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≪手品師との出会い≫

 村8には大きな広場があり、立ち寄った旅芸人たちが芸を披露することがよくあるようです。今日も手品師がやってきているということで、クライスたちはそれを見に行くことにしました(エディ「見る! 絶対見る! 何が何でも見に行くの!」)。

 その手品師は手品も話術も一流で、観客を笑わせながら手品を披露していました。
 そして手品が終わった後、なぜか手品師はクライスたちのところへやってきました。いえ、正確にはセザールとレイバートのところにです。なんでも手品師ジェームズとこの2人は、かつて同じサーカス団に所属していた旧知の仲なのだとか。その縁もあって、1つの仕事を依頼されます。

 ジェームズ「この村はオレの故郷でな、少し前まで親父が1人で暮らしていたんだが・・・その親父が先日、『民を惑わせた』という理由で投獄されたらしい。親父は天文学者で、研究一筋の世間知らずだったが、誰よりも平和を愛する人だったんだ。きっと何かの間違いなんだ。だからそれを証明して助けだしたい。」


≪過去の悲劇と未来の悲劇≫

 この村で情報を集めてみたところ、ジェームズの父ラームズは、研究資料の一部を持って行ったことが分かります。自分が投獄されるときにそんなものを持っていく・・・それはつまり、自分の無実を証明するためのものではないか、と想像できます。
 そしてクライスたちは、ラームズが投獄されたという牢獄へ向かいます。その牢獄は孤島にあるのですが、先日、突如現れた魔物に襲われ全滅したという情報を手にしました。一行は奇跡を信じて牢獄を探索しますが・・・見つかったのは、ラームズを含む人々の遺体ばかりでした。ただ1人、メデューサによって石化されていた人のみを助けることができ、彼の話から、捕らわれていた召喚師が脱獄のために魔物を召還したが制御に失敗、今回の惨劇につながったということが分かりました。

 クライスたちは魔物を倒した後でラームズの資料を探し出し、分析します。その結果、近い将来皆既日食が起こることが分かりました。そして彼は日食の日時を言い当てることで、それが単なる自然現象であることを証明しようとしていたことが判明します。

 エディ「そんなことで民を惑わせたことになるの?」

 ジェームズ「君たちには不思議に思えるかもしれないが、日食や流星雨を災厄の前兆だと信じている人は多いんだ。学ぶ機会の少ない地方では特にな。そして起こりもしない災厄を防ぐために、多大な犠牲が支払われるんだ。・・・親父は子供のころ、それで姉を亡くしているんだ。皆既日食の後、生贄にされてな・・・。悲劇を防ごうとしてやったことなのに・・・。」

 セザール「それで、次の皆既日食はいつ起こるんだ?」

 クライス「この資料によれば・・・1か月後!」

 レイバート「これは・・・マズイですな。」

 セザール「どうすんだよ・・・。言っても分からない奴らを、どうやって説得するんだよ・・・。それも相手は、1人や2人じゃないんだぜ・・・。」

 クライス「・・・・・・・・・。」

 ジェームズ「どうした、クライス君。何かいいアイデアがあるのかい?」

 クライス「・・・1つ方法がありますが・・・私がやるには、もう時間がありません。」

 ジェームズ「??? とりあえず、話を聞かせてもらおうじゃないか。」

 そしてクライスは、暴動を防ぐ秘策を語り始めます。しかし日食の日が近いため、その秘策を実行できるのはジェームズのみ。クライスが迷っていたのは、その役を他人に任せなければならないことでした。しかしジェームズはその役を快く引き受け、案を出してくれたクライスに礼を言います。


≪奇跡をこの手で≫

 そして日食の日。
 一行は村8に戻り、ジェームズは以前のように手品を披露していました。クライスたちは手分けをして近隣の村を回り、この日の手品を見にくるように宣伝していため、膨大な観客が訪れています。

 手品はいつものように行われていました。その妙技に観客は心を奪われ・・・しかしジェームズは、こう言いました。

 ジェームズ「本日お集まりいただいたのは、このような魔術、いや手品をお見せするためではありません。これからお見せする出し物は、正真正銘の大魔術! 実は先ほどから準備をしていましたので、そろそろ気づかれるかもしれませんが・・・。」

 客「ん? なんか暗くないか?」

 その一言で手品の魔力は消えうせ、観客は我に帰りました。そしてやがて気付きます。

 客「太陽が・・・欠けている・・・。」

 客「日食よ!」

 その時、ジェームズが高らかに声を上げました。

 ジェームズ「これぞ、わが一族に代々受け継がれてきた究極の大魔術! 皆様、とくとご覧あれ!」

 観客があっけにとられている間に、5人はその場から逃げだしました。


≪後日譚≫

 皆既日食は手品にすぎない。そう思わせることがクライスの秘策でした。
 ただ問題は、その手品師が『民を惑わせた』ことになってしまうことであり、またそれを実行できるのは実力と実績を兼ね備えた手品師だけであるため、自分はその役を演じられないということでした。
 他人を犠牲にしたということに苦しむクライス。しかし一回り年上のジェームズたちは、笑い飛ばしてくれました。

 セザール「これで俺たち全員が犯罪者だな。これからみんなで、世界の果てにでも逃げ出すか?(笑)」

 ジェームズ「まさか!(笑) バレているのはオレだけだろうよ。それにオレは気楽な旅芸人だからな、ほとぼりが冷めるまで別の地方へ巡業に行けばいいだけさ。しかし、こんなに気分がいいのは久しぶりだ。ありがとう、クライス君!」

 素直に喜べないクライスではありましたが、彼らによって救われたことは確かでしょう。ただもちろん、このまま終わらせるつもりはなく、もう一仕事する計画を立てていたようですが。

 そしてここからは余談ではありますが・・・。
 もしいつか、あなたがこの地方を訪れることがあったならば、ぜひ皆既日食のことを尋ねてみてください。きっとこんな話が聞けるはずです。

 村人「皆既日食って、ジェームズってやつの手品だったんだよ。・・・ってな話を旅の人にしたら、大笑いされちまった。単なる自然現象なんだってな。」

 しかし住人たちは気づかなかったようです。この日食自然現象説が急速に広まったのには、とある理由があったことを。
 各地で住人の勘違いを笑い飛ばしていった旅人たち。それはみな同じ冒険者グループであり、率いていたのは黒衣の魔術師だったのです。


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