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≪ヨーゼフ≫

 寒さに耐えて、何とかサラマンドの町に辿り着いた私たち。ノンキに情報収集や世間話をしながら、ヨーゼフという人の家を探す。

 彼の家はすぐに見つかった。出迎えてくれたのは、筋骨たくましい大柄でスキンヘッドのおじさん。彼がヨーゼフらしい。
 ・・・?
 ちょっとまて。何かがおかしい。たしかこの町の女性は、こんなことを言っていたはずだ。

 「サラマンドの男たちは、みんなセミテの滝の洞窟で、奴隷として働かされています。」

 そう、男はみんな奴隷になっているはずで、今この町には女性しかいないはずなのだ。すると目の前にいる、マッチョなおじさんにしか見えない人の正体は・・・。

 はっ!

 そういえば、この町には「わたしはヨーゼフを愛してるの。」と言っていた女性がいる。彼女は「でも、わたしなんかが側にいたら、あの人のじゃまになる・・・・」とも言っている。恋する乙女といえば聞こえはいいが、これは誤解が生んだかなわぬ恋。彼女の悩みは、真実を教えてあげることで解消するのだろうか。


≪サラマンド七不思議≫

 ミスヨーゼフは怪しい人物だった。なぜか私たちを信用してくれない。反乱軍の一員であるのは間違いなさそうだが、何かを隠しているふしがある。なにせ「奴隷として働かされている人を助けてくれば信用する」などと、わけの分からないことを言っているのだ。
 しかし私たちに選択肢はない。他に方法がない以上は話に乗ってみることしかできないし、奴隷として働かされている人たちを放っておくわけにもいかない。

 というわけで町の人を助けるために、セミテの滝の近くにある洞窟へ来てみたのだが・・・。
 まず目に付いたのは、やたらと目立つ、真っ青に塗られた変な岩。
 そして次は、お金がわずか10ギルだけ入れられた宝箱。さらに1ギルがポツンと入った宝箱・・・。

 怪しい! 怪しすぎる!
 ミスヨーゼフといい、この洞窟といい、なんでこんなに怪しいんだ!?
 もしかして、この辺りではこれが普通なのか!?

 私たちは妙な頭痛に悩まされながらも、洞窟を探索していく。そしてついに奴隷が収容されている部屋を見つけた。ついでに見知った顔も見つけた。

 ポール「フリオニールとかいったな!? たしかアルテアの町で会ってるはずだぜ。いやー助かったぜ。」

 アルテアの町にいた自称世界一の盗賊が、わざわざこんなところにまで来て奴隷になっていた。
 これは彼の趣味だろうか。それとも、こんな出稼ぎがはやっているのだろうか。

 ポール「俺はミスリルの在りかを聞き出して、ここに盗りに来たわけさ。ところが俺としたことが、ドジを踏んじまってこのざまよ。」

 どうやら出稼ぎの方だったらしい。そのうえお勤めまでやっているとは感心な奴だ。
 まあ、そんな彼のことはどうでもいい。重要なのは、男たちに混じって女の子が1人いたことだ。彼女の名はネリー。信じがたいことに、ヨーゼフの娘だというのだ。これぞ驚愕の事実。あのおじさんにしか見えないヨーゼフは、なんとミスではなくミセスだったのだ!

 そ、そうか。ミセスヨーゼフが男装しているのは、きっと母子家庭には辛い社会で生き抜くためなのだ。おそらくサラマンドは、現在の日本同様、男性優位の社会になっているのだろう。賃金格差から周囲の視線まで、何もかもが辛い母子家庭。ああ、許すまじ男尊女卑。

 などと私が女性読者にゴマをすっている間に、ポールはネリーちゃんや他の人を連れて帰ってしまった。手柄を取られたみたいでちょっと悔しい。

注:ポールのセリフ「盗りに来た」の “盗り” は、原作ではひらがな表記。


≪感謝の気持ち≫

 ヨーゼフが非協力的だったのは、娘を人質にとられていたからだった。しかしもう心配することはない。サラマンドに帰還すると、ヨーゼフは快く協力を申し出てくれた。
 彼女・・・いや、彼の調査によると、魔法金属ミスリルは、セミテの洞窟の一番深いところで掘られているらしい。この町の人が奴隷として働かされていたのは、そのためだったということか。
 ということで、再びセミテの洞窟に向かうことになった。
 おっと、出かける前にネリーちゃんにも挨拶しておこう。

 ネリー「助けてくれて、ありがとう。」

 いえいえ、感謝の気持ちは言葉より物で・・・。

 ネリー「助けてくれて、ありがとう。」

 だ、だから・・・。

 ネリー「助けてくれて、ありがとう。」

 ・・・もう、いいです。ったく、デジタル世界の住人って奴は・・・。


≪ミスリル?≫

 セミテの洞窟最深部に辿り着いた私たち。私たちはミンウの魔法にも助けられ、採掘場を守っていた帝国のサージェント(軍曹)を倒すことに成功した。そいつはなんと、ミスリルアーマーを持っていた。
 下っ端兵士を倒してもにんにくとかしか入手できないが、さすがは中級兵。ヒルダ王女が言っていた通り、やはり帝国兵はミスリルの装備を使っていたのだ。

 私はさっそく装備してみる。すると防御力は・・・現状維持!?
 な、なぜミスリル製の全身鎧が、町で普通に売られている銀の胸当てと同じ防御力なんだ!? しかも重い分だけ損じゃないか!

 銀の胸当てに装備しなおした私は、周囲を探索して宝箱を見つけた。帝国が採掘場と共に守っていた宝箱だ。きっといいものが入っているに違いない。と思いきや・・・。

 「宝箱の中から『ミスリル』を手に入れた。」

 へ?
 えーっと、私たちは、ミスリルを探しに来たんだよな? でもそれはミスリルそのものを持ち帰ることじゃなくて、採掘場を確保するってことだよな?
 これっぽっちのミスリルを持ち帰って、任務を完了したことになるのだろうか?

 ・・・いや、考えなければならないのはそこじゃない。問題は、このミスリルを鎧にしたところであんな鎧にしかならないということだ。ここで採掘されるミスリルは、きっと偽物に違いない。

 私は「ここのミスリルは偽物だった」という報告をするため、証拠のニセミスリルを持って引き返す。その途中でサラマンドの町によって一休み。その時、関係者でもあるヨーゼフの家にもよってみた。

 ヨーゼフ「早くアルテアに持ち帰るんだ。ヒルダ様が待っているぞ!」

 ・・・ヒルダ王女が待っているのは、たぶん “これ” ではないと思うのだが。


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