≪反乱志望?≫
フィン王国の辺境に位置する町、アルテア。ここには帝国の襲撃から逃れてきた人たちが集まり、フィンの王族を中心に反乱軍が組織されている。私たちがいる場所は、その反乱軍のアジトらしい。
ならば私がすべきことは1つしかない。すなわち、フリオニールとなって帝国と戦い、この世界を救うこと。
別に下心があるわけではない。ファンタジー世界が好きで、RPGが好きな人ならば、私と同じように考えるのではないだろうか。もちろん求めているのは戦争ではない。冒険だ。そして平和を脅かす強大な存在に挑むという生き様だ。
私はマリアとガイを引き連れて作戦会議室へ行く。怪我をしている父に代わって反乱軍を指揮しているという、フィン王女のヒルダ様に会うためだ。そして私はヒルダ様にお願いする。
私「王女、私たちを反乱軍に加えてください!」
ヒルダ「だめだめ! あなた方の力では、無駄に命を落とすだけです。」
あうっ。いきなり壁にぶち当たる。最初の関門はヒルダ様らしい。ここは私たちの実力を知ってもらうことから始めるしかなさそうだ。・・・の前に、実力をつけることが先なんだろうか。
まあ、この町で暮らす許可はもらえたから、そのうちなんとかなるだろう。しかし合言葉は
“のばら” か。もともとはフィン王国の紋章らしいが、この反乱軍にこれほど合っている言葉はないような気がする。
おっと、隣にいる白魔導師が何か言いたそうだな。名前はミンウというのか。
ミンウ「私には君の運命が見える。それは、私の運命とも係わっている・・・・。まずフィンへ行きなさい。それが運命を切りひらく道になるはずだ。」
ん? この声には聞き覚えがあるぞ。たしか「そっとしておきましょう」と言ったあの男性の声だ。回復魔法の専門家のくせに、自分は何もしようとしなかったのか。しかも運命がどうとか、怪しげなことを言っている。まさかその見えた運命という奴は、赤い糸ではないだろうな。
彼を要注意人物だと判断した私は、すぐさま部屋から逃げ出した。
≪希望の光≫
アジトと町を回ってみたのだが、まあ、なんというか、悲惨な状況だ。本来リーダーとなるべきフィン国王はベッドから起き上がることさえできないし、その代理として適任と思われるカシュオーン王国のゴードン王子は、自信をなくしてしまっているらしい。人々も帝国の襲撃におびえながら暮らしているありさまだ。
ただ希望はある。自称世界一の盗賊や優秀な武器職人などが、帝国と戦う意志をもっていることだ。彼らのような特殊技能の持ち主がいることはとても心強い。そしてなによりも大きいのがヒルダ王女の存在だ。彼女にかかる重圧は並大抵のものではないだろうが、苦しむそぶりも見せず反乱軍の指揮を立派に務めている姿が、人々に勇気と団結をもたらしているのだろう。
彼女がいる限り、反乱軍が敗れるとは思えない。ならば私がすべきことは、彼女に勇気を与えられるような戦士になることだ。きっとそれが、平和への近道になるだろうから。
・・・ああ、なんだか今回のプレイ日記は、とってもシリアスになりそうな気がするぞ。未来は誰にも分からないけれど。
≪亡国の王子≫
身なりの良い優男と出会った。どうやら彼が、帝国に滅ぼされたカシュオーン王国の王子、ゴードンらしい。兄が戦死した時に逃げ出してしまったことを、今でも悔やんでいるようだ。
ゴードン「そうか、君は戦いに志願したのか。私はヒルダに拒絶されるのが怖くて、志願もできずにこんな所でウジウジしているんだ。笑ってやってくれ。」
・・・こんな所?
えーっと、ここは反乱軍アジトの裏側。壁の向こうは作戦会議室で、ヒルダ様がいつも座っている辺りだ。
うぷぷぷ、たしかにこんな所だ。しかも拒絶されるのが怖いということは、ヒルダ王女に惚れていると見た。しかし王女の存在がゴードン王子の参戦を邪魔しているとは、世の中とは難しいものだ。
・・・まてよ、もしこの2人がうまくいけば、反乱軍の団結はいっそう強くなるんじゃないのか?
動機は不純かもしれないが、同じ軟弱な男として見捨てることもできず、私はゴードン王子を応援することにした。
「ゴードン殿下、私が恋のキューピッド役を引き受けましょう。なあに、遠慮はいりません。この世界の私は正義の味方です。やる気だけはだれにも負けませんよ! それにもし玉砕した場合、私が責任を持って意志を継がせていただきますのでご安心ください!」
あ、しまった。隠していた下心が・・・。
しかし軟弱な王子と勇敢な王女か。2人が結婚すればどんな家庭になるのか、今から目に浮かぶようだ。合掌。
≪冒険の幕開け≫
私たちが初めに向かうところは、フィンの城下町だ。そこに人々が捕われているという情報を入手したからだ。その中にレオンハルトがいる可能性もある。ミンウが言っていた運命などは信じていないが、全てがフィンを示しているのは確かだ。
ヒルダ様からは認められていなくても、心は既に反乱軍の一員だ。自身を鍛える必要性を考えても、これは調度いい冒険になるだろう。
私たちは持っていたわずかなお金を使って、装備を整えていた。この時に少し頭を使った。どんな技能を伸ばしていくのかは、今のうちから考えていた方がいいだろうから。
私は万能型を目指す。あらゆる武器を使いこなし、黒魔法と白魔法にも精通する存在。きっと最強の戦士として、ヒルダ王女に勇気を与えられる存在になるだろう。なんとなく器用貧乏の足手まといになりそうな気もするが。
マリアは黒魔術師にする。イラストを見る限りでは、ヒロインというよりも魔女っぽい。ならば実用性よりもイメージを重視した方が楽しいだろうから。・・・それに彼女に回復魔法を使われたら、しくじって止めを刺されそうな気もするし。
ガイはどう考えても重戦士タイプだ。でも白魔法の使い手が私一人では心もとないので、そっち方面も頑張ってもらおう。
そして私たちは町を出る。これからどんな冒険が待っているのかは分からない。しかしそれがいばらの道であったとしても、何もないよりはいいと思うのだ。何もなければ何も変わらない。でもいばらの道には、いつか花が咲くのだから。きっとのばらという合言葉には、そんな想いが込められているのだろう。
未来は誰にも分からない。だからこそわずかな可能性を信じ、希望をもって生きていくことができるのだ。そして信じた道の先に待っているものは・・・その想いの強さで変わってくることだろう。
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