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≪精霊の門≫

 魔界へ通じる門があるという、遺跡の内部に入りました。ケルベロス(三首の魔犬)が守っていた怪しい部屋は、四隅に精霊像が立ち、中央には空間のゆがみがあるという、不思議な場所になっていました。

 ファルナ「これが魔界へと通じる門ね。でもこの部屋って、そんな雰囲気がしないわね。」

 リュード「遺跡自体は人が作ったものだからな。4体の精霊像に空間を捻じ曲げる力があり、悪魔はそれを利用しているのだろう。」

 クライス「4体の精霊像で空間を・・・! ここは、浮遊大陸へと繋がる遺跡では・・・。」

 リュード「確かに、古文書に描かれている通りの場所だな。しかし・・・。」

 シリュン「ローディエルが先、だろ? リュード、もうすぐだな。あんたが呪いから解放されるのは・・・。あんたが王子に戻っちまうのは・・・。」


≪ローディエル城≫

 空間のゆがみに飛び込むと、魔界のローディエル城につきました。魔界とはいえ建物の中なので、異世界の太陽の光を浴びなくて済むのは助かります。
 そこは塔の一室でした。巨大な悪魔が守っていましたが・・・その悪魔、どこかで見た覚えがあります。
 その悪魔はかつてクライスたちに助けられ、復讐の依頼をし、その後魔界へ送還してもらったという、あの悪魔だったのです。その悪魔は他国からのスパイとしてこの城にもぐりこみ、ローディエルの危険な野望を食い止めようとしていました。
 ローディエルの野望、それはリンドブルム(翼竜)とドレイク(翼のない竜)を復活させて人間の国家を滅ぼし、その後に自分が王となって社会を作りなおすというものでした。

 悪魔「どうだ? 力を貸してくれるな?」

 シリュン「貸すもなにも、オレたちはローディエルを倒しに来たんだぜ。ヤツはオレたちが止めてやるさ!」

 玉座の間を目指す途中で、以前に倒しそこねた法皇との再戦がありましたが、またあと一歩のところで逃げられます。そして魔王ローディエルとの対面です。

 魔王「久しいな、余の血をひくものよ。余の父エルリュードの生き写しよ。しかし余に会いに来るのだから聖竜の武具で正装してくるものと期待していたが、そんな呪いの武具でくるとはな。アレさえ手に入れば余は無敵となり、計画は完璧となったものを・・・。まあ良い。お前たちのほかには余に対抗できるものなどおるまい。ここでお前たちを倒し、それから聖竜の武具を取り戻しに行くとしよう。」

 ファルナ「待って! 人の心を持って生まれたあなたが、なぜこんなことをするの!?」

 魔王「考えても見るが良い。ルヴィア教徒として生きることが我が母ルヴィアの教えに反することに気付かぬ、教徒たちの愚かさを。そしてルヴィアの教え・・・教えられずとも自ら悟るべき真理を理解できず、己のためにのみ生きる民の愚かさを。両者の本質に違いはなく、そんなものばかりが生きる世界には、平和をもたらすことなどできはしない。全てを破壊し、全てを作り直す以外にはな。・・・誰かが、手を汚さねばならんのだ!」

 人であった時にも理想世界の創造を掲げた強硬策をとり、狂王として恐れられたローディエルは、反対派との戦争に敗れて王の座から追われた後も、人であることを捨ててまで、その歪んだ理想を貫こうとしていたのでした。
 彼はさすがに魔王というだけあって、これまでに戦ってきたどんな魔物よりも強力でしたが、クライスたちも今や世界最強の冒険者です。なんとか倒すことに成功します。

 魔王「なぜだ・・・。なぜ余の理想は、いつもあと一歩のところで・・・。これが、余の運命なのか・・・。」

 リュード「甘えるな! 貴様の理想が民の生活を踏みにじるものでしかなかったことに、なぜ気付かない。危険な理想は止めねばならない。これは運命などではない。・・・当然の結末だ。」

 魔王「分からぬ・・・。余の理想が実現すれば・・・完全なる社会で暮らせるならば・・・誰もが今よりずっと幸せに暮らせるというのに・・・。」

 リュード「今の世を破壊せねば作れない世界など、望む者はいない。誰も望まぬ社会に幸せは生まれない。全ての民を尊重し、民のために平和な国を作ること。それが王の・・・いや、人の務めというものだ。」

 魔王「ふふ・・・。言うことまで父と良く似ている・・・。だが余は、そうは思わぬ・・・。理想では、理想の社会は作れない・・・。余は民に、真の幸せを与えたいのだ・・・。今の幸せは・・・幻でしかないのだから・・・。」


≪王子の帰還≫

 ローディエルが息絶えると、リュードが身に着けていた武具が輝きを失いました。

 リュード「どうやら、呪いが解けたようだな。」

 シリュン「そっか・・・。初めまして、殿下。かな・・・。」

 リュード「何のことだ? 言ったはずだぞ。オレは冒険者リュードだと。」

 ファルナ「でも呪いが解けたんだから・・・。もう王家に戻れるのよ。」

 リュード「昔ならな・・・。しかし父が亡くなり弟が即位した今では、オレの存在は邪魔なものでしかない。」

 シリュン「でも、あんたのために王位は空けておくって・・・そんな話があったそうじゃないか。」

 リュード「弟はそういうやつだよ。だが、納得しない者も多いだろう。トゥレイドは禁呪の呪いに倒れ、ここにいるのは出身地不明の冒険者リュード。それでいいとは思わないか?」

 シリュン「あんた、最初からそのつもりで・・・。てめえ、また騙しやがったな!」

 そう言ったシリュンでしたが、その顔には笑みが浮かんでいたのでした。


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