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≪浮遊大陸へ≫

 ローディエルを倒して元の世界に戻った一行は、今度は精霊像に精霊の宝珠を捧げて、浮遊大陸へと旅立ちます。
 浮遊大陸は魔法王国エミネ・ヘルミナの首都があった場所であり、それなりの規模ではあったものの、やがて図書館にたどり着くことができました。ここでの目的は、フェイデルの書を捜してフェイデルの秘密を暴くこと。ただしエミネ・ヘルミナ語の読解ができるのはクライスだけなので、あとの3人は他の施設をめぐり、フェイデルに対抗できる武器を探し出すことにしました。

 クライスは図書館で、フェイデルの書と呼んでいる書物を発見しました。それは魔術師ギルドに保管されていた最終巻とは別の人が書いたものであり、どうやら日記のようでした。


≪フェイデルの書、一巻≫

【1】
 私の研究室に、珍しいものが持ち込まれた。それは竜の卵。わたしが竜の研究を始めて10年になるが、見るのはもちろん、見たという話すら聞いたことがなかったのだ。竜を研究するものは少なくないが、その生態はほとんど解明されていない。わたしはそれを知る機会に恵まれたのだ。

【2】
 卵は私の家で預かることにした。「人と竜とは理解しあえるか?」という、私の研究テーマの関係である。それを知るためには、竜を研究材料として飼育するよりも、愛玩動物として飼育したほうがよいと思ったからである。10才になる息子は、ヘビやトカゲを家の中にまで持ち込むくらいだから、きっと竜の子も可愛がってくれるだろう。

【3】
 竜の子が生まれた。翼があるべき場所には小さな突起が見られる程度であり、どう見ても大きめのトカゲである。予想通り、息子が飼育係を買って出てくれた。12才の娘は近寄りもしないが。
 名前はフェイデルにした。神と竜との争いを鎮めたとされる、伝説上の天使の名前だ。

【4】
 生まれて5日が過ぎた。いくつか気になることがある。体が大きくならないのだ。初めの3日で体重が7倍になり、どうなる事かと心配していたが、その後はまったくというほど変わっていない。そのころから鱗が抜け始めたことも、目に鋭さがなくなったことも気になる。病気なのだろうか。

【5】
 驚くべきことが起こった。フェイデルのオリにいたのは、鱗ではなく毛皮をまとった生物だった。その印象はトカゲではなく、娘が可愛がっている犬に近い。そしてある話を思い出した。1つは、竜は極めて優れた環境適応能力を持ち、短期間で自身の体を変化させることができるという仮説。そしてもう1つは、竜は人の心を読むことができるという、信じがたい噂。もしこれらが本当ならば、私の家という環境で生きるために、フェイデルは変わったことになる。


≪フェイデルの書、二巻≫

【6】
 フェイデルは変わっていった。3週間で人の言葉をほとんど理解し、片言ながらも話せるようになった。つぶらな瞳を持ち、純白の毛皮をまとったフェイデルの愛らしさには、きっとどんな動物もかなうまい。今やフェイデルは、すっかり家族の一員となっている。

【7】
 フェイデルが、国の研究機関に引き取られることになった。今のフェイデルが、竜だとは信じられないからだという。無理もないが。
 しかし考えてみれば不思議なことではないのかもしれない。竜は生息地ごとに様々な種類がいるが、それらを全て別の種類として考えると、繁殖に必要なだけの数にはならないのだ。しかし全ての竜は本来同じ種であり、環境によって姿を変えているだけだと考えれば、つじつまが合うのだ。
 しかし私のこの説は国には納得してもらえなかった。
 そしてついに、フェイデルが引き取られる時が来た。家の者すべてが泣いた。私も息子も、初めは近寄りもしなかった娘も、そしてフェイデルも・・・。

【8】
 フェイデルと別れて一か月が過ぎた。やっと国の許可が下り、明日の一日だけフェイデルとの面会を許された。今その機関では、環境適応能力と生命力を調べているという。
 嫌な予感がする。そのため私一人で会うことにした。

【9】
 嫌な予感は的中した。フェイデルと紹介されたその竜は、深紅の鱗を持つ巨大な魔獣だった。私だけに見せる悲しげな眼差し。ただそれだけが、その魔獣がフェイデルであることを物語っていた。
 フェイデルはその後、闘技場に引き取られることになるという。戦闘能力を調べるためらしい。

