≪黒竜の正体≫
ドラゴン退治の仕事を終わらせ、クライスたちはサリスに戻ります。そして魔術師ギルドに行ってみたところ、翻訳を頼んでいた本のうち1冊が終了していました。
魔術師「クライスさん、凄いことが分かったんですよ! 浮遊大陸とフェイデルの秘密です!」
クライス「フェイデル?」
魔術師「ああ、5年前にサリスを襲った、例の黒竜の本名です。」
クライス「ドラゴンに本名?」
魔術師「ええ、本名です。フェイデルは、エミネ・ヘルミナの闘技場で飼われていたんです。それが手に負えなくなったため首都があった浮遊大陸に封印され、見世物にされていたようです。そしてここからは推測ですが、5年ほど前に封印を破り、サリスを襲ったのではないかと。」
クライス「フェイデルは、人間に復讐しようとしている・・・。」
魔術師「そう思います。ただ解読できたのは、我々がフェイデルの書と呼んでいる書物の最後の1冊なんです。詳しいことは浮遊大陸に行き、そこにあるという他の本を読む必要がありますけどね。」
クライス「浮遊大陸に行く方法は分からないんですか?」
魔術師「一応書かれていました。どこかにある火、水、土、風の精霊の宝珠を集め、それを4体の精霊像に供える・・・でも、これだけで分かりますか?」
≪海賊退治≫
水の宝珠のことならば、海神の神殿で何か分かるかもしれない。ということで、さっそく足を運んでみました。すると貴重な情報が手に入りました。
司祭「精霊の宝珠の話ならば聞いたことがあります。いずれも強力な守護者によって守られているのだとか。ただしこれらを集めようとしたのはあなた方が初めてではなく、水の宝珠はすでに人間の物となっています。現在はダーリア国の国宝になっているはずですよ。」
ダーリア国王には、つい先日ドラゴン退治で会っています。そのコネを生かして謁見し、譲ってもらえないか打診してみることにしました。
国王「うむむむむ・・・あれは我が国の国宝。恩あるクライス殿の頼みとはいえ、簡単に譲るわけにはいかん。それに恥ずかしながら、今は手元にないのだ。海賊どもに奪われてしまったのでな・・・。・・・・・・・・・うむ、余に名案が浮かんだぞ。クライス殿、海賊を退治してもらえないだろうか。奪われた財宝を取り戻してもらえるならば、その報酬として水の宝珠を譲っても、誰も文句は言うまい。海賊の砦のいくつかは魔物に滅ぼされているそうだが、財宝を取り戻すためにはそこへも行ってもらわなければならん。よいな? ・・・無理を言ってすまぬが、頼むぞ。」
そして再び船と船員を借り、海賊退治をすることになりました。
依頼された海賊の砦は3つ。そのうち2つは魔物につぶされているため、財宝の回収が目的となります。ところが財宝を守る魔物と戦っている間に海賊が現れ、以前と同様に財宝を奪われてしまったのです。
残る1つの砦は、攻め込むと同時に退却されたのですが、まるで攻め込む日時が分かっていたかのような引き際の良さでした。
≪夜会話、その4≫
海賊たちが捨てて行った砦の近くでキャンプ中、クライスが見張りをしていた時のことです。シリュンが目を覚ましてやってきました。
クライス「交代にはまだ早いですよ。」
シリュン「眠れないんだ。ちょっと気になることがあってな。今回の仕事のことに、エディシアのことに・・・。」
クライス「エディシア? ・・・確かに変わりましたね。ファルナと出会ってから。」
シリュン「ああ・・・。妹の前だからって、無理して真面目にふるまっているんじゃないだろうかってな・・・。」
クライス「エディシアのこと、ずいぶん気にしているみたいですね。シリュンも無理しなくていいんですよ。もう、エレナのことは・・・。シリュンの人生は、これからなんですから・・・。」
シリュン「そんなんじゃ・・・ないよ。エディシアのことは、仲間なんだから当然だろ? あいつが冒険者になったのには、オレにも責任があるしな。だから、それだけだよ。・・・オレな、これからもずっと、エレナだけを見ていてやりたいんだ。あいつはいつだってオレだけを見ていてくれたから・・・。いつだって信じてくれたから・・・。これは、お前がいるから言ってるわけじゃないんだ。オレ自身が望んだ生き方なんだ。だから、気にしないでくれ・・・。」
シリュン「それより今回の仕事のことだけどな、変だとは思わないか? 海賊が現れるタイミングといい、逃げっぷりといい、まるでオレたちの動きを知っていたとしか思えない手際のよさだ。・・・オレたち、財宝回収に利用されてるんじゃないか?」
クライス「だとすれば、考えられることはただ1つ・・・。」
シリュン「ああ、ダーリア王は海賊の一味だ。」
≪水の宝珠争奪戦≫
クライスたちはダーリア王海賊説の証拠を手にするため、海賊たちの本当の砦を捜し出し、攻め落とします。そして海賊が財宝回収に使っていた魔法のつぼで海賊の頭領を捕縛。つぼを持って王宮に乗り込みます。
ダーリア王「クライス殿、そなたには失望させられたぞ! 海賊に財宝を奪われただけでなく、連絡もしてこぬとはな!」
クライス「私がここへ来たのは謝罪のためではなく、約束の品をいただくためです。・・・ドルト!」
合言葉を唱えると、つぼから海賊の頭領が現れました。
海賊「・・・どうやら俺様もここまでみたいだな。王様よ、これからも仲良くするしかないみたいだぜ。牢の中でな!」
クライス「陛下、すべて分かっているのですよ!」
ダーリア王「ふふふふふ・・・。さすがだな、クライス殿。だが、詰めが甘いわ!」
ダーリア王は隠し通路を使って逃げ出します。そして待機していた海賊たちに連れられて岸を離れます。
シリュン「あれは、あの海賊船! ちくしょー!」
その時、船に向かって巨大な影が近づいて行くのが見えました。その影はブルードラゴン。水中生活に適応した中級のドラゴンです。ブルードラゴンは船を沈めた後、しばらくその近くを泳いでいたものの、やがてどこかへ去って行きました。
その後、騎士団や漁師たちの協力を得て水の宝珠の捜索が行われましたが、見つかりませんでした。そのためブルードラゴンが持ち去ったのではないか、という結論になりました。
シリュン「ブルードラゴン・・・強そうだな。」
クライス「ええ・・・。ドラゴンの階級は、パピー、レッサー、ノーマル、カラー、エレメント、グレートの6つに分けられますが、ブルードラゴンはその名の通り、カラーに分類されています。先日倒したドラゴンがノーマルですから、それよりも1ランク上ということになりますね。」
はたしてブルードラゴンを倒すことができるのか? それ以前に、大海に住むブルードラゴンを捜しだせるのか?
しかしクライスは1つの可能性を見出していました。その可能性とは・・・
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