければ、反乱軍はとうに潰されていただろう。
 その王女が帝国に捕まった。アジトを離れた、わずかなスキをつかれて。しかしこれは、決して偶然ではないはずだ。帝国はずっとチャンスをうかがっていたのだろう。なにせ王女さえ消せば反乱軍が烏合の衆に成り果てることは、容易に想像できたのだから。実際、少し前までの反乱軍ならそうなっていただろう。

 だが、今の反乱軍は違う。王女一人の力で戦っているわけではない。自由を手にするために、一人一人が帝国と戦う意志をもっているのだ。そんな今の反乱軍の声を聞いてほしい。

 兵士「王女を助け出してください。」
 兵士「王女は大戦艦の中に捕らえられているらしいのだ。頼む! 助け出してくれ!」
 町人「ヒルダ様を助け出して!」
 町人「その『太陽の炎』で、大戦艦を爆破してくださいっ!」

 私は彼らを買いかぶっていたようだ。かつての反乱軍は、いまや半乱軍になっている。
 ・・・ふぅ、頑張ってくるか。


≪大戦艦へ≫

 空を飛ぶ大戦艦だが、まったく手が出せないわけではない。というのも、物資を補給するために、地上に下りてくることがあるらしいからだ。そしてそのための基地を、反乱軍の一員が見つけていた。私たちは歩いてそこへ向かうことになった。

 その基地は帝国の領内にあるため、道中では強敵と遭遇することも珍しくない。しかしそいつらは、いいアイテムを落としてくれることがある。中でも帝国のマジシャンが落とすのは、入手困難な高額の魔術書だ。それは覚えてよし、使ってよし、売ってよしで、いくらあっても困らない。ならば私たちがすべきことはただ1つ。すなわち、戦闘に明け暮れること。

 マジシャン出てこーい! 魔術書落とせー!

 え、王女の救出?
 も、も、もちろん、忘れていたわけじゃない。ほら、いうではないか。急がばまわれって。


≪帝国兵の謎≫

 目的の基地についたとき、運良く大戦艦が止まっていた。私たちは以前に入手していた通行証を使い、帝国兵のフリをして潜入する。変装などはしていないので顔丸出しの私たちだが、彼らはまったく気がつかないようだ。・・・これでいいのか?

 しかし帝国兵はだませても、戦艦の中をうろついているモンスターはだませないらしく、たびたび襲いかかってくる。帝国兵よりもモンスターの方が賢いのだろうか。・・・いや、そんなはずはないか。きっとモンスターは、人間を見かけたら襲いかかるように訓練されているのだろう。
 ・・・ん? そうすると私の知らないところでは、帝国兵もモンスターに襲われていることになる。やっぱり帝国兵はアホだ。

 別に、帝国兵を見下しているわけではない。今は敵対しているとはいえ、彼らは私たちと同じ人間なのだから。でもこんな風に考えないと、彼らをもっと侮辱することになってしまう。なにせ他に考えられる可能性は1つしかないのだから。
 ・・・私だって考えたくはない。モンスターは帝国兵を、人間だと思っていないなどと。


≪王女救出≫

 小部屋の1つに鉄格子がはめられ、簡易の牢屋になっていた。そこにいたのはもちろんヒルダ王女。シドも同じ部屋に入れられていた。他の乗組員は知らん(注)
 牢屋の鍵など持っていなかった私たちだが、扉を開けて2人を救出する。そして2人を先に逃がし、私たちは大戦艦破壊のために、エンジンルームへと向かう。
 王女を守るのがシド1人ということになるが、たぶん大丈夫だろう。彼はかつて騎士団のリーダーだったそうだから、今でもそこらへんのモンスターよりは強いだろうから。それにあの王女のことだ。守ってもらうのはシドの方かもしれない

 さて、読者の中には疑問を感じている人もいるだろう。私たちが鉄格子を、鍵も使わずどうやって開けたのかを。せっかくだからお答えしよう。
 それはもちろん、手で「鉄格子をこじ開けた」のだ。

注:画面に表示されないというだけです。・・・たぶん。


≪ダークナイト≫

 エンジンルームに到着した私たち。誰も警備をしていないので、堂々と近付いてエンジンに太陽の炎を投げ込む。
 その時、別の入り口から奴が入ってきた。

 ダークナイト「これで勝ったと思うなよ!」

 どうやらここの警備は、ダークナイトの仕事だったようだ。なのに別の部屋にいて慌ててやってきたということは・・・きっと昼寝でもしていたに違いない。あー、かっこわるーい。

 ということで、任務を終了した私たちは、大戦艦が爆発する前に、急いで逃げ出すことにした。幸いダークナイトは別のフロアにいるため、邪魔されることはない。
 ただ1つ、気になることがある。それはダークナイトの声を聞いた時のマリアの反応だ。

 マリア「えっ! その声は、兄さ・・ん?」

 マリアの兄。それは行方不明になっているレオンハルトのことだ。この日記の初めに少し出てきただけなのでお忘れかもしれないが、黒騎士の攻撃で28回死んでおつりがくるようなダメージを受けた、私よりも軟弱なあの男のことだ。そんな彼が、帝国のナンバー2であるダークナイトの正体だとは思えないが、そう考えればつじつまの合う出来事もあった。例えば、帝国兵が誰1人と知らない私たちのことを、なぜか彼が知っていたこと。そして私たちの命を奪うチャンスがありながらそれをせず、逆に帝国に引き抜こうとしたこと。

 ダークナイト=レオンハルト

 信じられる話ではない。だが否定することもできない。
 もしこれが本当ならば・・・いつか、彼と戦うことになるだろう。マリアの兄であり、親友でもある彼と。

 割り切ることができるのか? 「これが戦争というものだから」という理由で。
 自分をだますことができるのか? 「平和のためには仕方がない」という理由で。

 ヨーゼフが命を落としたとき、私は「これが戦争だ」と言って自分をごまかした。それができたのは、私にとってヨーゼフが、決して大きな存在ではなかったからだ。
 でも今度は違う。今度は私が当事者なのだ。サラマンドの人たちの嘆き、ヨーゼフの娘ネリーや彼を愛していたという女性の苦しみ。それを味わうことになるのは私自身なのだ。

 今、やっと分かった。私も戦争を甘く見ていたのだ。


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