【10】
 家族でフェイデルを見に行った。フェイデルのデビュー戦だ。
 ところが相手はサイクロプス(一つ目巨人)。勝てる相手ではない。フェイデルは竜とはいえ、まだ1才にもなっていないのだ。その後も無理な相手が続いた。現役最強と言われる冒険者グループ、上級の悪魔、そして成竜。見るのがつらい。何よりも戦いの後で私たちに向けられる、悲しげな眼差しが。
 それでもフェイデルは、生きるために戦い続けた。そしてわずか1年後、1対1では誰にも負けなくなっていた。

【11】
 フェイデルの相手は、日増しに強くなっていった。サイクロプスでさえ3体。それも魔法の援護付きだ。
 だが最近、フェイデルの戦い方が気になる。誰かが呪文を唱え始めると、戦うのをやめて術者のほうを見るのだ。その仕草、以前にも見たことがある。確か、言葉を覚えようとしていたときに・・・。


≪フェイデルの書、三巻≫

【12】
 あの日のことは思い出したくもない。だが、書いておかねばならないだろう。
 フェイデルの引退が決まった。人気がなくなったためだ。どんな相手をも魔法で無力化させる、おとなしい白竜では無理もない。だが私にとっては朗報だ。私の家に帰ってくるのだから。何よりも優しい心を持ち続けていてくれたことがうれしい。
 そして引退試合。相手はこの日のために用意された、反魔法の鎧を着たサイクロプス6体。しかしフェイデルは手を出さなかった。どんなに傷つけられても。試合はフェイデルの負けで終わった。
 そして悲劇は起きた。私の近くにいた男が、試合を無効にしろと騒ぎ出したのだ。私の娘を人質にして。そしてナイフで娘の首を・・・。
 その瞬間、フェイデルの鱗が闇に染まった。その視線は男を石と化した。全ての剣闘士が、巨人が、竜が、フェイデルを止めるために放たれた。だが止められなかった。真空の刃で切り裂かれ、地震によって地面に叩きつけられ、炎の息で焼き尽くされた。思わず叫んだ私の言葉に従い、あっけなく動きを止めるまで、フェイデルは暴れ続けたのだ。

【13】
 フェイデルの処分が決まった。力を封じる特別なオリに入れられ、見世物にされるらしい。飼い主である私の処分も決まった。爵位のはく奪と、浮遊大陸からの退去。だが、そんなことはどうだっていい。
 フェイデルはどう思っているだろうか。取り押さえられた時にはまだ、私を見る目には怒りとともに悲しみがあった。しかし私の言葉に従ったがゆえに全ての自由を奪われ、屈辱の日々を送っているであろう今のフェイデル。きっと私を憎んでいるに違いない。
 それでも私は思うのだ。いつかあの子が封印を破り、自由を取り戻す日が来ることを。そして私のもとへと帰ってきてくれることを。その時たとえあの子がどんな姿で現れようと、私はすべてを受け入れるだろう。


≪愛と憎悪≫

 クライスは1つの決断をし、その後仲間のために日記を翻訳すると、待合所にしていたフェイデルの封印跡地へ向かいます。3人はすでに来ていました。

 リュード「この手の魔法装置は、上級の竜や悪魔を封印するために作られたらしいが、これは特別手が込んでいるな。それでも奴は、ここを突破した・・・化け物め!」

 ファルナ「・・・? クライス、なにか変わったね。近頃ずっと思いつめた顔をしていたけれど、今は生き生きとしているもの。フェイデルを倒せる武器なんてどこにもなかったけど、ここに来たこと、無駄じゃなかったみたいね。」

 シリュン「風の守護者がエレメントドラゴンだったってことは、ドラゴンの格としては上から2番目なんだよな。でもフェイデルは、最強のはずのグレートドラゴンよりもずっと上・・・。でもヤツだって、不死身じゃないんだ・・・。」

 リュード「ここまで来ながら、フェイデルの強さを再確認しただけか。結局スターダスト・レインが、切り札にして唯一の武器か・・・。」

 ファルナ「でもフェイデルに、あんな過去があったなんて・・・。フェイデルは被害者じゃないの!?」

 リュード「お前は甘いな。どんな理由があったにせよ、今の奴は狂った魔獣だ。奴を倒さねば間違いなく人が滅びる。俺たちに、選択肢はないんだ・・・。」 


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