≪エディシアを捜せ≫
久しぶりに冒険者ギルドに戻り、クライスたちはしばし羽を伸ばします。ところが羽を伸ばしすぎたのか、エディシアが行方不明になりました。
クライス「まさか、誘拐・・・。」
シリュン「あれでも魔道師だぜ。プロの誘拐犯だって簡単には手を・・・・・・・・・出せそうだな。仕方がない、調べてみるか。」
そうして聞き込みをしていたところ、見知らぬ子供からシリュンあてに手紙が届きました。手紙にはこう書かれていました。
「今夜、月夜の森でお待ちしています。(エディシア)」
月夜の森、それは恋人たちがデートに利用する森です。・・・が。
シリュン「これ、あいつの字じゃない! ・・・オレをおびき出すための罠か? だとすれば・・・。クライス、行くぞ! 先回りして待ち伏せする!」
≪盗賊ギルドは今≫
シリュン「盗賊ギルド内部で、抗争が起きているんだ。これまでの義賊的なやり方に不満を持つ奴が多くなってな・・・。で、保守派の中心が、頭領とオレだ。オレの首を狙っている奴らも少なくないだろうな。」
クライス「エディシアはそのために・・・。」
シリュン「多分な・・・。」
そして2人は、しばらくしてやってきた盗賊ギルド員を不意打ちして倒します。
シリュン「誰の命令だ!」
盗賊「・・・ぐふっ・・・」
シリュン「・・・毒、飲みやがった・・・バカ野郎が!」
その後、シリュンの弟分から連絡が入ります。
舎弟「先日、騎士隊長の1人が暗殺されたのはご存知ですよね? 先ほどその実行犯が指名手配されたんですが、兄貴の名前になっているんですよ! 兄貴は今、殺人容疑で指名手配されているんですよ!」
シリュン「反対派の仕業か?」
舎弟「そうとしか考えられません。」
シリュン「そうだ、奴らが誘拐とかしてるって噂は聞かないか?」
舎弟「さあ・・・そういえば、今夜貨物船で何かを運ぶって話を聞きましたが・・・。」
シリュン「それか! ・・・オレはしばらく姿を消す。お前らも無理するんじゃないぞ。」
そして2人は、夜の港に向かいます。
≪救出作戦≫
怪しい倉庫が見つかりました。シリュンが聞き耳を立ててみたところ、見張りは1人、捕まっているのは複数のようです。
クライス「不意を打てなければ危険ですね。」
シリュン「窓か地下通路でもあればいいんだが・・・。」
その時、人がやってくる気配を感じ、2人はあわてて隠れます。しかしやってきたのは傭兵のセザールと、冒険者ギルドでよく演奏をしている吟遊詩人でした。
セザール「そうか、あの譲ちゃんがな・・・。それなら俺たちも手伝うぜ。なんせ俺たちは、誘拐犯にかけられた賞金を目当てに来たんだからよ。」
シリュン「助かるよ。ところで、なんでこんなところに吟遊詩人が・・・。」
吟遊詩人「ワタクシのことは、レイバートとお呼びください。」
セザール「こいつはヤジ馬だよ。」
レイバート「ワタクシとしては、情報提供者と紹介してほしかったのですがね。・・・この石頭が。」
セザール「悪いが、俺は正直者で通っているんでな。・・・この二枚舌が。」
クライス「まあまあ、それより作戦を・・・。」
練った結果、変則的な挟み撃ちをすることになりました。セザールとレイバートが酔っ払いを装い入口をノックし、見張りが近づいてきた(捕虜から離れた)ときに、クライスとシリュンが反対側の窓から飛び込んで捕虜の安全を確保するというものです。
そして作戦実行!
セザール「ただいま〜。母ちゃん、みず〜。」
レイバート「先輩、ここは家じゃないっすよ〜。」
誘拐犯「まったく、こんなときに酔っ払いかよ。」
そして誘拐犯は出入り口に近づきます。・・・が、そこでおかしいことに気付いたようです。」
誘拐犯「貴様ら、何者だ!」
シリュン「通りすがりの冒険者さ! エディシア、待たせたな!」
2人が飛び込んで、作戦成功! 誘拐犯は逮捕され、捕まっていた人たちは無事に救助されました。彼らを護送するため、いったんパーティを解散します。が、その後再び、夜の港に集まります。何でもシリュンから、大事な話があるのだとか。
≪人生の分岐点≫
シリュン「今すぐ、この島を離れよう。」
レイバート「どういうことですかな?」
シリュン「今夜のことで、俺たちが盗賊ギルドに目を付けられるのは間違いない。奴らは、俺たちを消そうとするだろう。」
セザール「あの自称義賊の連中がか? それにお前だって盗賊ギルドの一員だろうが。」
シリュン「盗賊ギルドは変わったんだ・・・。あの誘拐犯は外部の人間じゃない。かつての・・・俺の仲間だ。ギルドの盗賊はただのコソ泥じゃない。その多くが一流の暗殺者なんだ。奴らに目をつけられたら、生き延びるのはまず不可能だ。でも今夜のうちにここを出れば、奴らをまけるはずなんだ。」
レイバート「なるほど・・・。では、急ぎましょうか。」
そしてレイバート、セザール、エディシアは船に向かいます。が、クライスはシリュンに呼び止められました。
シリュン「クライス、大事な話があるんだ。・・・オレ、ここに残るよ。」
クライス「!」
シリュン「オレ、ずっと考えていたんだ。今のまま盗賊を続けていていいのかなって。よそ者で学もないオレが生きるためには、こうするしかないと思っていた。だから仕方がないと割り切っていた。でも、やっと気付いたんだ。俺たち盗賊の生き方は、境遇を盾にして甘えているだけなんだってことに。努力さえすれば俺のような人間だって、ちゃんと生きていけるんだってことに・・・。だからオレ、盗賊をやめるよ。ギルドの連中も、まとめて足を洗わせてやる。盗賊ギルドを変えてみせるよ。義賊たちの裏組織から、誰もが誇りを持てる組織へとな。」
クライス「そんな、危険すぎる・・・。」
シリュン「ははっ、お前らしくないセリフだな。俺だって危険なのは分かっているさ。でも目の前の現実から逃げたくはないんだ。・・・そんな顔しないでくれよ。勝算はあるんだぜ。もう種はまいてある。芽だって出ている。あとは、花を咲かせるだけさ。うまくいけば、あと1年もかからないさ。それに夢を捨てちゃいないよ。故郷の敵を討つまでは、何があっても死んだりするものか。そして全てが終わったら、一緒に故郷を捜して花を供えにいこう。約束だぜ!」
≪船出≫
シリュンと別れて船に乗ったクライスは、いつまでも海を眺めていました。そこへエディシアがやってきます。
エディ「ねえ、どうしてシリュンは来なかったの?」
クライス「・・・自分の、進むべき道を見つけたのですよ。」
エディ「ふーん・・・。それ、クライスは見つけた?」
クライス「私は、まだ・・・。」
その後エディシアは船室に戻り、クライスは1人残されます。
クライス「・・・シリュンはいつだって、自分の意思で行動していた。そして道を見つけた。私はシリュンの後をついて行くだけだった・・・。これが、本当の旅立ちだ。私の道、この先に見つかるのだろうか・・・。」
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